ウイルス性肝炎
A〜E型の感染経路と抗体から、B型の再活性化・治療薬まで
21問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 口から入るA型・E型は急性肝炎だけで治り、慢性化するのはB型・C型。加熱が不十分な猪・鹿・豚の肉を食べたあとの肝炎はE型。
- 急性肝炎の重症度はプロトロンビン時間でみる。B型は抗癌薬・免疫抑制薬で再活性化するので、始める前にHBs抗原、陰性ならHBc抗体・HBs抗体を測る。
- 治療は、B型が核酸アナログ、C型が直接作用型抗ウイルス薬(DAA)。
肝炎ウイルスの種類と感染経路
急性肝炎を起こす肝炎ウイルスはA〜E型。口から入るA型・E型は急性肝炎だけで治る。血液・体液で入るB型・C型は慢性肝炎になり、肝硬変・肝細胞癌に進むことがある。
| 感染経路 | 経過と診断 | |
|---|---|---|
| A型 | 生の貝(カキ)・汚染された水や食べ物。男性間の性交渉でも広がる | 慢性化しない。IgM型HA抗体 |
| B型 | 母子感染・性交渉・針刺しなどの血液 | 乳幼児期の感染はキャリアになりやすい。急性はHBs抗原・IgM型HBc抗体 |
| C型 | 昔の輸血・血液製剤(フィブリノゲン製剤など)・刺青・注射器の使い回し | 慢性化しやすい。HCV抗体で調べ、HCV-RNAで今の感染を確かめる |
| D型 | B型と同じ | HBVがいる時だけ増える。日本ではまれ |
| E型 | 加熱が不十分な豚・猪・鹿の肉・レバー | ふつう慢性化しない。IgA型HEV抗体 |
- 潜伏期はA型が2〜6週、E型が平均6週。食中毒の細菌(数時間〜数日)よりずっと長い。
- E型は妊婦で劇症化しやすい。十分に加熱すれば不活化する。
- A型・B型にはワクチンがある。C型にはワクチンも免疫グロブリンもない。
- B型の母子感染:HBs抗原陽性の母から生まれた児に、生後すぐ抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)とHBワクチン(→母子感染)。
- B型の針刺し:HBs抗原陽性の血液で、HBs抗体がない人はHBIGとHBワクチン。ワクチンで抗体がついていれば処置は要らない(→針刺し事故)。
急性肝炎の経過と重症度
倦怠感・食欲低下・悪心のあと、褐色尿・黄疸が出る。AST・ALTが数百〜数千に上がる。多くは安静と対症療法で自然に治る。
| 重症度 | プロトロンビン時間(PT)でみる。凝固因子は肝でつくられ、半減期が短いので、肝の働きが落ちるとすぐ延びる |
|---|---|
| 急性肝不全 | 発症から8週以内にPT 40%以下(INR 1.5以上)。昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症(アンモニア↑)を伴えば昏睡型で、肝炎によるものを劇症肝炎という |
| 劇症化しやすい | B型(とくに再活性化)・妊婦のE型 |
| 劇症肝炎の治療 | 集中治療。血漿交換・血液濾過透析で肝の働きを補いながら、肝移植を考える |
- PTが保たれていれば、安静で経過をみる。急性肝炎にインターフェロンや免疫抑制薬は使わない。
画像で出たら 急性肝炎の腹部超音波では、肝が腫れ、胆嚢がしぼんで壁が厚く見える。胆管は拡張しない(閉塞性黄疸との違い)。
B型肝炎:マーカーと治療
成人の初感染は多くが一過性で治るが、母子感染など乳幼児期の感染はキャリア(持続感染)になりやすい。治ったように見えても、肝細胞の核にHBVのDNAが残る。
| HBs抗原 | 今、感染している |
|---|---|
| HBs抗体 | 過去の感染、またはワクチンでできた抗体 |
| HBc抗体 | 感染したことがある(今の感染でも、治ったあとでも陽性)。IgM型が高ければ急性肝炎 |
| HBe抗原・HBe抗体 | 抗原はウイルスがよく増えている目安、抗体は増え方が落ち着いた目安。HBs抗原陽性の人の病期をみるもの。急性肝炎の診断や、既往感染を探すのには使わない |
| HBV-DNA | ウイルスの量。治療を決め、再活性化を早くとらえる |
| HBc抗原 | 肝細胞の中にあり、血液では測らない |
- B型慢性肝炎・肝硬変でHBV-DNAが多ければ核酸アナログ(エンテカビル・テノホビル)。逆転写を抑え、HBV-DNAを下げる。ウイルスは肝に残るので、長く飲み続ける(ラミブジンも核酸アナログだが、耐性が出やすい)。若い慢性肝炎では、ペグインターフェロンも選べる。
- 肝硬変でも、HBV-DNAが陽性なら核酸アナログ。
- 副腎皮質ステロイドは、かえってHBVを増やす。肝庇護薬(グリチルリチン・ウルソデオキシコール酸)はALTを下げるが、ウイルスは減らない。
免疫抑制・化学療法による再活性化
抗癌薬・免疫抑制薬(ステロイド・抗TNF-α抗体製剤など)で、B型肝炎が再活性化する。とくにリツキシマブを含むリンパ腫の治療。HBs抗原が陰性の既往感染(HBc抗体・HBs抗体が陽性)からも起こる(de novo B型肝炎)。再活性化した肝炎は劇症化しやすい。
- ① HBs抗原陽性なら、HBV-DNAを測り核酸アナログ
- ② 陰性ならHBc抗体・HBs抗体どちらかが陽性なら既往感染
- ③ HBV-DNA定量検出されれば、核酸アナログを予防に飲む
- ④ 検出されなければ治療中・治療後も定期的にHBV-DNAを測る
- HBs抗原が陰性でも、HBc抗体とHBs抗体を測る。
- HBc抗体・HBs抗体のどちらかが陽性なら、HBV-DNAを測る。
- 使用中に肝炎が起きたら、以前は陰性でもHBs抗原を測り直す。
- 再活性化で問題になるのはB型。A型・E型は体に残らず、再活性化しない。
C型肝炎と慢性肝炎の見方
C型は慢性化しやすく、肝硬変・肝細胞癌の大きな原因。症状がないまま進むので、肝炎ウイルス検診で見つかることが多い。
| HCV抗体 | 陽性なら、今の感染か過去の感染(治ったあとも陽性が続く)。まずこれで調べる |
|---|---|
| HCV-RNA | 陽性なら、今感染している。治療の対象 |
| 治療 | 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の内服を8〜12週。遺伝子型によらず、ほとんどの人でウイルスが消える。高齢者・肝硬変でも使える |
| 治ったあと | 肝細胞癌の危険は残る。腹部超音波と腫瘍マーカーで定期的に調べる |
- 以前のインターフェロンは副作用が多く、遺伝子型2型で効きやすかった。いまは第一選択ではない。
- 肝臓の外の病気:B型は膜性腎症、C型はクリオグロブリン血症と膜性増殖性糸球体腎炎(→糸球体腎炎)。
慢性肝炎の見方(B型・C型に共通)
| 炎症の強さ(活動性) | ALT |
|---|---|
| 線維化の進み具合 | 血小板数。減るほど進んでいる。10万前後まで減れば肝硬変を疑う |
| 肝の合成能 | アルブミン・PT・コレステロール。肝硬変で落ちる(→肝硬変) |
似た病気との見分け
急性の肝障害で、肝炎ウイルスが陰性のとき
| 薬物性肝障害 | 健康食品・サプリメント・新しく始めた薬。やめると良くなる(→薬物性肝障害) |
|---|---|
| 自己免疫性肝炎 | 中年女性。抗核抗体が陽性で、IgGが高い。ステロイドで治療する |
| 伝染性単核症 | 若い人の発熱・咽頭炎・頸部リンパ節の腫れ・異型リンパ球。VCA IgM抗体(EBウイルスの初感染) |
| サイトメガロウイルス感染症 | CMV IgM抗体で初感染をみる。免疫が落ちた人で重くなる |
黄疸や、生ものを食べたあとのとき
| 閉塞性黄疸 | 総胆管結石・胆管癌など。胆管が拡張し、ALP・γ-GTの上昇が目立つ。内視鏡的胆道ドレナージはこちらの治療 |
|---|---|
| 細菌性食中毒 | カンピロバクター(鶏肉)・サルモネラ(鶏卵)・エルシニア(豚肉)。数時間〜数日で、腹痛・下痢の腸炎を起こす。肝炎ではない |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
経口感染が主な肝炎ウイルスは?(2つ)★★★必修
A型・E型
汚染された水・食べ物から入り、急性肝炎だけで慢性化しない。B型・C型は血液・体液で感染する。
- Q2
慢性肝炎の原因になる肝炎ウイルスは?(2つ)★★★
B型・C型
長い年月をかけて、肝硬変・肝細胞癌に進む。A型・E型はふつう慢性化しない。
- Q3
加熱が不十分な猪・鹿・豚の肉やレバーを食べて、数週後に急性肝炎。原因のウイルスは?★★★必修
E型肝炎ウイルス
潜伏期は平均6週ほど。A型は生の貝(カキ)や汚染された水から。食中毒の細菌は、数時間〜数日で腸炎を起こす。
- Q4
急性A型肝炎の診断に測る抗体は?★★★
IgM型HA抗体
IgG型HA抗体は、過去の感染やワクチンでも陽性になる。E型の診断はIgA型HEV抗体。
- Q5
急性肝炎で、重症になるか(劇症化)を判断する血液検査は?★★★必修
プロトロンビン時間(PT)
凝固因子は肝でつくられ、半減期が短いので、肝の働きが落ちるとすぐ延びる。AST・ALTの高さでは決めない。
- Q6
肝炎でPT-INRが1.5以上に延び、昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を伴う。何という?★★★
劇症肝炎(急性肝不全の昏睡型)
アンモニアが上がり、意識が落ちる。血漿交換などで肝の働きを補いながら、肝移植を考える。
- Q7
急性E型肝炎で、PTは保たれ、意識も清明。対応は?★★★必修
安静(対症療法で経過をみる)
急性のウイルス肝炎は、多くが自然に治る。血漿交換はPTが延びた急性肝不全で考えるもので、インターフェロンも使わない。
- Q8
急性B型肝炎の診断に測るものは?(2つ)★★★
HBs抗原・IgM型HBc抗体
IgM型HBc抗体は、初感染の急性期に高くなる。HBe抗体は増え方が落ち着いた目安で、急性肝炎の診断には使わない。
- Q9
B型慢性肝炎・肝硬変で、HBVの増殖を抑える薬は?★★★
核酸アナログ(エンテカビル・テノホビルなど)
HBVの逆転写を抑え、HBV-DNAを下げる。ウイルスは肝に残るので、長く飲み続ける。ラミブジンは耐性が出やすく、いまは最初には使わない。
- Q10
抗癌薬・免疫抑制薬で再活性化する肝炎ウイルスは?★★★
B型
治ったように見えても、肝細胞の核にHBVのDNAが残る。使用中に肝炎が起きたら、以前は陰性でもHBs抗原を測り直す(de novo B型肝炎)。
- Q11
HBs抗原が陰性の人。リツキシマブや免疫抑制薬を始める前に、追加で測るものは?(2つ)★★★
HBc抗体・HBs抗体
どちらかが陽性なら既往感染で、HBVが肝に残っている。HBe抗原・HBe抗体はHBs抗原陽性の人で増え方をみるもので、ここでは使わない。
- Q12
HBs抗原陰性・HBc抗体陽性の人に化学療法を始める。追加で測るものは?★★★
HBV-DNA定量
再活性化を最も早くとらえる。検出されれば核酸アナログを予防に飲み、検出されなければ治療中も定期的に測る。
- Q13
HCV抗体が陽性。今も感染しているかを確かめる検査は?★★★
HCV-RNA
HCV抗体は、治ったあとも陽性が続く。HCV-RNAが陽性なら治療の対象。
- Q14
C型慢性肝炎の第一選択薬は?★★★
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)
飲み薬を8〜12週。遺伝子型によらず、ほとんどの人でウイルスが消える。以前のインターフェロンは副作用が多く、遺伝子型2型で効きやすかった。
- Q15
慢性肝炎で、炎症の強さ(活動性)の指標になる血液検査は?★★★必修
ALT
線維化の進み具合の目安は血小板数で、減るほど進んでいる。アルブミン・PTは肝の合成能をみる。
- Q16
A〜C型の検査が陰性の急性肝障害。生肉を食べたかのほかに、確かめることは?★★★
健康食品・薬の服用(薬物性肝障害)
サプリメントや新しく始めた薬が原因のことがある。生肉はE型肝炎の手がかり。
選択肢の○×
再活性化
- 1
化学療法で再活性化したB型肝炎は、ふつうの急性B型肝炎より軽く済むことが多い。116D49117C61
劇症化しやすく、命にかかわる。だから治療の前に調べて、予防する。