うつ病
気分の落ち込みと不眠から、自殺の危険・治療・職場の対応まで
38問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 抑うつ気分か興味・喜びの喪失に、早朝覚醒・食欲低下・考えが進まない(思考制止)が続く。朝に悪い。妄想なら罪業・貧困・心気の微小妄想。
- 自殺念慮は、はっきり尋ねる(尋ねても危険は増えない)。自殺を図った人は責めずに精神科へつなぐ。
- 治療は休養と抗うつ薬。病気であって怠けではないと伝え、励まさない。退職など大きな決定は、回復まで延ばす。
症状と診断
DSM-5-TRの名前はうつ病(以前の名前は大うつ病性障害)。抑うつ気分か興味・喜びの喪失のどちらかを含めて、下の症状が5つ以上、2週間以上ほぼ毎日続けば、うつ病と診断する。
| 気分・興味 | 気分が落ち込む。何をしても楽しくない(趣味や子どもとの遊びをやめる)。好きなことだけは楽しめる、ということはない |
|---|---|
| 意欲・思考 | 「何をするのも億劫」(意欲の低下)。「頭が回らない」「考えが浮かばない」(思考制止)。決められない、動きが遅い(精神運動制止) |
| 睡眠 | 不眠、とくに早朝覚醒(朝3〜4時に目が覚めて、もう眠れない)と中途覚醒 |
| 食欲 | 食欲低下・体重減少 |
| 自分を責める | 自責感(「家族に迷惑をかけている」「自分は会社のお荷物だ」) |
| 死 | 希死念慮・自殺念慮(「いっそ死んでしまいたい」) |
- 朝に最も悪く、夕方に少し軽くなる(日内変動)。
- 頭痛・倦怠感・めまい・吐き気など、体の症状で内科に来ることが多い。体に異常がなければ、気分の落ち込みを尋ねる。
- 昇進・栄転・望んだ転職など、うれしい変化のあとにも起こる。
微小妄想と、認知症との見分け
重いうつ病では、気分に合った微小妄想が出る。自分を実際より小さく、悪く考える妄想。
| 罪業妄想 | 「取り返しのつかない罪を犯した」「先祖供養を怠った罰だ」 |
|---|---|
| 貧困妄想 | 「お金がなくて薬代も払えない」(実際は困っていない) |
| 心気妄想 | 「重い病気にかかっていて、もう治らない」 |
- 高齢者のうつ病は妄想を伴いやすい(精神病性の特徴を伴ううつ病)。
- 被害妄想(被毒・追跡・注察)・誇大妄想・物盗られ妄想は、うつ病の妄想ではない。
高齢者の抑うつ:うつ病か認知症か
| うつ病(仮性認知症) | 認知症 | |
|---|---|---|
| 物忘れ | 自分から深刻に訴える | 自覚が乏しく、取り繕う |
| 記銘力 | 保たれる(答えに時間がかかる) | 落ちる |
| 経過 | 数週〜数か月。気分の症状が先に出る | 年の単位でゆっくり進む |
| ほかの所見 | 抑うつ気分・日内変動 | 見当識障害・遂行機能障害・物盗られ妄想・脳波の徐波化 |
- HDS-Rの点が低くても、うつ病のことがある。数か月で認知機能が落ちたら、うつ病・慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下症・薬(抗不安薬・睡眠薬)を考える。
起こりやすい場面
| 生活の変化 | 昇進・転勤・配置転換・職場の人間関係のつまずき。定年後に備え、在職中から近所付き合いや仲間をつくっておく |
|---|---|
| 脳の病気 | 脳血管障害(脳卒中)・Parkinson病はうつ状態を伴いやすい |
| 重い病気のあと | リハビリを休む、食事を拒んでふさぎこむ。励ましたり栄養療法を急いだりする前に、まず精神状態を評価する |
| 産後 | 産褥期はうつ病が起こりやすい。自己記入式のEPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)で拾い上げる。点が高ければ精神科の受診を勧め、本人の同意を得て市町村と連携する |
自殺の危険への対応
うつ病は自殺と強く結びつく。最も注意する症状は自殺念慮。
- ① 尋ねる「死んでしまいたいと思うことは?」と、はっきり聞く
- ② 確かめる計画・手段の準備・一人暮らしか
- ③ 受け止める責めず、つらさを聴く
- ④ つなぐ精神科の治療と、家族の見守りへ
- 自殺について尋ねても、自殺を誘発しない。話題を避けるのは誤り。
- 自殺を図った人を、責めたり諭したりしない。
- 自殺を図った人は、意識が戻ったら精神科の治療につなぐ。警察への通報は要らない。
- 遺書や練炭など手段を用意していれば、一人にしない。付き添って、その日のうちに精神科を受診させる。
- 家族に支えと見守りを頼む。本人が嫌がっても、家族への連絡を承諾してもらうよう説得する。
- 自殺しないと約束してもらうのも支援の一つ。ただし、それだけで安全とはしない。
治療と、本人への説明
| 説明 | 怠けではなく病気で、治療で回復する。自分を責めるのも症状と伝える。回復には数か月かかり、一進一退する |
|---|---|
| 休養 | 仕事から離れて休む |
| 薬 | 抗うつ薬。中等症以上は、SSRI・SNRI・ミルタザピンなどの新しい抗うつ薬から始める。睡眠薬・抗不安薬だけでは治らない。良くなっても、同じ量を半年〜1年ほど続ける |
| 精神療法 | 認知行動療法。通院しながら受けられ、再発予防にも役立つ |
| 重症 | 食事もとれない、妄想がある、自殺の危険が迫る。入院し、修正型電気けいれん療法も考える |
- 退職・転職など大きな決定は、回復するまで延ばす。
- 「頑張れ」と励まさない。家族にも、励まさずに見守る接し方を助言する。
- 寝酒はやめる。眠りが浅くなり、抑うつも悪くなる。アルコール使用症(アルコール依存症)には、うつ病が多く合併する。
- 退院後は自宅療養をはさみ、段階的に職場へ戻る。
- パニック症などが重なっても、抑うつが強い時期は外出訓練より休養が先。
職場のうつ病:産業医の対応
| すること | 希死念慮を尋ね、医療機関(精神科)の受診を勧める。仕事の内容や働き方を詳しく聴く |
|---|---|
| しないこと | 様子見。「みんな頑張っている」「流行が終わるまで辛抱」という励まし。診断の前に、いきなり休職させる |
| 情報の扱い | 病名・病状は、本人の同意なしに上司や会社へ伝えない。同意を得て上司と話し、仕事を調整する |
| 長時間労働 | 労働時間の短縮など、就業上の配慮を事業者に意見する(病名ではなく、必要な配慮を伝える) |
| 主治医から | 職場の出来事がきっかけなら、産業医にも相談するよう勧める。配置転換を決めるのは会社 |
似た病気との見分け
| 適応反応症(適応障害) | はっきりしたストレス因のあとに起こり、離れると良くなる。休日の趣味は楽しめる。うつ病の基準は満たさない |
|---|---|
| 双極症(双極性障害) | 躁病・軽躁病エピソードの既往がある。抗うつ薬だけで治療すると、躁転することがある |
| 統合失調症 | 幻聴・被害妄想。思考途絶・考想化声・妄想知覚・両価性、「考えを抜き取られる」「考えが伝わる」は、うつ病では出ない。うつ病の思考の障害は思考制止 |
| 体の病気による抑うつ | 甲状腺機能低下症・Cushing症候群。抑うつを見たら甲状腺機能を調べる |
| 薬による抑うつ | インターフェロン・副腎皮質ステロイド・レセルピン |
| マタニティブルーズ | 産後3〜10日に始まり、2週間ほどで自然に治る。多くは産後のうつ病に移らない |
| 死別の悲嘆 | 多くは時間とともに軽くなる。長引けば、うつ病との見分けが要る(遷延性悲嘆症も考える) |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
うつ病の診断に欠かせない2つの症状は?(2つ)★★★
抑うつ気分・興味や喜びの喪失
どちらかを含めて5つ以上の症状が、2週間以上ほぼ毎日続く。趣味や子どもとの遊びをやめた、という話が手がかり。
- Q2
「やらないといけないのに頭が回らない」「考えが浮かばない」。うつ病のこの思考の障害は?★★★必修
思考制止
考えの進みが遅くなる。考えが急に途切れる思考途絶、考えが声になって聞こえる考想化声は統合失調症。
- Q3
「何をするのも億劫で仕方ない」。この訴えから最も考える状態は?★★★必修
抑うつ状態(意欲の低下)
「すぐかっとなる」は易怒性、「落ち着かない」は不安・焦燥やアカシジア、「誰かに見られている」は注察妄想。
- Q4
うつ病に特徴的な不眠は?★★★必修
早朝覚醒(中途覚醒も多い)
朝3〜4時に目が覚め、その後眠れない。試験の前夜だけ眠れない・事故の夢をくり返す・息苦しくて目が覚める、は別の原因。
- Q5
うつ病で、気分が最も悪い時間帯は?★★★必修
朝(午前中)
夕方にかけて少し軽くなる(日内変動)。夕方から夜に悪くなるのは、せん妄。
- Q6
うつ病で、食欲と体重はふつうどうなる?★★★必修
食欲が落ち、体重が減る
診断基準にある体の症状の一つ。体重が減る体の病気(甲状腺機能亢進症・がんなど)も調べて除く。
- Q7
頭痛・倦怠感・不眠で受診し、体の検査に異常がない。診断に最も役立つ質問は?★★★必修
「気持ちが落ち込むことはありますか」
うつ病は体の症状で内科に来ることが多い。体の病気を除いたら、抑うつ気分と興味の喪失を尋ねる。
- Q8
うつ病で、抑うつ気分から生まれる妄想は?(3つ)★★★必修
罪業妄想・貧困妄想・心気妄想(微小妄想)
「罪を犯した」「お金がない」「重い病気だ」と自分を小さく考える。被毒・追跡・注察の被害妄想は統合失調症、誇大妄想は躁状態、物盗られ妄想はAlzheimer型認知症。
- Q9
お金に困っていないのに「税金が払えない」「先祖供養を怠ったせいだ」と訴える68歳。HDS-Rと甲状腺機能は正常。考える病気は?★★★
精神病性の特徴を伴ううつ病
高齢者のうつ病は妄想を伴いやすい。認知機能・神経所見・血液検査が正常なので、認知症や体の病気による精神症状ではない。
- Q10
高齢者の抑うつで、うつ病と認知症を見分けるのに役立つ所見は?★★★必修
記銘力が保たれ、物忘れを自分から深刻に悩む
うつ病による認知機能の低下(仮性認知症)。認知症は病識に乏しく取り繕い、見当識障害・物盗られ妄想・脳波の徐波化が目立つ。
- Q11
うつ状態を伴いやすい脳の病気は?(2つ)★★★必修
脳血管障害・Parkinson病
脳卒中のリハビリ中に頭痛・不眠を訴えて休むようになったら、脳卒中後のうつ病を考える。
- Q12
うつ病の患者で、最も注意して確かめる症状は?★★★必修
自殺念慮(希死念慮)
うつ病は自殺と強く結びつく。手首を切って来た人にも、処置のあとまず抑うつと死にたい気持ちを尋ねる。
- Q13
自殺を図った人が、意識を取り戻した。勧めるのは?★★★必修
精神科での治療
再企図を防ぐには、うつ病の治療が要る。カウンセリングだけ、そのまま帰宅させるだけでは足りない。
- Q14
うつ病の治療の基本は?(2つ)★★★必修
休養・抗うつ薬
中等症以上では、SSRI・SNRI・ミルタザピンなどの新しい抗うつ薬から始める。睡眠薬や抗不安薬だけでは治らない。
- Q15
休職を望まない、くり返すうつ病。通院しながら受けられ、再発予防にも役立つ精神療法は?★★★
認知行動療法
考え方と行動のくせを見直す。森田療法は主に不安症、遊戯療法は子ども向けで、精神分析療法はうつ病の標準の治療ではない。
- Q16
抑うつ・不眠・意欲の低下が2週間以上続く社員から相談された。産業医がまずすることは?★★★必修
医療機関(精神科)の受診を勧める
様子見・励まし・診断の前にいきなり休職させる、はどれも誤り。
- Q17
抑うつを見たら調べておく、ホルモンの病気は?(2つ)★★★
甲状腺機能低下症・Cushing症候群
体の病気による抑うつは、もとの病気を治すと良くなる。抗うつ薬が効かず、ぼんやりして脳波の基礎波が遅ければ、甲状腺を疑う。
- Q18
定年後の抑うつやひきこもりを防ぐため、在職中から心がけることは?★★★必修
近所付き合い・仲間づくり
仕事だけの人間関係は、定年で一度に失われる。地域に居場所をつくっておく。
- Q19
職場の出来事がきっかけでうつ病になった会社員。治療と並んで、主治医が勧めることは?★★★
産業医への相談
仕事の量や配置の調整は、産業医を通して会社が決める。転職や労災の手続きを急がせない。
- Q20
抑うつを起こす薬は?(3つ)★★★
インターフェロン・副腎皮質ステロイド・レセルピン
レセルピンが起こすのは躁状態ではなく抑うつ。ステロイドは躁状態も起こし、抗Parkinson病薬はせん妄を起こしやすい。
選択肢の○×
自殺
- 2はっきり尋ねても危険は高まらない。計画や手段(遺書・練炭)の準備まで確かめる。
- 3責めたり説教したりすると、孤立感と自責感が強まる。何がつらいのかを聴き、受け止める。
- 4
自殺企図で運ばれた患者のことは、警察に通報する。111H23
自殺企図は通報の対象ではない(守秘義務)。家族の支えを頼み、精神科につなぐ。 - 5手段を用意した人を一人にしない。会社の人が付き添い、その日のうちに精神科を受診させる。
自殺
治療
職場
- 14
長時間労働で抑うつのある社員について、産業医は労働時間を短くする必要を事業者に伝える。106G55
病名ではなく、必要な配慮(就業上の措置)を伝える。休職させるかどうかも、産業医が一人で決めることではない。