卵巣腫瘍
奇形腫と茎捻転から、卵巣癌の見つけ方・手術・化学療法まで
26問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 若い女性に多い良性腫瘍は成熟嚢胞性奇形腫(毛髪・歯・脂肪を含む)。MRIでT1の高信号が脂肪抑制で下がる。突然の下腹部痛と、圧痛のある付属器腫瘤は茎捻転で、すぐ手術し卵巣を残す。
- 卵巣癌は症状が出にくく、腹部膨満・腹水で進んでから見つかる。CA125が上がり、嚢胞の中の充実部分で悪性を疑う。チョコレート嚢胞からは明細胞癌。治療はまず手術、そして化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)。
- 10〜20代の充実性腫瘍は悪性胚細胞腫瘍を考え、AFPが高ければ卵黄嚢腫瘍。エストロゲンを出す顆粒膜細胞腫は閉経後の不正出血で来る。胃癌・大腸癌の卵巣転移(Krukenberg腫瘍)もある。
分類:もとになる細胞で4つに分ける
卵巣腫瘍は、どの細胞から生じたかで4つの群に分ける。最も多いのは上皮性腫瘍。漿液性・粘液性には、良性(嚢胞腺腫)・境界悪性・悪性(癌)がある。
| 上皮性腫瘍(表層上皮性・間質性腫瘍) | 漿液性・粘液性・類内膜・明細胞 |
|---|---|
| 胚細胞腫瘍 | 成熟嚢胞性奇形腫(良性)はこの群。悪性の卵黄嚢腫瘍・未分化胚細胞腫・未熟奇形腫は10〜20代に多い |
| 性索間質性腫瘍 | 顆粒膜細胞腫・莢膜細胞腫・線維腫・Sertoli-Leydig細胞腫。ホルモンを出すものがある |
| 転移性腫瘍 | 胃癌・大腸癌からが多い(Krukenberg腫瘍) |
- 見分けの手がかりは、年齢・嚢胞か充実性か・腫瘍マーカー・ホルモンの症状。
良性:成熟嚢胞性奇形腫と機能性嚢胞
成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)は、若い女性に多い良性の胚細胞腫瘍。3つの胚葉の組織からなり、嚢胞の中に毛髪・皮脂・歯(石灰化)・脂肪を含む。
- 腹部X線:骨盤に歯のような石灰化。
- MRI:脂肪はT1強調像で高信号、脂肪抑制T1強調像で信号が下がる。チョコレート嚢胞の血液もT1で高信号だが、脂肪抑制で下がらない。
- 腫瘍マーカーはほぼ正常で、AFPは上がらない。ホルモンも出さない。
- 治療:大きくなると茎捻転・破裂を起こすので、手術で取る(薬では小さくならない)。良性なので腫瘍だけを摘出し、卵巣を残す(腹腔鏡が多い)。
- 閉経後の奇形腫に充実部分とSCC高値があれば、悪性転化(扁平上皮癌)を考える。
そのほかの良性の嚢胞
| 機能性嚢胞(卵胞嚢胞・黄体嚢胞) | 若い人の、単房で壁の薄い嚢胞。症状がなければ数か月後に再検して経過をみる(自然に消える)。妊娠初期の黄体嚢胞も経過観察 |
|---|---|
| 漿液性・粘液性嚢胞腺腫 | 上皮性の良性腫瘍。境界悪性・癌とは、充実部分の有無と摘出した組織で見分ける |
画像で出たら MRIで、T1強調像で白い嚢胞の中身が、脂肪抑制をかけると黒くなる。超音波では、毛髪や皮脂の塊が白い球のように浮かぶ。腹部X線では、骨盤に歯の形の石灰化が写る。
急性腹症:茎捻転と卵巣出血
| 茎捻転 | 卵巣出血 | |
|---|---|---|
| 起こり方 | 可動性のよい良性腫瘍(成熟嚢胞性奇形腫が多い)が、根元でねじれる | 排卵のあと(黄体期)に、黄体から出血する |
| 症状 | 突然の下腹部の激痛。付属器に、強い圧痛のある腫瘤 | 下腹部痛。卵巣の中や周りに血のかたまり、軽い貧血 |
| 対応 | すぐ手術(腹腔鏡)。ねじれを戻し、腫瘍だけを取って卵巣を残す。痛みが軽くなっても手術する | 循環が安定していれば経過観察。ショックなら手術 |
- 女性の急な下腹部痛では、まず妊娠反応で異所性妊娠を除く。
- 自然に治まる痛みの発作をくり返す腫瘍も、捻転を防ぐため手術で取る。
卵巣癌:見つかり方と検査
組織型は漿液性癌(多くは高異型度)が最も多い。子宮内膜症(チョコレート嚢胞)からは、明細胞癌(類内膜癌も)が生じる。日本の罹患は増えている。
症状が出にくく、腹部膨満感や腹水が出て、腹膜に播種した進行期で見つかることが多い。
| 腫瘍マーカー | CA125が上がる(子宮内膜症・月経・妊娠でも上がる)。CEAが高ければ、消化管の癌からの転移も考える |
|---|---|
| 超音波・MRI | 嚢胞の中に、造影される充実部分があれば悪性を疑う |
| 治療の前に | 胸部CT(胸水・肺転移)・腹水の細胞診・凝固線溶検査。上部・下部消化管内視鏡で、消化管の癌を除く |
| 遺伝 | 乳癌の既往や、血縁者に卵巣癌があれば、遺伝性乳癌卵巣癌(BRCA1/2の変異)を考える |
画像で出たら MRIで、嚢胞の壁から内側へ盛り上がる充実部分が造影される。チョコレート嚢胞から生じた明細胞癌では、T1で高信号の嚢胞の中に充実部分がある。進行癌では、腹水と、大網・腹膜の結節が写る。
卵巣癌の治療:まず手術、次に化学療法
- ① 悪性を疑う充実部分・CA125・腹水
- ② 手術摘出して組織型と進行期を決める
- ③ 化学療法パクリタキセル+カルボプラチン
- 悪性を疑い、転移がなければ、まず手術。進行期は手術で決まる。
- 基本の手術:両側付属器・子宮・大網の切除に、骨盤・傍大動脈リンパ節の郭清と腹腔細胞診。早期で片側だけに見えても、反対側の付属器も取る。小網は取らない。
- 播種が広く取り切れないときは、生検で組織を確かめ、化学療法を先に行って小さくしてから手術(腫瘍減量術)。
- 放射線療法・ホルモン療法は、卵巣癌の標準の治療ではない。
- 悪性かもしれない卵巣嚢胞は穿刺しない(癌細胞を腹腔にまく)。
悪性胚細胞腫瘍と性索間質性腫瘍
10〜20代の、急に大きくなる充実性腫瘍は、悪性胚細胞腫瘍を考える。型は腫瘍マーカーで見当をつける。
| 卵黄嚢腫瘍 | AFPが著しく高い |
|---|---|
| 未分化胚細胞腫(ディスジャーミノーマ) | LDHが上がる(精巣のセミノーマにあたる) |
| 未熟奇形腫 | 未熟な神経組織を含む |
| 絨毛癌 | hCGが上がる |
- 治療:患側の付属器摘出(+大網切除)にとどめ、子宮と反対側の卵巣を残す(妊孕性の温存)。術後のBEP療法(ブレオマイシン・エトポシド・シスプラチン)がよく効く。
- 治療のあと:毎回の診察では触診・超音波・AFP・月経を確かめ、造影CTは間隔をあけて。
性索間質性腫瘍:ホルモンの症状で気づく
| 顆粒膜細胞腫 | エストロゲンを出す。閉経後の不正出血、子宮内膜の肥厚(増殖症)、FSHは抑えられる。組織はCall-Exner小体。小児では思春期早発症(骨年齢が進む) |
|---|---|
| 線維腫 | 胸水・腹水を伴うことがあり(Meigs症候群)、腫瘍を取れば消える |
| Sertoli-Leydig細胞腫 | アンドロゲンを出し、男性化(多毛・声が低くなる) |
似た病気との見分け
| 転移性卵巣腫瘍(Krukenberg腫瘍) | 原発は胃癌(印環細胞癌)・大腸癌。両側の充実性腫瘍、CEA高値。上部消化管内視鏡で胃を調べる |
|---|---|
| 卵管癌 | 水様の帯下・下腹部痛・付属器の腫瘤。腹水がたまる |
| 腹膜偽粘液腫 | ゼリー状の腹水。原発は虫垂・卵巣の粘液性腫瘍 |
| チョコレート嚢胞 | 月経痛が強い。MRIのT1の高信号が、脂肪抑制でも残る(子宮内膜症の項) |
| 異所性妊娠 | 妊娠反応が陽性。腹腔内に出血 |
| 卵管留膿症 | 発熱・白血球増加・子宮頸部の移動痛(骨盤内炎症性疾患) |
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
上皮性腫瘍(表層上皮性・間質性腫瘍)に入る組織型は?(代表4つ)★★★
漿液性・粘液性・類内膜・明細胞
卵巣腫瘍で最も多い群で、良性(嚢胞腺腫)・境界悪性・癌がある。線維腫・莢膜細胞腫・顆粒膜細胞腫は性索間質性、奇形腫・未分化胚細胞腫は胚細胞腫瘍。
- Q2
成熟嚢胞性奇形腫は、どの群の腫瘍?★★★
胚細胞腫瘍(良性)
卵子のもとになる胚細胞から生じ、3つの胚葉の組織を含む。上皮性腫瘍ではない。
- Q3
若い女性の卵巣嚢胞に、毛髪・脂肪・歯のような石灰化を含む。考える腫瘍は?★★★
成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)
若い女性に最も多い卵巣腫瘍。腹部X線で歯の石灰化が写ることもある。ホルモンは出さない。
- Q4
MRIのT1強調像で高信号、脂肪抑制T1強調像で信号が下がる。卵巣嚢胞の中身は?★★★
脂肪(成熟嚢胞性奇形腫)
チョコレート嚢胞の古い血液もT1で高信号だが、脂肪抑制では下がらない。
- Q5
成熟嚢胞性奇形腫の治療は?★★★
手術(腫瘍だけを摘出し、卵巣を残す)
ホルモン薬やステロイドでは小さくならず、放っておくと茎捻転・破裂を起こす。良性なので両側の付属器は取らない。腹腔鏡で行うことが多い。
- Q6
閉経後の女性の成熟嚢胞性奇形腫に、充実部分とSCC高値。考えるのは?★★★
悪性転化(扁平上皮癌)
奇形腫の中の皮膚の成分が癌になる。若い人の充実性腫瘍(未熟奇形腫・卵黄嚢腫瘍など)とは、年齢とマーカーで分ける。
- Q7
若い女性に突然の下腹部の激痛。付属器に、強い圧痛のある可動性の腫瘤。考えるのは?★★★必修
卵巣腫瘍茎捻転
奇形腫などの良性腫瘍がねじれ、卵巣の血流が止まる。妊娠反応で異所性妊娠を、超音波で卵巣出血を除く。
- Q8
茎捻転の手術で、ねじれを戻したあとに行うのは?★★★必修
卵巣腫瘍摘出術(正常な卵巣は残す)
若い人の妊孕性と卵巣の働きを守る。両側付属器摘出はしない。卵巣開孔術は多嚢胞性卵巣症候群の手術。
- Q9
卵巣癌で最も多い組織型は?★★★
漿液性癌(多くは高異型度)
乳頭状に増え、砂粒体を伴う。CA125が高くなりやすい。
- Q10
子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)を背景に生じやすい卵巣癌は?★★★
明細胞癌(類内膜癌も)
閉経後にチョコレート嚢胞が大きくなる、充実部分が出てくる、のどちらかがあれば癌化を疑う。
- Q11
上皮性の卵巣癌で上がる腫瘍マーカーは?★★★
CA125
子宮内膜症・月経・妊娠・腹膜炎でも上がり、早期の癌では正常のこともある。CEAが高ければ、消化管の癌からの転移も考える。
- Q12
卵巣の嚢胞性腫瘍で、悪性を疑うMRIの所見は?★★★
造影される充実部分
単房で壁の薄い嚢胞は良性のことが多い。診断は、充実部分の組織で決まる。
- Q13
悪性を疑う卵巣腫瘍。画像で転移はない。まず行うのは?★★★
手術(摘出して組織型と進行期を決める)
卵巣癌の進行期は、手術で取った組織と腹腔内の広がりで決まる。組織が分からないうちに抗癌薬から始めない。
- Q14
卵巣癌の基本の手術で取るのは?★★★
両側付属器・子宮・大網(+骨盤・傍大動脈リンパ節)
早期で片側に見えても、反対側の付属器も取る。小網は取らない(小網を取るのは胃癌の手術)。
- Q15
播種が広く取り切れない卵巣癌。生検で高異型度漿液性癌。次に行うのは?★★★
化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)を先に行う
腫瘍を小さくしてから、取り切ることを目指して手術(腫瘍減量術)を行う。
- Q16
10〜20代の充実性の卵巣腫瘍で、AFPが著しく高い。考えるのは?★★★
卵黄嚢腫瘍(悪性胚細胞腫瘍)
急に大きくなり、CA125も上がることがある。AFPは、治療の効果と再発を見る目印になる。
- Q17
若い女性の片側の悪性胚細胞腫瘍。手術のあとに行う化学療法は?★★★
BEP療法(ブレオマイシン・エトポシド・シスプラチン)
よく効くので、手術は患側の付属器摘出(+大網切除)にとどめ、子宮と反対側の卵巣を残す(妊孕性の温存)。ごく早期の一部は、化学療法をせずに経過をみる。
- Q18
閉経後の不正出血。子宮内膜が厚く、エストラジオール高値でFSHは低い。付属器に腫瘤。考えるのは?★★★
顆粒膜細胞腫
エストロゲンを出す性索間質性腫瘍。子宮内膜増殖症や子宮体癌を伴うことがある。組織ではCall-Exner小体。小児では思春期早発症で来る。
- Q19
両側の卵巣に充実性腫瘍、CEA高値。診断を確かめるため追加する検査は?★★★
上部消化管内視鏡(胃癌を探す)
胃の印環細胞癌などが卵巣に転移したKrukenberg腫瘍。胃の症状が目立たず、卵巣で先に見つかることもある。
- Q20
転移性卵巣腫瘍の原発で多い癌は?(2つ)★★★
胃癌・大腸癌
卵巣の間質に印環細胞が広がるのがKrukenberg腫瘍。卵巣原発の癌を疑うときも、上部・下部の消化管内視鏡で転移を除いてから手術する。
- Q21
卵管癌で最も多い症状は?★★★
水様の帯下
卵管にたまった液が腟から流れ出る。下腹部痛と付属器の腫瘤を伴い、腹水もたまる。治療は卵巣癌と同じ。
- Q22
乳癌の既往があり、おばも卵巣癌で亡くなった。この卵巣癌の患者で考える遺伝性の病気は?★★★
遺伝性乳癌卵巣癌(BRCA1/2の変異)
高異型度漿液性癌に多い。変異があればPARP阻害薬が効きやすい。血縁者の検査や、予防のための卵管卵巣摘出も考える。
- Q23
未分化胚細胞腫(ディスジャーミノーマ)で上がりやすい血液検査の値は?★★★
LDH
精巣のセミノーマにあたる。AFPは卵黄嚢腫瘍、hCGは絨毛癌で上がる。未熟奇形腫は未熟な神経組織を含む。
選択肢の○×
良性
急性腹症
卵巣癌
治療
胚細胞・性索
- 8
胚細胞腫瘍の治療が終わったあとは、診察のたびに腹部造影CTを撮る。119A17
毎回行うのは、触診・超音波・腫瘍マーカー(AFP)と月経の確認。造影CTは被曝と造影剤の負担があり、間隔をあけて行う。