慢性骨髄性白血病・骨髄増殖性腫瘍
白血球・赤血球・血小板が増える腫瘍を、遺伝子と検査で見分ける
33問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 健診で白血球増多と脾腫。すべての段階の顆粒球と好塩基球が増えるならCML。骨髄の染色体検査でPh染色体(BCR::ABL1)を確かめ、チロシンキナーゼ阻害薬で治療する。
- 赤ら顔でHb・Htが高く、EPOが低いなら真性赤血球増加症(JAK2変異)。治療は瀉血と低用量アスピリン。喫煙・睡眠時無呼吸などの低酸素でEPOが上がるのは二次性。
- 血小板が100万を超えて血栓症なら本態性血小板血症。巨脾・涙滴赤血球・白赤芽球症で骨髄穿刺がdry tapなら原発性骨髄線維症で、骨髄生検で線維化を見る。
骨髄増殖性腫瘍の全体像
造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、成熟した血球が勝手に増え続ける腫瘍を、まとめて骨髄増殖性腫瘍と呼ぶ。急性白血病と違い芽球は少なく、ゆっくり進む。
| 病気 | 遺伝子 | 増えるもの・決め手 |
|---|---|---|
| 慢性骨髄性白血病(CML) | BCR::ABL1(Ph染色体) | 白血球(顆粒球)。好塩基球↑・NAPスコア↓ |
| 真性赤血球増加症 | JAK2(ほぼ全例) | 赤血球(白血球・血小板も)。EPO↓ |
| 本態性血小板血症 | JAK2・CALR・MPL | 血小板(100万を超えることも) |
| 原発性骨髄線維症 | JAK2・CALR・MPL | 骨髄の線維化。巨脾・涙滴赤血球 |
- BCR::ABL1をもつのはCMLだけ。ほかの3つはPh染色体がなく、JAK2・CALR・MPLのどれかの変異をもつことが多い。
- どれも脾腫が出る。骨盤に届くほどの巨脾は、CMLと原発性骨髄線維症。血小板が著増した脾腫は、肝硬変ではなく腫瘍による。
- 真性赤血球増加症・本態性血小板血症は血栓症(脳梗塞など)を起こしやすい。
- 増えた顆粒球のため、ビタミンB12が上がる。
慢性骨髄性白血病:見つけ方と診断
健診の白血球増多で見つかることが多い。自覚症状はないか、脾腫による左上腹部の膨満感やだるさ。
| 末梢血 | 白血球が数万に増える。骨髄芽球から成熟好中球まで、すべての段階がそろう(白血病裂孔がない)。好塩基球・好酸球が増える。血小板は正常〜増加。貧血は軽い |
|---|---|
| 骨髄 | 顆粒球が増え、細胞が多い(過形成)。芽球は少ない |
| 生化学 | ビタミンB12↑・尿酸↑・LD↑ |
| NAPスコア | 低い(感染による白血球増多では高い) |
| 確定 | 骨髄の染色体検査でPh染色体(t(9;22))。FISH・RT-PCRでBCR::ABL1融合遺伝子を確かめる |
- 9番と22番の染色体の一部が入れ替わってできたBCR::ABL1が、チロシンキナーゼとして働き続け、顆粒球が増える。喫煙・感染・薬は原因ではない。
- Ph染色体は、成人の急性リンパ性白血病の一部にも出る(Ph陽性ALL)。
- 細胞表面抗原は急性白血病・リンパ系腫瘍を見る検査で、CMLの診断には使わない。
画像で出たら 骨髄・末梢血の塗抹では、いろいろな成熟段階の顆粒球が並び、濃い紫の顆粒をもつ好塩基球が目立つ。染色体分析では、短くなった22番(Ph染色体)に矢印がつく。FISHでは、BCRとABL1の信号が重なった融合信号が出る。
慢性骨髄性白血病:治療と急性転化
| 慢性期 | チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の内服:イマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブなど。症状がなくても、診断がつけば始める |
|---|---|
| 効かない・使えない | 別のTKIに替える(T315I変異にはポナチニブ)。同種造血幹細胞移植も考える |
| 急性転化 | TKIに化学療法を加えて寛解をめざし、同種造血幹細胞移植につなぐ |
- 効果は、末梢血のBCR::ABL1の量(定量PCR)で追う。
- TKIが効くのは、BCR::ABL1をもつCMLとPh陽性ALL。真性赤血球増加症・本態性血小板血症などには効かない。
- 慢性期に多剤併用化学療法・自家造血幹細胞移植は行わない。インターフェロンαは、TKIが出る前の治療。JAK2阻害薬・ATRA・プロテアソーム阻害薬はCMLの薬ではない。
急性転化:慢性期が数年続いたあと、治療しないと(TKIの自己中断でも)芽球が増えて急性白血病のようになる。付加的な染色体異常(Ph染色体の倍加・+8など)が加わり、脾腫は大きくなり、血小板は減る。WHO分類第5版では、芽球が20%以上になれば急性期(急性転化)とする。
真性赤血球増加症
JAK2変異で、EPOがなくても赤血球がつくられる。赤血球だけでなく、白血球・血小板も増える(骨髄で3系統が増える)。
| 症状 | 顔面紅潮・結膜の充血、頭重感・めまい、高血圧、脾腫 |
|---|---|
| 血液 | Hb・Htが高い。NAPスコア↑・ビタミンB12↑・血清鉄↓ |
| 決め手 | EPOが低い・JAK2変異(V617F、一部はexon 12)。骨髄生検で3系統の過形成 |
| 合併症 | 血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症)。のちに骨髄線維症や急性白血病に移ることもある |
治療
| 全員 | 瀉血(Ht 45%未満をめざす)+低用量アスピリンで血栓を防ぐ |
|---|---|
| 高リスク(60歳以上・血栓症の既往) | 細胞減少療法(ヒドロキシカルバミド)を加える。効かなければインターフェロン製剤・JAK阻害薬(ルキソリチニブ) |
| 行わない | 多剤併用化学療法・造血幹細胞移植・脾摘・放射線治療・鉄剤(鉄が減っていても補わない)・イマチニブ |
本態性血小板血症
巨核球が増え、血小板だけが著しく増える(100万を超えることも)。脳梗塞などの血栓症で見つかることがある。
| 血液 | 血小板45万以上が続く。赤血球・Hbは正常。白血球は軽く増えることがある |
|---|---|
| 骨髄 | 大きく成熟した巨核球が増える。線維化はない |
| 遺伝子 | JAK2(約半数)・CALR・MPL。Ph染色体はなく、正常核型 |
| 除く病気 | CML・真性赤血球増加症・原発性骨髄線維症・骨髄異形成症候群、反応性の血小板増加(鉄欠乏・炎症・脾摘後) |
| 治療 | 低用量アスピリンで血栓を防ぐ。高リスク(60歳以上・血栓症の既往)は、ヒドロキシカルバミド・アナグレリドで血小板を減らす。血小板が極端に多い(150万以上)と、かえって出血しやすい |
原発性骨髄線維症
骨髄が線維に置き換わり、血をつくる場所が減る。代わりに脾臓・肝臓で血をつくる(髄外造血)ため、巨脾・肝腫大と貧血が進む。
| 症状 | 腹部膨満感・左上腹部の重さ、少し食べただけで満腹になる、体重減少、貧血の症状 |
|---|---|
| 末梢血 | 涙滴赤血球。白赤芽球症(赤芽球と幼若な顆粒球が出る)。巨大血小板。NAPスコアは低くない |
| 骨髄 | 穿刺はdry tap(吸引できない)。骨髄生検で、鍍銀染色で細網線維が増える |
| 遺伝子 | JAK2(約半数)・CALR・MPL。BCR::ABL1は陰性 |
| 治療 | 低リスクで症状が軽ければ経過観察。貧血には輸血。症状のある脾腫・全身症状にはJAK阻害薬(ルキソリチニブなど)。治せるのは同種造血幹細胞移植だけで、高リスクの人で考える |
- 白赤芽球症・LD上昇は、がんの骨髄転移などでも出るので、これだけでは確定できない。
画像で出たら 骨髄生検のH-E染色では、線維が増えて造血細胞が減り、形のいびつな巨核球が集まる。鍍銀染色では、黒い細網線維が網の目のように増える。末梢血では、一方がとがったしずく形の涙滴赤血球が見える。
似た病気との見分け
赤血球が多いとき
| 真性赤血球増加症 | 二次性赤血球増加症 | |
|---|---|---|
| 原因 | JAK2変異(腫瘍) | 低酸素:喫煙・COPD・高地居住・睡眠時無呼吸症候群・チアノーゼ性心疾患。EPO産生腫瘍(腎細胞癌・肝細胞癌・小脳血管芽腫)・蛋白同化ホルモン |
| EPO | 低い | 正常〜高い |
| 白血球・血小板 | 増える | 正常 |
| 脾腫 | あることが多い | ない |
| PaO2 | 正常 | 低酸素によるものは低い |
- 脱水・ストレスでHtが上がるのは相対的赤血球増加症。血漿が減っただけで、赤血球の量は増えていない。
- 喫煙者でも、EPOが低ければ真性赤血球増加症を考える。
- 感染性心内膜炎など慢性の炎症では、赤血球は減る。
白血球が多いとき
| 感染・炎症(類白血病反応) | 細菌感染では好中球が増える。幼若な顆粒球が出ても、NAPスコアは高く、好塩基球は増えず、Ph染色体もない |
|---|---|
| 急性白血病 | 芽球が多く、途中の段階が抜ける(白血病裂孔)。巨脾はまれ |
| 慢性骨髄単球性白血病 | 単球が増える。BCR::ABL1は陰性 |
| 骨髄異形成症候群 | 血球が減り、形の異常(異形成)がある |
末梢血の赤血球の形
| 涙滴赤血球 | 原発性骨髄線維症 |
|---|---|
| 標的赤血球 | サラセミア・閉塞性黄疸 |
| 球状赤血球 | 遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血 |
| 破砕赤血球 | TTP・HUS・DIC |
| 連銭形成 | 多発性骨髄腫(免疫グロブリンが多い) |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
骨盤に届くほどの巨脾を起こしやすい血液の病気は?(2つ)★★★
慢性骨髄性白血病・原発性骨髄線維症
腫瘍細胞が脾臓に広がり、髄外造血も加わる。急性白血病・多発性骨髄腫・成人T細胞白血病では、巨脾はまれ。
- Q2
真性赤血球増加症・本態性血小板血症で、最も気をつける合併症は?★★★
血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症)
血液が濃くなり、増えた血小板も働きすぎる。脳梗塞のあとに血小板の著増が見つかることもある。
- Q3
健診で白血球増多と脾腫。芽球から成熟好中球まですべての段階がそろい、好塩基球も多い。考える病気は?★★★
慢性骨髄性白血病
急性白血病は途中の段階が抜ける(白血病裂孔)。感染による白血球増多では、好塩基球は増えない。
- Q4
CMLの原因となる染色体異常と、それでできる融合遺伝子は?★★★
t(9;22)(Philadelphia染色体)・BCR::ABL1
BCR::ABL1のチロシンキナーゼが働き続け、顆粒球が増える。Ph染色体は、成人の急性リンパ性白血病の一部にも出る。
- Q5
CMLを疑ったとき、診断を確定し治療方針を決める検査は?★★★
骨髄の染色体検査(Ph染色体)
FISH・RT-PCRでBCR::ABL1も確かめる。細胞表面抗原は急性白血病・リンパ系腫瘍の系統を見る検査で、G-CSF・EPOの測定やPETは役立たない。
- Q6
CMLで低くなる、好中球の酵素の検査値は?★★★
好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコア
感染による白血球増多(類白血病反応)や真性赤血球増加症では高い。原発性骨髄線維症でも低くない。
- Q7
慢性期CMLで、まず行う治療は?★★★
チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブなど)の内服
BCR::ABL1の働きを直接止め、多くの人で長く病気を抑えられる。殺細胞性の抗癌薬・ATRA・JAK2阻害薬は使わない。
- Q8
TKIを自己中断したCML。芽球が増えた。新しく加わる染色体の変化は?★★★
付加的染色体異常(Ph染色体の倍加・+8など)
急性転化では脾腫は大きくなり、血小板は減る。NAPスコアの低下は慢性期からあり、新しい変化ではない。
- Q9
CMLの急性転化の治療は?(2つ)★★★
化学療法(TKIと併用)・同種造血幹細胞移植
急性白血病と同じように寛解をめざし、移植につなぐ。分化誘導療法は急性前骨髄球性白血病の治療。
- Q10
赤ら顔と頭重感。Hb 19 g/dL、EPO低値、脾腫。考える病気は?★★★
真性赤血球増加症
骨髄で赤芽球・顆粒球・巨核球の3系統が増える。血液が濃くなり、高血圧や血栓症を起こす。
- Q11
真性赤血球増加症のほぼ全例にある遺伝子変異は?★★★
JAK2変異(V617F、一部はexon 12)
本態性血小板血症・原発性骨髄線維症でも約半数にある。二次性赤血球増加症にはない。
- Q12
真性赤血球増加症で、全員に行う治療は?(2つ)★★★
瀉血・低用量アスピリン
Ht 45%未満を目標に血液を薄め、血栓を防ぐ。60歳以上か血栓症の既往があれば、ヒドロキシカルバミドなどの細胞減少療法を加える。
- Q13
血小板が100万を超え、骨髄に大きな巨核球が多い。線維化はなく、正常核型。考える病気は?★★★
本態性血小板血症
赤血球は増えない。JAK2・CALR・MPLのどれかの変異をもつことが多い。
- Q14
巨脾と貧血。末梢血に赤芽球・幼若顆粒球・涙滴赤血球。骨髄穿刺はdry tap。考える病気は?★★★
原発性骨髄線維症
骨髄が線維に置き換わり、脾臓・肝臓で血をつくる(髄外造血)。BCR::ABL1は陰性。
- Q15
末梢血に赤芽球と幼若な顆粒球が同時に出る所見の名前は?★★★
白赤芽球症
骨髄の線維化やがんの骨髄転移で、未熟な細胞が骨髄の外へ押し出されたり、骨髄の外で血がつくられたりして出る。
- Q16
骨髄線維症の末梢血で特徴的な赤血球の形は?★★★
涙滴赤血球
線維の間や脾臓を通るとき、しずく形に変形する。標的赤血球はサラセミア・閉塞性黄疸、破砕赤血球はTTP・DICで見る。
- Q17
骨髄穿刺がdry tapだった。次に行う検査は?★★★
骨髄生検
吸引では骨髄液が引けない。組織を取り、鍍銀染色で細網線維の増生(線維化)を見る。
- Q18
低酸素でEPOが増え、二次性赤血球増加症を起こすものは?(主なもの4つ)★★★
喫煙・COPD・高地居住・睡眠時無呼吸症候群
チアノーゼ性心疾患も同じ。喫煙では一酸化炭素ヘモグロビンが酸素を運べなくする。
- Q19
重喫煙者が、咳・痰・発熱で受診。顔面が紅潮。増えると予想される血球は?(2つ)★★★
赤血球・好中球
喫煙で二次性赤血球増加、細菌感染で好中球増加。好塩基球が増えていればCMLを考える。
- Q20
低酸素がなくても二次性赤血球増加症を起こすものは?(腫瘍と薬の2つ)★★★
EPO産生腫瘍(腎細胞癌・肝細胞癌・小脳血管芽腫)・蛋白同化ホルモン
腫瘍は自分でEPOをつくる。男性ホルモンはEPOと造血を増やす。