Basedow病
動悸・やせ・甲状腺腫から、検査・治療・副作用・合併症まで
26問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 食欲があるのに体重が減る・手指振戦・動悸に、びまん性甲状腺腫と眼球突出。TSH↓・FT4↑で甲状腺中毒症、TRAb陽性でBasedow病。
- 治療はチアマゾールから始め、動悸にはβ遮断薬。飲み始めの2か月は無顆粒球症に注意して白血球数を見る。高熱・咽頭痛が出たら直ちに中止し、広域の抗菌薬。
- アジア人の若い男性が夜間〜起床時に四肢の脱力、低K血症なら甲状腺中毒性周期性四肢麻痺。治療の中断などで意識障害・高熱・著しい頻脈が加われば甲状腺クリーゼ。
起こり方と症状
TSH受容体を刺激する自己抗体(TRAb)が甲状腺を刺激し続け、甲状腺ホルモンが作られすぎる自己免疫の病気。若い女性に多い。症状は、代謝と交感神経の働きが高まって出る。
| 全身 | 食欲があるのに体重が減る。暑がり。汗が多く、皮膚は湿る |
|---|---|
| 心臓・血管 | 動悸・頻脈・心房細動。収縮期血圧↑・拡張期血圧↓で、脈圧が大きい。心疾患がなくても、血流が多いため胸骨左縁第2肋間に収縮期雑音。進めば高拍出性心不全 |
| 神経・精神 | 手指の細かい振戦・腱反射の亢進・いらいら・不眠 |
| 消化器 | 排便が増え、軟便・下痢になる |
| 女性 | 月経が少なくなる・無月経 |
| 骨・検査値 | 骨の代謝が速まり、ALP↑・骨粗鬆症。総コレステロール↓(中性脂肪も上がらない) |
- 体重増加・皮膚乾燥・便秘・徐脈・腱反射低下は、甲状腺機能低下症の所見(亢進症では逆になる)。
- 若い人の心房細動・体重減少・振戦を見たら、甲状腺機能を測る。
甲状腺腫と眼の所見
| 甲状腺腫 | びまん性に腫れ、柔らかい。飲み込むと一緒に上下に動く。圧痛・表面の凹凸・皮膚との癒着はない |
|---|---|
| 甲状腺眼症 | 眼球突出・瞼裂の開大(上眼瞼の後退)・眼瞼の腫れ・まばたきが減る。外眼筋が腫れて動きが悪くなると複視 |
| 皮膚 | 前脛骨粘液水腫(すねの皮膚が硬く盛り上がる) |
- 眼症は、眼窩の脂肪と外眼筋が自己免疫の炎症で腫れて起こる。
- 眼瞼下垂は起こらない。眼瞼下垂があれば、Basedow病に合併することがある重症筋無力症を考える。
- 眼球突出・前脛骨粘液水腫はBasedow病だけにある。手指振戦・びまん性甲状腺腫は、無痛性甲状腺炎にもある。
画像で出たら 前頸部が左右対称になだらかに腫れる。カラードプラでは、甲状腺全体に血流が増えて色が多くつく。眼は前に飛び出し、黒目の上に白目がのぞく。
検査と診断
- ① TSH・FT4TSH↓・FT4↑で甲状腺中毒症
- ② TRAb陽性ならBasedow病
- ③ 甲状腺超音波びまん性の腫大と、血流の増加
- ④ 放射性ヨウ素摂取率迷うときに。Basedow病は高い
- まずTSHとFT4。TSHは強く抑えられる。FT3も高く、FT4より目立つことが多い。
- TRAb(抗TSH受容体抗体)は、ほかの甲状腺中毒症との見分けの決め手。無痛性・亜急性甲状腺炎や、妊娠初期のhCGによる一過性の亢進では陰性。
- 抗TPO抗体・サイログロブリンは見分けに使えない(橋本病や甲状腺炎でも陽性・高値)。
- 超音波のカラードプラで甲状腺の中の血流が増える(無痛性甲状腺炎では乏しい)。
- 妊娠中は放射性ヨウ素の検査をしない(胎児の甲状腺に取り込まれる)。
- 頸部CT・穿刺吸引細胞診は、原因の見分けには使わない(結節を調べる検査)。
治療
| 抗甲状腺薬 | まず抗甲状腺薬(第一選択はチアマゾール)。プロピルチオウラシル(PTU)は、妊娠初期やチアマゾールが合わないとき。効くまで数週かかる |
|---|---|
| β遮断薬 | 動悸・頻脈・振戦をすぐ抑える。甲状腺機能が戻るまで併せて使う |
| 無機ヨウ素 | ホルモンの放出を速く抑える。単独で続けると効かなくなる(エスケープ)。手術の前・甲状腺クリーゼや、重症例で抗甲状腺薬と併せて使う |
| 放射性ヨウ素(131I) | 副作用で抗甲状腺薬が使えない・寛解しない・再発したとき。妊娠中・授乳中は行わない。小児には原則として選ばない。のちに機能低下症になれば、甲状腺ホルモンを補う |
| 手術 | 甲状腺全摘術。大きな甲状腺腫、副作用、早く確実に治したいとき。反回神経麻痺・副甲状腺機能低下症(テタニー)に注意 |
- 小児・思春期も抗甲状腺薬から。甲状腺機能が戻るまで激しい運動(部活動)は休む。食事は制限しない。
- 妊娠を望む人・妊婦の薬の選び方は(→合併症妊娠・妊娠と薬物)。
抗甲状腺薬の副作用と無顆粒球症
| 無顆粒球症 | 最も重い副作用。飲み始めの2〜3か月に多い。突然の高熱・咽頭痛で始まる |
|---|---|
| 皮疹・瘙痒 | 最も多い副作用 |
| 肝障害 | PTUでは重いことがある |
| MPO-ANCA関連血管炎 | PTUを長く飲んでいる人。肺胞出血・急速進行性糸球体腎炎 |
- 始める前に、熱やのどの痛みが出たら薬をやめてすぐ受診するよう伝える。開始後少なくとも2か月は、2週ごとに白血球数(好中球)を測る。
- 無顆粒球症になったら、抗甲状腺薬を直ちに中止し、すぐ広域の抗菌薬(発熱性好中球減少症として扱う)。顆粒球輸血はしない。副腎皮質ステロイドも使わない。
- 悪性高熱症は抗甲状腺薬の副作用ではない(吸入麻酔薬などで起こる)。
周期性四肢麻痺と甲状腺クリーゼ
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
| どんな人 | アジア人(日本人)の若い男性。甲状腺中毒症の症状が軽く、気づかれていないこともある |
|---|---|
| 起こり方 | 炭水化物の多い食事・大量の飲食・激しい運動のあと、夜間〜起床時に四肢に力が入らなくなる。数時間〜1日で治り、くり返す |
| 所見 | 低K血症。左右対称の弛緩性麻痺で、腱反射は低下〜消失。感覚障害はない。CKは正常のことが多い |
| しくみ | 甲状腺ホルモンがNa+-K+-ATPaseを強め、Kが細胞の中に移る(体のKは減っていない) |
| 治療 | Kを補う(入れすぎると、回復したあと高K血症になる)。甲状腺機能を正常にすれば起こらなくなる |
- 周期性四肢麻痺を見たら、FT4・TSH・TRAbを調べる。
甲状腺クリーゼ
| きっかけ | 抗甲状腺薬の自己中断・感染・手術・強いストレス |
|---|---|
| 症状 | 甲状腺中毒症に、意識障害・興奮と、高熱・著しい頻脈・心不全・嘔吐や下痢が加わる。命にかかわる |
| 治療 | 集中治療室で、抗甲状腺薬・無機ヨウ素・副腎皮質ステロイド・β遮断薬を併せて使い、輸液・冷却。ヨウ素は制限せず、投与する |
似た病気との見分け
甲状腺中毒症の原因
| Basedow病 | 無痛性甲状腺炎 | 亜急性甲状腺炎 | |
|---|---|---|---|
| しくみ | ホルモンを作りすぎる | 壊れた甲状腺から漏れ出る(産後に多い) | 壊れた甲状腺から漏れ出る(かぜのあと) |
| 甲状腺の痛み | ない | ない | ある。発熱・CRP↑ |
| TRAb | 陽性 | 陰性 | 陰性 |
| 摂取率・血流 | 高い・増える | 低い・乏しい | 低い・乏しい |
| 治療 | 抗甲状腺薬 | β遮断薬だけで、自然に治る | NSAIDs・副腎皮質ステロイド |
甲状腺炎の甲状腺中毒症には、抗甲状腺薬は効かない(→亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎)。
やせ・動悸のとき
| 妊娠一過性甲状腺機能亢進症 | 妊娠10週前後、多すぎるhCGが甲状腺を刺激して起こる。TRAb陰性。中期には治まる |
|---|---|
| 褐色細胞腫 | 発作性の高血圧・頭痛・動悸・発汗。甲状腺腫はなく、TSHは抑えられない。カテコラミン↑ |
| 1型糖尿病 | 口渇・多飲・多尿と高血糖でやせる。抗GAD抗体 |
| 神経性やせ症 | 食べないためのやせ。徐脈・低体温・無月経。T3は低い |
| 甲状腺悪性リンパ腫 | 橋本病のある高齢者で、甲状腺が急に大きくなる。可溶性IL-2受容体↑(→甲状腺癌) |
脱力・眼の症状のとき
| 原発性アルドステロン症 | 高血圧と低K血症の脱力。代謝性アルカローシス、レニン↓・アルドステロン↑ |
|---|---|
| 重症筋無力症 | 眼瞼下垂・複視が夕方に悪くなる。Kは正常 |
| 多発性筋炎 | 近位筋の筋力低下がゆっくり進み、CK↑ |
| Guillain-Barré症候群 | かぜ・下痢のあと、数日かけて進む弛緩性麻痺。発作をくり返さない |
| 頸動脈海綿静脈洞瘻 | 片側の拍動する眼球突出と、眼の血管雑音・結膜の充血 |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
甲状腺中毒症で、食欲が保たれているのに起こる体重の変化は?★★★必修
体重減少
代謝が上がり、食べる以上に使う。うつ病や消化器のがんのやせは、食べられなくなって起こる。
- Q2
甲状腺機能亢進症の若い女性に起こりやすい月経の変化は?★★★必修
月経異常(過少月経・無月経)
ホルモンの乱れで月経が少なくなり、止まることもある。
- Q3
若い人の心房細動。原因を探すため、まず調べる検査は?★★★
甲状腺機能(TSH・FT4)
体重減少・手指振戦があれば、なおさら疑う。甲状腺中毒症が治ると、心房細動が治まることもある。
- Q4
Basedow病の甲状腺腫は、飲み込むとどう動く?★★★必修
一緒に上下に動く
甲状腺は気管に付いているため。びまん性で柔らかく、圧痛・表面の凹凸・皮膚との癒着はない。
- Q5
甲状腺眼症で見られる眼の所見は?(2つ)★★★必修
眼球突出・瞼裂の開大
眼窩の脂肪と外眼筋が腫れて眼球が前に出て、上眼瞼が後退する。まばたきの減少・眼瞼の腫れもあり、外眼筋の動きが悪いと複視になる。
- Q6
甲状腺中毒症を疑ったとき、まず測る血液検査は?(2つ)★★★必修
TSH・FT4
TSHが抑えられ、FT4が高ければ甲状腺中毒症。Basedow病ではFT3も高く、FT4より目立つことが多い。
- Q7
甲状腺中毒症の原因がBasedow病だと確かめる血液検査は?★★★必修
TRAb(抗TSH受容体抗体)
TSH受容体を刺激する自己抗体で、病気の原因そのもの。無痛性・亜急性甲状腺炎や、妊娠初期の一過性の亢進では陰性。
- Q8
Basedow病の甲状腺中毒症で、初めに使う薬は?(2つ)★★★
チアマゾール(抗甲状腺薬)・β遮断薬
チアマゾールはホルモンの合成を止めるが、効くまで数週かかる。その間の動悸・頻脈・振戦をβ遮断薬で抑える。
- Q9
小児のBasedow病。甲状腺機能が戻るまで、生活で指示することは?★★★
激しい運動(部活動)を休む
頻脈で心臓に負担がかかる。代謝が上がっているので、食事は制限しない。治療は小児も抗甲状腺薬から。
- Q10
抗甲状腺薬の副作用で、最も重いものは?★★★必修
無顆粒球症
飲み始めの2〜3か月に多く、突然の高熱・咽頭痛で始まる。最も多い副作用は皮疹・瘙痒。
- Q11
抗甲状腺薬を始めてから2か月ほど、2週ごとに見る検査は?★★★必修
白血球数(好中球)
無顆粒球症を早く見つけるため。Basedow病では治療の前から白血球が少なめのことがあり、始める前にも測っておく。
- Q12
チアマゾール内服中に高熱と咽頭痛。好中球がほとんどない。薬を中止したうえで、すぐ始める治療は?★★★
広域の抗菌薬
発熱性好中球減少症として、血液培養をとってすぐ始める。回復した後も、もう一方の抗甲状腺薬(PTU)には替えない(同じ副作用が出やすい)。
- Q13
若い男性が、大食や運動の翌朝に四肢に力が入らない。低K血症。考える病気は?★★★必修
甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
甲状腺ホルモンがNa+-K+-ATPaseを強め、Kが細胞の中に移る。FT4・TSH・TRAbを調べる。高血圧と代謝性アルカローシスがあれば、原発性アルドステロン症も考える。
- Q14
Basedow病の治療を自己中断した人が、高熱・著しい頻脈・嘔吐から意識障害に。考える病態は?★★★
甲状腺クリーゼ
感染・手術・強いストレスもきっかけになる。命にかかわり、集中治療室で治療する。
- Q15
プロピルチオウラシルを長く飲んでいる人に、血痰や腎炎を起こす病気は?★★★
MPO-ANCA関連血管炎
肺胞出血・急速進行性糸球体腎炎を起こす。PTUでは重い肝障害にも注意する。
選択肢の○×
症状
検査
副作用
合併症
- 7
甲状腺クリーゼでは、ヨウ素の摂取を制限する。107A48
無機ヨウ素を投与して、ホルモンの放出を止める。抗甲状腺薬・副腎皮質ステロイド・β遮断薬を併せ、輸液と冷却も行う。