脳梗塞
突然の片麻痺から、画像・t-PA・血栓回収・再発予防まで
37問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 突然の片麻痺・失語は脳卒中を考える。頭部CTで出血を除外し、MRIの拡散強調像で早い梗塞を見る。
- 発症4.5時間以内で禁忌がなければ、t-PA静注。主幹動脈の閉塞には機械的血栓回収療法も。発症時刻が分からなくても、DWI-FLAIRミスマッチならt-PAを考える。
- 再発予防は、心房細動なら抗凝固薬、それ以外は抗血小板薬。TIAはその日のうちに精査し、頸動脈狭窄と心房細動を探す。
起こり方と3つの病型
脳の動脈が詰まり、その先の脳が壊死する。症状が突然出るのが脳血管障害の特徴。危険因子は高血圧・糖尿病・脂質異常症(LDL高値)・喫煙・心房細動。
| 病型 | 詰まり方 | 手がかり |
|---|---|---|
| 心原性脳塞栓症 | 心臓でできた血栓が飛ぶ。原因の多くは心房細動(左房の血栓) | 脈が不整。活動中に突然起こり、すぐ完成する。皮質を含む広い梗塞で、失語・半側空間無視・意識障害が出やすい。出血性梗塞になりやすい |
| アテローム血栓性脳梗塞 | 頸動脈や頭蓋内の太い動脈の動脈硬化に、血栓ができる | TIAをくり返したあとに起こりやすい。段階的に悪くなる。頸部の血管雑音 |
| ラクナ梗塞 | 高血圧で、細い穿通枝が詰まる | 内包・視床・橋など深い所の小さな梗塞(15 mm未満)。失語などの皮質症状は出ない。意識は保たれる |
心房細動のほかの塞栓の源
| 僧帽弁狭窄症 | 左房が拡大し、左房内に血栓ができる(心房細動も伴いやすい) |
|---|---|
| 感染性心内膜炎 | 発熱・心雑音のある人の突然の片麻痺。弁の疣贅が飛ぶ |
| 左房粘液腫 | 腫瘍のかけらが飛ぶ。体位で変わる心雑音 |
| 急性大動脈解離 | 胸・背中・首の突然の激痛のあとの片麻痺。解離が頸動脈に及ぶ。t-PAは使えない |
| 若い人の脳梗塞 | 抗リン脂質抗体症候群(流産をくり返す)、奇異性塞栓(卵円孔開存・肺動静脈瘻で、静脈の血栓が脳へ) |
症状から、詰まった血管と病巣を考える
症状は突然出る。数週間かけてゆっくり進むなら、脳梗塞以外を考える。症状と反対側の大脳に病巣がある。
詰まった血管と症状
| 中大脳動脈 | 対側の顔面・上肢に強い片麻痺と感覚障害。優位半球(ふつう左)なら失語、劣位半球(右)なら左半側空間無視。両眼は病巣の側を向く(共同偏視) |
|---|---|
| 前大脳動脈 | 対側の下肢に強い麻痺 |
| 後大脳動脈 | 対側の同名半盲(後頭葉) |
| 内頸動脈(頸部) | 同側の一過性黒内障と、対側の片麻痺。眼動脈は内頸動脈の枝 |
| 穿通枝 | ラクナ梗塞。内包なら対側の運動麻痺だけのことが多い。橋なら、側方視で病側の眼が内転しない(MLF症候群)と対側の片麻痺 |
| 椎骨動脈・後下小脳動脈 | 延髄外側症候群(Wallenberg症候群)。めまい・嚥下障害、同側のHorner症候群・小脳失調、対側の体の温痛覚障害 |
大脳皮質の症状と病巣
| 運動性失語(Broca失語) | 話し方がたどたどしく、復唱もできないが、理解はよい。優位半球の前頭葉(下前頭回)。口角の麻痺を伴いやすい |
|---|---|
| 感覚性失語(Wernicke失語) | 流暢に話すが錯語・造語が多く、理解が悪い(指示に従えない)。優位半球の上側頭回の後部 |
| Gerstmann症候群 | 左右失認・手指失認・失書・失算。優位半球の頭頂葉(角回) |
| 半側空間無視 | 左側のものに気づかない(食事の左側を残す)。劣位半球(右)の頭頂葉。着衣失行も右の頭頂葉 |
| 一側の上肢だけの感覚障害 | 腕・手だけの感覚鈍麻。目を閉じると指をうまくつまめない。対側の中心後回(感覚野の手の領域) |
画像検査
- ① 頭部CT出血を除外
- ② MRI拡散強調像早い梗塞を見る
- ③ MRA詰まった血管
- ④ 治療を決めるt-PA・血栓回収
- 発症直後のCTは正常のことが多い。梗塞がはっきり低吸収になるのは、数時間〜1日たってから。出血は発症直後から高吸収に写る。
- 拡散強調像(DWI)は発症1〜2時間で高信号になり、早い梗塞が分かる。FLAIR・T2強調像に写るのは数時間たってから。
- DWIに写り、FLAIRにまだ写らない(DWI-FLAIRミスマッチ)なら、発症から4.5時間以内と考える。
- T2*強調像で出血を見る(出血性梗塞・微小出血は低信号)。
- MRA(またはCTA)で、主幹動脈(内頸動脈・中大脳動脈)の閉塞を探す。
- 急性期の診断に、髄液検査・脳波・SPECTは使わない。
画像で出たら DWIで、詰まった血管の領域に一致する高信号。心原性脳塞栓症は皮質を含む広い高信号、ラクナ梗塞は深い所の小さな高信号。MRAでは中大脳動脈などが途中で途切れる。
急性期の治療
| 発症4.5時間以内 | 禁忌がなければt-PA(アルテプラーゼ)静注。早いほど効く。総量の1割を急速に静注し、残りを1時間で点滴 |
|---|---|
| 主幹動脈の閉塞 | 機械的血栓回収療法(カテーテルで血栓を取る)。t-PAに続けて行い、t-PAが使えなくても行える。原則は発症6時間以内、画像で救える脳が残っていれば24時間まで |
| t-PAの時間を過ぎた | 非心原性なら抗血小板薬(アスピリンなど)。大きな梗塞で脳浮腫があれば、高張グリセロールの静注 |
| 血圧 | 原則として下げない(脳の血流を保つ)。220/120 mmHgを超えれば下げる。t-PAを使うなら185/110 mmHg未満にする |
t-PAの前に確かめること
- 発症時刻。分からなければ、最後に元気だった時刻から数える(夜は元気で、朝に倒れているのが見つかった、など)。
- 今は、発症時刻が分からなくても、見つかってから4.5時間以内で、DWI-FLAIRミスマッチがあれば、t-PAを考える。FLAIRにも写っていれば、時間がたっているので使わない。
- 検査:頭部CT(またはMRI)・血小板数・PT-INR・血糖。動脈血ガスは要らない。
- 禁忌:頭蓋内出血の既往、PT-INR 1.7超(ワルファリン内服中など)、血小板10万/µL以下、2週間以内の大手術・3週間以内の消化管出血、下げても185/110 mmHg以上、血糖50未満か400 mg/dL超、くも膜下出血・大動脈解離の疑い。
- 高血圧の既往や、重症であること(NIHSSが高い)だけでは禁忌にならない。
TIAと頸動脈狭窄
一過性脳虚血発作(TIA)は、片麻痺・構音障害・一過性黒内障などが数分〜1時間ほどで消え、MRIに梗塞がないもの。数日以内に脳梗塞を起こしやすいので、その日のうちに精査し、治療を始める。
- 診察:頸部の血管雑音を聴く。脈の不整(心房細動)も見る。
- 検査:頭部MRI・MRAに加えて、頸動脈エコー・Holter心電図・心エコーで塞栓の源を探す。
- 一過性黒内障(片眼が数分見えなくなる)は、同側の内頸動脈の狭窄から眼動脈に塞栓が飛ぶ。対側の手足の脱力発作も起こる。
- 心房細動によるTIAは、すぐ抗凝固療法。動脈硬化によるTIAは抗血小板薬。
頸動脈狭窄症
| 起こること | 狭い所の血栓が飛んでTIA・脳梗塞。症状がなく、脳ドックで見つかることもある |
|---|---|
| 危険因子 | 高血圧・糖尿病・喫煙・LDLコレステロール高値(スタチンで下げる) |
| 治療 | 症状のある高度狭窄は、頸動脈内膜剝離術(CEA)か頸動脈ステント留置術(CAS)。抗血小板薬・スタチンと組み合わせる。手術の危険が高い人はCAS |
画像で出たら 頸動脈造影で、内頸動脈の起始部(総頸動脈から分かれてすぐ)が細くなる。ステント留置のあとは、狭い所が広がり、網目状の金属が写る。
再発予防とリハビリテーション
| 心原性(心房細動) | 抗凝固薬(DOAC・ワルファリン)。抗血小板薬では防げない |
|---|---|
| 非心原性(アテローム血栓性・ラクナ) | 抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル・シロスタゾール)。心房細動がなければDOACは使わない |
| 危険因子 | 降圧(130/80 mmHg未満)・スタチン・禁煙・血糖の管理 |
リハビリテーション
- 全身状態が落ち着けば、急性期から始める。関節可動域訓練・良肢位の保持・段階的な座位訓練。関節拘縮などの廃用を防ぐ。
- 回復を見る指標は、麻痺した手足の筋力。計画の目標は、患者が望む生活像に合わせる。
- 回復期:健側の手で更衣などのADL訓練、麻痺側の他動可動域訓練(痙縮による拘縮を防ぐ)、下垂足には短下肢装具と杖で歩行訓練。手指が動かなければ、反対の手で書く(利き手交換)。
- 合併症:嚥下障害からの誤嚥性肺炎、脳卒中のあとのうつ病。
似た病気との見分け
| 脳出血 | CTで発症直後から高吸収。頭痛・嘔吐・意識障害が強いことが多い |
|---|---|
| くも膜下出血 | 突然の激しい頭痛。片麻痺は少ない。CTで脳底槽が高吸収 |
| 慢性硬膜下血腫 | 軽い頭部外傷の数週あとから、ゆっくり進む片麻痺・認知機能の低下。CTで三日月形の血腫 |
| 脳腫瘍 | 数週〜数か月かけて進む麻痺・頭痛・けいれん |
| 低血糖 | 片麻痺に見えることがあり、食べると良くなる。意識障害・片麻痺では、まず血糖を測る |
| もやもや病 | 小児は啼泣・笛の吹奏など過呼吸でTIA。成人では脳出血も。MRAで内頸動脈の終末部が細い |
| 椎骨動脈解離 | 若い人の後頸部痛のあとに、脳幹・小脳の梗塞 |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
心原性脳塞栓症の原因で最も多いのは?★★★
心房細動
左房(左心耳)でよどんだ血が固まり、その血栓が飛ぶ。脈の不整や続く動悸が手がかり。上室頻拍・完全房室ブロックは塞栓の原因になりにくい。
- Q2
高血圧で細い穿通枝が詰まり、内包や橋に小さな梗塞ができる病型は?★★★
ラクナ梗塞
失語・半側空間無視などの皮質症状や意識障害は出ず、片側の運動麻痺だけなどで来る。再発予防は抗血小板薬。
- Q3
片側のしびれ・麻痺で、脳梗塞を最も強く疑わせる病歴は?★★★必修
症状が突然出た
脳血管障害は、何をしていた時に起きたか言えるほど急に始まる。頭痛がない・熱がないだけでは決められない。
- Q4
右下肢だけに強い麻痺が出た。詰まった動脈は?★★★
左の前大脳動脈
前大脳動脈は大脳の内側面(下肢の運動野)を養う。顔面・上肢に強い麻痺なら中大脳動脈。
- Q5
話し方がたどたどしく復唱もできないが、指示はよく理解できる。失語の名前と病巣は?★★★必修
運動性失語(Broca失語)・優位半球の下前頭回
右の口角の麻痺を伴うことが多い。脈が不整なら、心原性脳塞栓症を考える。
- Q6
流暢に話すが造語ばかりで、簡単な指示にも従えない。ほかに出やすい症状は?★★★
左右失認
感覚性失語(Wernicke失語)で、病巣は優位半球の側頭葉〜頭頂葉。頭頂葉の角回に及ぶと、左右失認・手指失認・失書・失算(Gerstmann症候群)が出る。着衣失行は右の頭頂葉の症状。
- Q7
右側方視で左眼が内転できず、右眼に眼振。右片麻痺もある。病巣は?★★★
左の橋
左のMLF(内側縦束)と、交叉する前の錐体路が障害される。輻湊は保たれる。
- Q8
発症2時間の脳梗塞。病変を最も早く写すMRIの撮り方は?★★★必修
拡散強調像(DWI)
細胞がむくんで水の動きが落ちた所が高信号になる。FLAIR・T2強調像に写るのは数時間後で、T1強調像はさらに遅い。
- Q9
t-PAの前に、出血を除外するために行う画像検査は?★★★必修
頭部単純CT(またはMRI)
出血は発症直後から高吸収に写る。MRIならT2*強調像で出血が分かる。
- Q10
発症90分。CTで出血がなく、禁忌もない脳梗塞。まず静注する薬は?★★★必修
t-PA(アルテプラーゼ)
総量の1割を急速静注し、残りを1時間で点滴する。早く始めるほど効く。
- Q11
t-PAを静注できるのは、発症から何時間以内?★★★必修
4.5時間以内
発症時刻が分からなければ、最後に元気だった時刻から数える。
- Q12
t-PAの適応を決めるために、必ず聞くことは?(2つ)★★★
発症時刻(最後に元気だった時刻)・頭蓋内出血の既往
頭蓋内出血の既往は禁忌(また出血しやすい)。歯科治療の既往や、最後に食べた時刻は関係ない。
- Q13
ワルファリン内服中の脳梗塞。t-PAが禁忌になるPT-INRは?★★★
1.7を超えるとき
出血しやすいため。ワルファリンを飲んでいても、PT-INRが1.7以下なら使える。
- Q14
MRAで中大脳動脈が途切れている。t-PAが使えない時にも行える治療は?★★★
機械的血栓回収療法
カテーテルで血栓を取る。t-PAが使えれば、t-PAに続けて行う。MRAで主幹動脈の閉塞がなければ対象にならない。
- Q15
t-PAの時間を過ぎ、主幹動脈の閉塞もない非心原性脳梗塞。まず内服で始める薬は?★★★
抗血小板薬(アスピリンなど)
症状の進行と再発を防ぐ。DOACなどの抗凝固薬は、心房細動による心原性脳塞栓症に使う。
- Q16
脳梗塞の脳浮腫を減らすために静注する薬は?★★★
高張グリセロール
頭蓋内圧が上がるような大きな梗塞で使う。副腎皮質ステロイドは脳梗塞には使わない。
- Q17
片麻痺が30分で消え、MRIに梗塞がない。何という?★★★必修
一過性脳虚血発作(TIA)
脳梗塞の前ぶれ。原因は頸動脈狭窄と心房細動が多い。
- Q18
片眼が一時的に見えなくなる発作(一過性黒内障)をくり返す。狭窄を疑う血管は?★★★
同側の内頸動脈(起始部)
狭い所から飛んだ塞栓が、内頸動脈の枝の眼動脈に詰まる。対側の手足の脱力発作も起こる。
- Q19
一過性黒内障やTIAの患者で、頸動脈狭窄の手がかりになる診察は?★★★必修
頸部の聴診(血管雑音)
眼圧・視野・対光反射は、発作のない時には異常が出にくい。
- Q20
TIAで、塞栓の源を探すために行う検査は?(3つ)★★★
頸動脈エコー・Holter心電図・心エコー
頸動脈の狭窄、発作性の心房細動、心臓の中の血栓を探す。脳波やABIは原因探しに使わない。
- Q21
症状のある高度の頸動脈狭窄に行う治療は?(2つ)★★★
頸動脈内膜剝離術(CEA)・頸動脈ステント留置術(CAS)
血管内治療で行うならステント留置術。血栓溶解療法や動脈塞栓術は対象にならない。
- Q22
頸動脈狭窄を進める危険因子で、スタチンで下げる検査値は?★★★必修
LDLコレステロール
高血圧・糖尿病・喫煙もあわせて治す。症状がなくても、脳ドックで見つかれば危険因子を管理する。
- Q23
心房細動による脳梗塞。再発を防ぐ薬は?★★★必修
抗凝固薬(DOAC・ワルファリン)
左房の血栓は、よどんだ血が凝固因子で固まったもの。抗血小板薬では防げない。TIAでも同じ。
- Q24
脳梗塞のあと、回復の経過を評価するのに最も役立つのは?★★★必修
麻痺した手足の筋力
しびれの強さは主観的で変わりやすい。頭部CT・Dダイマー・PT-INRは回復の指標ではない。
- Q25
リハビリテーションの計画を立てる時、最も大切な情報は?★★★必修
患者が望む生活像
どんな生活に戻りたいかを目標にして、多職種で計画する。
- Q26
左上肢だけ感覚が鈍く、目を閉じると左の指をうまくつまめない。病巣は?★★★
右の中心後回(感覚野の手の領域)
感覚野は体の部位ごとに分かれているので、小さな梗塞で腕や手だけの感覚障害が出る。
- Q27
数週間かけてゆっくり進む片麻痺。考える病気は?(2つ)★★★
慢性硬膜下血腫・脳腫瘍
脳梗塞は突然起こる。慢性硬膜下血腫は軽い頭部外傷の数週あとに多く、CTで三日月形の血腫が見える。
選択肢の○×
画像
急性期
画像
- 6
急性期の脳梗塞の診断には、脳血流SPECTが最も役立つ。101E23
すぐ撮れて早い梗塞が分かるのは、MRIの拡散強調像。髄液検査・脳波も診断には使わない。
急性期
予防とリハ
- 11
利き手の手指が全く動かない片麻痺では、麻痺した手での書字訓練を続ける。116A75
反対の手で書く練習(利き手交換)をする。麻痺した上肢は他動可動域訓練で拘縮を防ぐ。更衣などのADL訓練、短下肢装具と杖での歩行訓練も行う。