栄養療法
栄養評価と経路の選び方から、胃瘻・静脈栄養・再栄養まで
25問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 腸が使えるなら経腸栄養、腸が使えないときに静脈栄養。経管栄養は続く期間の見込みで、4週間ほどまでなら経鼻胃管、それより長ければ胃瘻。胃瘻があっても口から食べてよい。
- ブドウ糖・アミノ酸は1 gで4 kcal、脂肪は9 kcal。濃い糖液は中心静脈から。中心静脈栄養ではカテーテル関連血流感染に気をつけ、ビタミンB1を必ず加える。
- 長く食べていない人に急に栄養を入れると、リフィーディング症候群(低リン血症・心不全)。少ない量から始め、ビタミンB1を補う。
栄養状態の評価と必要なエネルギー
まず、低栄養かどうかを確かめる。体重の変化と食事の量を聞き、体の計測と血液検査を合わせて判断する。
| 体重 | BMI(18.5未満でやせ)と、ふだんの体重からどれだけ減ったか。腹囲も使う |
|---|---|
| 体の計測 | 皮下脂肪厚は上腕の伸側(上腕三頭筋部)で測る(脂肪の量)。筋肉の量は上腕周囲長・下腿周囲長で見る |
| 血液 | 血清アルブミン(半減期 約3週)・トランスフェリン(約1週)・総コレステロールが、低栄養で下がる |
| 役に立たない | 血小板数(栄養状態では決まらない) |
- アルブミンは炎症・肝硬変・ネフローゼでも下がる。値だけで低栄養と決めず、体重と食事量も合わせて見る(→最後の節)。
- 低アルブミン血症は、アルブミン製剤では治さない(入れても栄養にならない)。栄養そのものを入れて治す。
基礎代謝量:安静にして、生きるのに最低限使うエネルギー。性別・年齢・筋肉量・体表面積で決まる(男性・筋肉が多い・体が大きいほど多い。体重あたりでは幼児期が最も多い)。体の水分量は直接は関係しない。1日に要るエネルギーは、基礎代謝量に身体活動レベルをかけて見積もる(→日本人の食事摂取基準)。
- COPDでは呼吸に余分なエネルギーを使い、安静時のエネルギー消費量が予測より多い。
- 食品の目安:鶏卵1個(約50 g)は約80 kcal。ご飯茶碗1杯(約160 g)は約250 kcal、食パン6枚切り1枚は約150 kcal。
経腸か静脈か:経路の選び方
腸が使えるなら、静脈ではなく腸から入れる(経腸栄養)。腸の粘膜と免疫が保たれ、感染も少ない。腸が通らない・使えないとき(腸閉塞・幽門狭窄など)に静脈栄養を選ぶ。経管栄養は、続く期間の見込みで経鼻か胃瘻かを決める。
- ① 口から食べられる食事の形を工夫・栄養補助食品
- ② 腸が使える経腸栄養(経管栄養)
- ③ 腸が使えない静脈栄養
| 経鼻経管栄養 | 4週間ほどまでの短い期間。手術なしですぐ始められる。放射線治療中の口内炎で食べられない、嚥下造影で誤嚥がわかった直後など |
|---|---|
| 胃瘻 | 4週間を超えて続く見込み(ALSの嚥下障害、食道癌の狭窄で6か月以上の予後など)。経鼻胃管より不快感が少ない |
| 末梢静脈栄養 | 2週間ほどまでの短い期間。濃い糖液は入れられず、十分な熱量にならない |
| 中心静脈栄養 | 腸が使えず、長い期間か十分な熱量が要るとき(幽門狭窄の胃癌の術前、腹膜播種による腸閉塞など) |
- 手術のあとも、早く口・腸から栄養を始める。術後1週間以内でも、経腸栄養は禁忌ではない。肝切除のあとは、口からの栄養が残った肝臓の再生を助ける。
- 消化管が通っている手術では、術前の長い絶食や中心静脈栄養はいらない。
- 嚥下障害では、流動食はかえってむせやすい。とろみをつけた食事にする(→嚥下障害)。
- 病院食で固形の成分が最も少ないのは重湯(粥から米粒を除いた汁)。三分粥・五分粥・七分粥・全粥の順に米粒が増える。
- 予後の短い終末期は、胃瘻や高カロリー輸液で栄養を増やすより、口から食べたい気持ちと苦痛の少なさを大事にする。
経管栄養と胃瘻の管理
胃瘻は、内視鏡で胃の中を見ながら、腹壁から胃へ管を通して造る(経皮内視鏡的胃瘻造設術=PEG)。
| 始め方 | 少量から始め、少しずつ増やす。栄養剤とは別に水も入れる |
|---|---|
| 体位 | 注入中と注入のあとしばらくは、上体を30度以上起こす |
| 誤嚥 | 胃瘻でも誤嚥性肺炎は起こる(胃からの逆流、唾液の誤嚥)。口から食べていなくても口腔ケアを行う |
| 嚥下 | 嚥下機能の評価と訓練を続ける。口から食べることに戻るのが目標 |
| 経鼻胃管 | 栄養を入れる前に、X線で先端が胃の中にあるのを確かめる(→経鼻胃管) |
胃瘻の毎日の管理
| 食事 | 胃瘻があっても、口から食べてよい(嚥下の力に合わせて) |
|---|---|
| 入浴 | 瘻孔が落ち着けば、覆わずにそのまま入浴できる |
| 瘻孔の手入れ | 毎日の消毒はいらない。微温湯と石けんで洗う |
| 注入 | 無菌操作でなく、清潔な操作でよい。栄養剤は開けたら時間をおかずに使い切る |
| バルーン型 | バルーンには蒸留水を入れる。1〜2か月ごとに交換。強く引いて固定しない(胃壁・腹壁が圧迫されて傷む) |
画像で出たら 内視鏡で胃の中から腹壁へ向けて管を通している写真なら、胃瘻の造設。ボタン型の胃瘻は、腹壁の上に短い差し込み口だけが見える。
静脈栄養:熱量の計算と合併症
ブドウ糖とアミノ酸は1 gで4 kcal、脂肪は1 gで9 kcal。濃度(%)は100 mLあたりのg数なので、量(mL)×濃度でg数を出してから熱量にする。5%ブドウ糖液500 mLは糖25 gで約100 kcal。糖尿病の人では、ブドウ糖の量に比例してインスリンを混ぜる。
| 末梢静脈栄養 | 中心静脈栄養 | |
|---|---|---|
| 入れる液 | 浸透圧の低い液(ブドウ糖は10%ほどまで)。脂肪乳剤 | 20%などの濃い糖液(末梢では静脈炎を起こす) |
| 入れる所 | 手・前腕の静脈 | 内頸・鎖骨下・大腿静脈か、上腕から入れるPICC。大伏在静脈は使わない |
| 期間 | 短い(2週間ほどまで) | 長い・熱量が多く要る |
中心静脈栄養の合併症
| 入れるとき | 鎖骨下静脈の穿刺のあとの気胸(急な呼吸困難・患側の呼吸音の低下) |
|---|---|
| 感染 | カテーテル関連血流感染。経腸栄養より感染が多い。ほかに原因のない発熱・悪寒戦慄なら、カテーテルを抜く(→カテーテル関連血流感染症)。カンジダでは眼内炎(飛蚊症) |
| 代謝 | 高血糖。ビタミンB1が足りないと乳酸アシドーシス・Wernicke脳症(B1を必ず加える)。微量元素も補う。脂肪乳剤を使わないと、必須脂肪酸が欠乏する |
| 腸と肝臓 | 腸を使わないと粘膜がやせ、腸管の免疫が落ちる(腸内細菌が体内へ入る)。肝内胆汁うっ滞・脂肪肝 |
- 輸液中も体を動かしてよい(安静にしなくてよい)。
リフィーディング症候群
長く食べられなかった人に、急に栄養(とくに糖)を入れると起こる。インスリンが出て、糖と一緒にリン・K・Mgが細胞の中に入り、血液中で下がる。ビタミンB1も一気に使われる。栄養を始めて数日のうちに、心不全・不整脈・呼吸不全・意識障害・全身の浮腫・肝障害が出る。
| 起こしやすい人 | 神経性やせ症・大量飲酒で食べていない人・嘔吐が続いて食べられない高齢者。短い期間に体重が大きく減った人 |
|---|---|
| 始め方 | 少ない量から始め、数日かけて増やす。まず末梢からの低い濃度の輸液。はじめから高カロリー輸液にしない |
| 補うもの | ビタミンB1(糖を入れる前か同時に)・リン・K・Mg・微量元素 |
| 見るもの | 血清のリン・K・Mgを毎日測る。心電図・体重・浮腫 |
- 神経性やせ症でFT3だけが低い(TSHは正常)のは、低栄養に体が合わせた状態(低T3症候群)。甲状腺ホルモンは補わない。
栄養サポートチーム(NST)
医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などの多職種が、診療科を越えて、入院患者の栄養を支えるチーム。回診で患者を直接診て、栄養の評価と方法を主治医に提案する。
| 対象 | 主に入院患者(外来ではない)。中心静脈栄養の患者も、終末期の癌患者も |
|---|---|
| 主治医と | 提案し、主治医の了承を得て行う(経路を変えるときも) |
| ほかのチームと | 感染対策チーム・褥瘡対策チーム・緩和ケアチームと連携する |
| 入る時期 | 食事の量が減った時点で。体重が大きく減るのを待たない |
| 提案の例 | 口腔ケア・食事の形の見直し・痛みの対策・経路の変更 |
低蛋白血症の見分け
血清アルブミン(総蛋白)が低いとき:入る量が足りないのか、作れないのか、漏れて失われるのかで分ける。
| 入らない | 低栄養。食事の量が減り、体重も減る。栄養を入れれば戻る |
|---|---|
| 作れない | 肝硬変(肝臓での合成が落ちる) |
| 尿に漏れる | ネフローゼ症候群(高度の蛋白尿) |
| 腸に漏れる | 蛋白漏出性胃腸症:Ménétrier病(胃のひだが巨大になる)・Crohn病・偽膜性腸炎 |
| 炎症 | 感染・手術のあと・がんでCRPが高い。炎症が治まらないと戻らない |
| がん悪液質 | 腫瘍による代謝の異常で、栄養を入れても筋肉と体重が戻らない(→がん悪液質) |
- 過敏性腸症候群・乳糖不耐症では、低蛋白血症にならない(腸に蛋白が漏れる病変がない)。
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
低栄養の指標になる血清蛋白を、半減期の長い順に挙げると?(2つ)★★★
アルブミン(約3週)・トランスフェリン(約1週)
数日の変化は、さらに半減期の短いトランスサイレチン(プレアルブミン)で見る。アルブミンは炎症や肝硬変でも下がるので、体重と食事量も合わせて判断する。
- Q2
成人の栄養評価で、皮下脂肪厚を測る部位は?★★★必修
上腕の伸側(上腕三頭筋部)
体の脂肪の量の目安になる。筋肉の量は、上腕周囲長や下腿周囲長で見る。
- Q3
基礎代謝量を直接決める因子は?(4つ)★★★必修
性別・年齢・筋肉量・体表面積
筋肉は安静にしていてもエネルギーを使う。水そのものは熱を生まないので、体の水分量は直接は関係しない。
- Q4
口から食べられないが、腸は使える。まず選ぶ栄養法は?★★★必修
経腸栄養(経管栄養)
腸の粘膜と免疫が保たれ、感染も少ない。静脈栄養を選ぶのは、腸が通らない・使えないとき。
- Q5
腸は使える。経管栄養が4週間ほどまでで済みそうなときの経路は?★★★
経鼻経管栄養(経鼻胃管)
手術なしですぐ始められる。放射線治療中の口内炎で食べられない、嚥下造影で誤嚥がわかった直後など、当面の栄養に使う。
- Q6
腸は使える。経管栄養が4週間を超えて続く見込みなら、造るのは?★★★必修
胃瘻(経皮内視鏡的胃瘻造設術=PEG)
鼻やのどに管がなく、経鼻胃管より不快感と自己抜去が少ない。食道癌の狭窄で6か月以上の予後が見込める、ALSで嚥下が落ちてきた、などで造る。
- Q7
1 gあたりのエネルギーは、ブドウ糖・アミノ酸・脂肪でそれぞれ何kcal?★★★
4・4・9 kcal
5%ブドウ糖液500 mLは糖25 gで約100 kcalにしかならない。輸液で1日の必要量を入れるには、濃い糖液と脂肪乳剤が要る。
- Q8
20%ブドウ糖・3%アミノ酸を含む輸液1,500 mLと、20%脂肪乳剤250 mL(450 kcal)。1日の総エネルギーは?★★★
1,830 kcal
濃度(%)は100 mLあたりのg数。糖300 g×4=1,200、アミノ酸45 g×4=180に、脂肪乳剤の450を足す。
- Q9
末梢静脈ではなく、中心静脈(PICCを含む)から入れる輸液は?★★★必修
濃いブドウ糖液(20%など)
浸透圧が血漿の数倍になり、末梢の静脈では静脈炎を起こす。生理食塩液・乳酸リンゲル液・維持液は末梢から入れられる。
- Q10
消化管の手術のあと、絶食と中心静脈栄養が長く続いた。起こりやすいものは?(2つ)★★★
腸管の免疫の低下・肝内胆汁うっ滞
腸を使わないと粘膜がやせ、腸内細菌が体内に入りやすくなる(bacterial translocation)。胆汁うっ滞は、胆管の拡張のない直接ビリルビン優位の黄疸で見つかる。
- Q11
長く食べていなかった人に急に栄養を入れたら、数日で低リン血症・心不全・意識障害が出た。この病態は?★★★
リフィーディング症候群
インスリンが出て、リン・K・Mgが糖と一緒に細胞の中に入る。少ない量から始め、数日かけて増やせば防げる。
- Q12
長く食べられなかった大量飲酒者に、5%ブドウ糖の輸液で静脈栄養を始める。輸液に加えるものは?(2つ)★★★
ビタミンB1・微量元素
糖を入れるとB1が一気に使われ、足りないとWernicke脳症や乳酸アシドーシスになる。長い低栄養では、亜鉛などの微量元素も足りない。
- Q13
消化管から蛋白が漏れて、低蛋白血症を起こす病気は?(3つ)★★★
Ménétrier病・Crohn病・偽膜性腸炎
まとめて蛋白漏出性胃腸症という。肝硬変は肝臓で作れずに、ネフローゼ症候群は尿に漏れて下がる。
- Q14
鶏卵1個(約50 g)のエネルギーは、およそ何kcal?★★★
約80 kcal
ご飯茶碗1杯(約160 g)は約250 kcal、食パン6枚切り1枚は約150 kcal、ビール中ジョッキ1杯は約200 kcal。
- Q15
病院食のうち、固形の成分が最も少ないものは?★★★
重湯
粥から米粒を除いた汁。三分粥→五分粥→七分粥→全粥の順に米粒が多くなる。
- Q16
体重3.2 kgで必要量100 kcal/kg/日の新生児。人工乳(0.7 kcal/mL)を1日160 mL飲む。残りをブドウ糖15%・アミノ酸1%の静脈栄養で補う量は?★★★
325 mL
必要な320 kcalから人工乳の112 kcalを引くと208 kcal。静脈栄養は1 mLあたり(0.15+0.01)×4=0.64 kcalなので、208÷0.64=325。
- Q17
ブドウ糖75 gにインスリン5単位を混ぜて、血糖が安定した。ブドウ糖を180 gに増やすとき、混ぜるインスリンは?★★★
12単位
インスリンはブドウ糖の量に比例させる(15 gに1単位)。濃度×量で糖のg数を出してから比べる。
選択肢の○×
評価
- 1
血小板数は、成人の栄養状態の評価に役立つ。108E10
血小板は骨髄・脾臓・消費で決まり、栄養を映さない。体重・BMI・腹囲・アルブミン・総コレステロールは使う。
経路
胃瘻
- 3胃瘻は足りない栄養を補う方法。嚥下の力に合わせて口から食べてよく、楽しみとしての経口摂取も続けられる。
- 4仰臥位では胃から逆流して誤嚥する。注入中と注入のあとしばらくは、上体を30度以上起こしておく。
- 5
経管栄養は、少量から始めて少しずつ増やす。109B25
急に増やすと下痢や腹部膨満を起こし、長く食べていなかった人ではリフィーディング症候群も起こす。栄養剤とは別に水分も入れる。 - 6食べなくても口の中は汚れ、その唾液を誤嚥して肺炎になる。口の乾燥と汚れを除くと、食べやすくもなる。
再栄養