大腸癌・大腸ポリープ
便潜血・血便・貧血から、内視鏡治療・手術・転移の治療まで
36問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 便潜血が1回でも陽性なら全大腸内視鏡。再検で代えない。高齢者の鉄欠乏性貧血でも大腸を調べる。
- 左側(S状結腸・直腸)は血便・便通異常・便が細い。右側は貧血や腫瘤で見つかる。確定は大腸内視鏡と生検、転移は胸腹部の造影CTで探す。
- 腺腫と早期癌は内視鏡で切除。遠隔転移のない進行癌は手術(リンパ節も一緒に切る)。肝転移も切除できれば切る。
危険因子と遺伝する病気
大腸癌の多くは、腺腫(ポリープ)が大きくなる途中で癌になる。日本で増えている。
| 生活習慣 | 欧米化した食事(肉・脂肪が多く、食物繊維が少ない)・飲酒・運動不足(習慣的な運動で結腸癌は減る) |
|---|---|
| 病気 | 糖尿病・長く続く潰瘍性大腸炎 |
| 遺伝 | 家族性大腸腺腫症・Lynch症候群など(下の表)。どれも常染色体優性遺伝 |
| ポリープ・遺伝子 | 手がかり・対応 | |
|---|---|---|
| 家族性大腸腺腫症 | 大腸に腺腫が100個以上。APC遺伝子 | 放っておけばほぼ全員が癌になる。若いうちに予防的に大腸全摘 |
| Lynch症候群 | ポリープは少ない。ミスマッチ修復遺伝子 | 若年で発症・右側結腸に多い・子宮体癌など他臓器の癌も多い |
| Peutz-Jeghers症候群 | 過誤腫。胃〜大腸の全消化管にでき、小腸に多い | 口唇・口腔の黒い色素斑。腸重積・腸閉塞の原因。消化管の外(膵・乳腺・卵巣)の癌も多い |
- 自然に脱落することがあるのは若年性ポリープ(小児の直腸に多い)。
症状:右側と左側
大腸癌は直腸とS状結腸に多い。症状は、できた場所で違う。
| 右側(盲腸・上行結腸) | 左側(S状結腸・直腸) | |
|---|---|---|
| 腸の中 | 内腔が広く、便はやわらかい | 内腔が狭く、便は固い |
| 症状 | 出にくい。貧血や腹部の腫瘤で見つかる | 血便・便通異常(便秘と下痢のくり返し)・便が細い |
| 進むと | 腫瘤が大きくなる・体重が減る | 腸閉塞 |
- 高齢者の鉄欠乏性貧血は、腹部の症状がなくても大腸癌を探す。鉄剤だけで済ませない。
- 腹筋に力を入れると触れなくなる腫瘤は、腹腔内のもの(右下腹部なら上行結腸癌)。腹壁の腫瘤は、力を入れても触れる。
- 直腸の腫瘍は直腸指診で触れることがある。
便潜血検査と検診
大腸がん検診は、免疫法の便潜血検査で行う(40歳以上、年1回)。
| しくみ | ヒトのHbだけに反応し、特異度が高い。食事制限は要らない(要ったのは昔の化学法) |
|---|---|
| 採り方 | 2日法:別々の排便から1回1容器ずつ、決められた少量を採る |
| 保存 | 時間がたつとHbが壊れ、偽陰性になる。冷所に置き、早めに出す |
| 拾いにくい | 胃・十二指腸の出血(Hbが消化される) |
| 陽性なら | 1回でも陽性なら全大腸内視鏡。再検・腫瘍マーカー・腹部超音波では代えない。内視鏡をためらう人には、必要性をよく説明する |
精密検査と病期
- ① 大腸内視鏡場所と形を見て、生検で確定
- ② 胸腹部の造影CTリンパ節・肝・肺の転移、腹水
- ③ 病期を決める深達度・リンパ節転移・遠隔転移
- 確定は大腸内視鏡と生検。病期は胸腹部の造影CTで転移を探して決める。
- 手術できるかは、CTの肝転移・リンパ節の腫大・腹水(腹膜播種)で決める。
- 病期は壁深達度・リンパ節転移・遠隔転移で決まり、組織型は入らない。癌が粘膜下層までにとどまるものを早期癌という。
- FDG-PETは最初の検査ではない(CTで迷う転移・再発を探すとき)。MRIは直腸癌の局所の広がりを見る。
- 血行性の転移は肝臓が最も多い(門脈を通るため)。次は肺。
- 腫瘍マーカーはCEA(CA19-9も)。早期では上がらないことが多く、精密検査の代わりにならない。
- 便秘・腹部膨満・悪心があり腸閉塞が疑われたら、腸管洗浄液の前に腹部X線。洗浄液は腸閉塞・穿孔には使わない。
画像で出たら 進行癌は内視鏡で、盛り上がった縁(周堤)に囲まれた潰瘍。全周に広がると、注腸造影で腸がりんごの芯のように細くなる。CTでは腸の壁が一部だけ厚くなる。直腸は内腔が広く、半月状の横ひだ(Houston弁)が見える。
ポリープと早期癌の内視鏡治療
腺腫と早期癌は内視鏡で切除する。内視鏡で取るのは、粘膜内か、粘膜下層にわずかに入った癌まで。進行癌は内視鏡治療の対象ではない。
| ポリペクトミー | 茎のあるポリープ。茎にスネアをかけ、通電して切る |
|---|---|
| EMR(内視鏡的粘膜切除術) | 粘膜下層に液を入れて持ち上げ、スネアで切る |
| ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術) | 大きく平らな病変も一括で切除。周りを切り、粘膜下層をナイフではがす |
- 前に抗凝固薬(抗血小板薬も)を確かめ、休薬するかを処方医と決める。降圧薬・スタチンはふつう続ける。
- 合併症は出血と穿孔。切除後の腹痛には、まず胸腹部X線で遊離ガスを探す。
手術と転移の治療
遠隔転移のない進行癌は手術。癌のある腸を、リンパ節と一緒に切る(郭清)。大腸癌の根治は手術で、放射線ではない(直腸癌では、手術の前に化学療法と合わせて使うことがある)。
| 場所 | 術式 | ポイント |
|---|---|---|
| 盲腸・上行結腸 | 右半結腸切除術 | 上腸間膜動脈の枝を処理 |
| 横行結腸 | 横行結腸切除術 | 中結腸動脈を処理 |
| S状結腸 | S状結腸切除術 | 下腸間膜動脈を根部で処理 |
| 肛門から離れた直腸 | 低位前方切除術 | 肛門を残す |
| 肛門を残せない下部直腸 | 腹会陰式直腸切断術 | 肛門ごと取り、永久の人工肛門(左下腹部) |
| 穿孔・閉塞の緊急 | Hartmann手術 | 切って口側を人工肛門に、肛門側は閉じる |
- 直腸の手術は砕石位。腹部と会陰の両方から操作する。
- 直腸癌の手術で骨盤の自律神経が傷むと、排尿障害・射精障害。
| 切除できる転移 | 肝転移は切除できれば切除。ほかの消化器癌と違い、予後がよくなる。肺転移も切除 |
|---|---|
| 切除できない転移 | 全身化学療法。小さくなれば切除を考え直す。TACEは肝細胞癌の治療 |
| 手術のあと | 病期Ⅲでは術後補助化学療法 |
似た病気との見分け
血便・下血のとき
| 内痔核 | 排便時の痛みのない鮮血。痔核があっても、中高年の血便は大腸を調べる |
|---|---|
| 潰瘍性大腸炎 | 若い人の粘血便・下痢。直腸から連続するびらん |
| Crohn病 | 若い人の腹痛・下痢・痔瘻。縦走潰瘍・敷石像 |
| 大腸憩室出血 | 高齢者の、突然の痛みのない大量の下血 |
| 虚血性大腸炎 | 便秘のあとの急な左下腹部痛と血便。数日でよくなる |
腫瘍・腫瘤のとき
| 直腸の神経内分泌腫瘍(カルチノイド) | 直腸の粘膜下の、黄色っぽく硬い腫瘤。小さくそろった細胞が胞巣状に並ぶ |
|---|---|
| 腹膜偽粘液腫 | 腹部が膨らみ、穿刺でゼリー状の液。原発は虫垂・卵巣の粘液性腫瘍 |
| 腸重積 | 小児の間欠的な腹痛・血便。成人では腫瘍が先進部になる |
| 腹壁の腫瘤 | デスモイド・腹壁瘢痕ヘルニア。腹筋に力を入れても触れる |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
大腸癌・大腸ポリープが日本で増えた原因とされるのは?★★★
欧米化した食事習慣
肉・脂肪が多く、食物繊維が少ない食事。慢性炎症・ウイルス・ストレスが原因とはいわれていない。
- Q2
大腸癌の危険因子になる生活習慣と病気は?(2つ)★★★必修
飲酒・糖尿病
反対に、習慣的な運動は結腸癌の危険を下げる。飲酒は咽頭・食道・肝臓の癌にも関わるが、膀胱癌の危険因子は喫煙。
- Q3
若くして発症し、右側の結腸に多く、子宮体癌など他の臓器の癌も起こす遺伝性の病気は?★★★
Lynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)
ミスマッチ修復遺伝子の異常で、常染色体優性遺伝。APC遺伝子の異常は家族性大腸腺腫症。ふつうの大腸癌より予後が悪いわけではない。
- Q4
子どもの口唇・口腔に黒い色素斑。母方の家族に大腸のポリープがある。考える病気は?★★★
Peutz-Jeghers症候群
ポリープは過誤腫(平滑筋が樹枝状に入る)。小腸の大きなポリープが先進部になり、腸重積・腸閉塞を起こす。
- Q5
中高年で、血便と便通異常(便秘と下痢のくり返し・便が細い)が続く。考える病気は?★★★必修
左側の大腸癌(S状結腸癌・直腸癌)
左側は内腔が狭く便が固いので、狭くなった症状と血便が出やすい。CEAが高ければ、なお疑う。若い人の粘血便なら潰瘍性大腸炎も考える。
- Q6
高齢者の鉄欠乏性貧血。腹部の症状はない。探す病気は?★★★
大腸癌(とくに右側の結腸癌)
右側は内腔が広く便がやわらかいので、詰まりにくく、出血も便に混じって気づかれない。鉄剤で済ませず、便潜血と大腸内視鏡で調べる。
- Q7
市町村の大腸がん検診で行う検査は?★★★必修
免疫法の便潜血検査
ヒトのHbだけに反応するので特異度が高く、食事制限が要らない。腹部超音波や腫瘍マーカーは検診に使わない。
- Q8
便潜血検査の便の採り方は?★★★
2日法:別々の排便から1回1容器ずつ
決められた少量でよい。5日間続けたり、たくさん採ったりはしない。前日の食事制限も要らない。
- Q9
便潜血陽性。行う精密検査は?★★★必修
全大腸内視鏡(下部消化管内視鏡)
症状がなくても、過敏性腸症候群のような症状でも行う。内視鏡をためらう人には、必要性をよく説明する。
- Q10
大腸癌を疑う。確定と病期診断のために行う検査は?(2つ)★★★必修
大腸内視鏡(生検)・胸腹部の造影CT
内視鏡で場所と形を見て生検し、CTでリンパ節・肝・肺の転移を探す。小腸造影・腹腔動脈造影・ERCPは使わない。
- Q11
手術できるかを決めるため、腹部造影CTで確かめる所見は?(3つ)★★★
肝転移・リンパ節の腫大・腹水
腹水は腹膜播種を考える。腸の癒着や内臓脂肪の量は、手術の適応を決めない。
- Q12
大腸癌が血行性に最も転移しやすい臓器は?★★★
肝臓
腸の静脈血は門脈を通って、まず肝臓に入る。次に多いのは肺。
- Q13
大腸癌で上がる腫瘍マーカーは?★★★
CEA(CA19-9も)
早期では上がらないことが多く、便潜血陽性の精密検査の代わりにはならない。術後の再発の目安に使う。
- Q14
内視鏡で、茎のある隆起性のポリープ。行う治療は?★★★
ポリペクトミー
茎にスネアをかけ、通電して切る。腺腫は癌になりうるので切る。開腹手術やメサラジンは要らない。
- Q15
粘膜下層に液を入れ、周りを切って粘膜下層をはがし、大きな病変も一括で切る内視鏡治療は?★★★
内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)
EMRは、持ち上げた病変をスネアで切る方法で、大きな病変は一括で取りにくい。茎のあるポリープはポリペクトミー。
- Q16
大腸ポリープの内視鏡切除の前に、とくに確かめる内服薬は?★★★
抗凝固薬(抗血小板薬も)
切ったあとに出血しやすい。休薬するかは、血栓の危険と合わせて処方医と決める。降圧薬・スタチンはふつう続ける。
- Q17
遠隔転移のない進行大腸癌の治療は?★★★
手術(リンパ節郭清を伴う腸切除)
内視鏡で取れるのは早期癌まで。進行癌はリンパ節に転移しうるので郭清する。
- Q18
転移のないS状結腸癌の術式は?★★★
S状結腸切除術
癌のある場所で術式を選ぶ。盲腸・上行結腸は右半結腸切除術、肛門を残せない下部直腸は直腸切断術。大腸全摘は1か所の癌には行わない。
- Q19
S状結腸癌の根治手術で、根部で結紮切離する動脈は?★★★
下腸間膜動脈
リンパ節は動脈に沿って並ぶので、根もとで切って郭清する。右側の結腸は上腸間膜動脈の枝(回結腸動脈・中結腸動脈など)。
- Q20
肛門縁から10cmの直腸癌。肛門を残せる術式は?★★★
低位前方切除術
肛門に近く肛門を残せないときは腹会陰式直腸切断術。Hartmann手術は穿孔・閉塞などの緊急で行う。
- Q21
腹会陰式直腸切断術で、人工肛門をつくる場所は?★★★
左下腹部(S状結腸の単孔式)
肛門ごと取るので、一生使う人工肛門になる。
- Q22
大腸癌の肝転移・肺転移。ほかに病変がなく切除できる。治療は?★★★
切除(肝切除・肺切除)
大腸癌は、ほかの消化器癌と違い、転移を切れば長く生きられることがある。
- Q23
両葉に多発し、切除できない大腸癌の肝転移。治療は?★★★
全身化学療法
小さくなれば切除を考え直す。TACEは多血性の肝細胞癌の治療。
- Q24
直腸の粘膜下に硬い腫瘤。小さくそろった細胞が胞巣状に並ぶ。診断は?★★★
神経内分泌腫瘍(カルチノイド)
消化管では直腸に多い。粘膜の上皮から出る癌・腺腫と違い、表面はなめらかな粘膜下腫瘍の形。
- Q25
腹部が膨らみ、穿刺でゼリー状の液。腹膜偽粘液腫の原発として考える臓器は?(2つ)★★★
虫垂・卵巣
粘液を出す腫瘍が破れて、腹腔に粘液がたまる。CEAが上がることがある。
- Q26
大腸に100個以上の腺腫ができる遺伝性の病気と、その原因遺伝子は?★★★
家族性大腸腺腫症・APC遺伝子
放っておけばほぼ全員が大腸癌になるので、若いうちに予防的に大腸全摘をする。
- Q27
大腸ポリープを切除した日の夜に腹痛。まず行う検査は?★★★
胸腹部X線(遊離ガスで穿孔を探す)
切除の合併症は出血と穿孔。腹膜刺激症状がなくても、穿孔を先に確かめる。
- Q28
直腸癌の開腹手術の体位は?★★★
砕石位
両脚を開いて挙げ、腹部と会陰(肛門)の両方から操作できる。
選択肢の○×
検査
危険因子
- 5
Peutz-Jeghers症候群のポリープは大腸だけにでき、癌にはならない。120A23
胃から大腸までの全消化管にでき、小腸に最も多い。まれに癌になり、膵・乳腺・卵巣など消化管の外の癌も多い。自然に脱落することがあるのは若年性ポリープ。
症状
- 6
腹筋に力を入れると触れなくなる腫瘤は、腹壁にある。105A22
腹腔内にある(緊張した腹筋に隠れる)。腹壁の腫瘤(デスモイド・瘢痕ヘルニア)は、力を入れても触れる。右下腹部なら上行結腸癌を考える。
便潜血
手術
- 10
直腸癌の手術のあとは、排尿障害や射精障害が起こりうる。105A18
骨盤の自律神経が傷むため。できるだけ神経を残して切る。結腸の手術では起こりにくい。