急性冠症候群
胸痛の診かたから、治療・合併症まで
72問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 疑ったら、胸痛がなくても来院10分以内に12誘導心電図。ST上昇なら、採血の結果を待たずに冠動脈造影からPCIへ。
- ST上昇がなくても、胸痛が続き、ST低下とトロポニン陽性があれば緊急冠動脈造影。ACSを否定できるまで負荷試験はしない。
- 高齢者・糖尿病では胸痛がなく、冷汗・悪心・食欲不振だけのことがある。
典型像:ACSを考える胸痛
| ACSらしい | ACSらしくない |
|---|---|
| 締めつけ・圧迫感が20分以上続く。冷汗・悪心を伴う | 指1本で示せる狭い範囲、針で刺すような痛み |
| 安静時にも起こる・だんだん悪化する | 息を吸うと強くなる(胸膜炎・心膜炎・気胸) |
| 下顎・頸部・左肩・左腕へ広がる | 押すと痛む・服が触れて痛む(胸壁) |
| 飲み込むと痛む(食道)。痛む場所が移る(大動脈解離) |
- 胸痛がない心筋虚血は糖尿病に多く、心筋梗塞の後にも起こる。胸痛ではなく心窩部痛・嘔気・失神で来ることもある。冷汗があれば緊急と考えて心電図。
- 冠攣縮性狭心症は夜間〜早朝の安静時に起こる。ニトロは数分で効く(1時間たって治まった痛みは、効いたとはいえない)。
3つの型と見分け方
| 型 | 心電図 | 心筋トロポニン |
|---|---|---|
| STEMI | ST上昇(冠動脈が完全に詰まる) | 上がる |
| NSTEMI | ST低下・陰性T波・変化なし | 上がる |
| 不安定狭心症 | ST低下・陰性T波・変化なし | 上がらない |
NSTEMIと不安定狭心症は心電図では分けられず、心筋トロポニンで分ける。トロポニン陰性・ST-T変化なし・胸痛が消えた、のどれでもACSは否定できない。時間をおいて心電図とトロポニンをくり返す(陽性なら採血のくり返しは待たない)。トロポニンはCKが正常に戻った数日後も高い。
検査の順番
- ① 12誘導心電図来院10分以内
- ② 採血心筋トロポニン
- ③ 心エコー雑音がなくても壁運動を見る
- ④ 冠動脈造影そのままPCI
- すぐ造影:STEMI(透析患者でも透析より先に、酵素が上がる前でも)、胸痛が続きST低下・トロポニン陽性のNSTEMI。
- しない:運動負荷心電図・負荷心筋シンチ(虚血を誘発する)。冠動脈CT・心臓MRI・Holter心電図で時間を使わない。
- BNP・Dダイマーでは心筋が壊れたかは分からない。
心電図と冠動脈
| 梗塞の部位 | ST上昇が出る誘導 | 主な責任血管 |
|---|---|---|
| 前壁・中隔 | V1〜V4 | 左前下行枝 |
| 側壁 | Ⅰ・aVL・V5・V6 | 左回旋枝 |
| 下壁 | Ⅱ・Ⅲ・aVF(右室梗塞は V4R も) | 右冠動脈が多い |
- 数日で、梗塞部の誘導に異常Q波・R波の減高・陰性T波が出る。古い梗塞の場所は、異常Q波の出ている誘導で読む。
- ST-T変化は、まず以前の心電図(術前・健診)と比べる。前からある変化なら意味が違う。
- 不安定狭心症でも、胸痛が治まった後に陰性T波が残ることがある。異常Q波は出ない(Q波は心筋が壊死した印)。心筋梗塞で胸痛が消えて陰性T波が出てきたら、血流が戻った(再灌流)サイン。
- 造影で前室間溝を心尖部へ下るのが左前下行枝。
- 左冠動脈主幹部が詰まると左室全体の動きが落ち、心原性ショックになる。
治療
| 来院直後 | モニター・静脈路・除細動器の準備。アスピリンをかみ砕いて内服、ヘパリン、硝酸薬、酸素(SpO2が低いとき)。頻脈・高血圧にアトロピンは使わない |
|---|---|
| 再灌流 | 冠動脈造影で詰まった所を確かめ、そのままPCI。左冠動脈主幹部・多枝の病変は冠動脈バイパス術 |
| 再発予防 | 抗血小板薬+スタチン。ステント後しばらくは抗血小板薬2剤(DAPT)。抗凝固薬は加えない |
| PCIの直後 | 頻脈・ショックなら、冠動脈の穿孔による心タンポナーデを考える |
| リハビリ | 急性期に低負荷から始め、退院後も外来で続ける。最初は監視下で心拍数・症状を見て、胸痛・息切れがあれば強度を上げない。筋力トレーニングも組み合わせる。栄養とサルコペニアも見る。食事・薬の指導も家族と |
- 硝酸薬を使わない:右室梗塞・低血圧・PDE5阻害薬を内服中。右室梗塞は輸液で前負荷を保ち、ヘパリン・アスピリン・ドブタミンは使ってよい。
- 血栓溶解薬を使わない:手術直後・出血している、非ST上昇型。
- 心臓リハビリの対象:心筋梗塞・狭心症・心臓の手術後・心臓移植後・閉塞性動脈硬化症。
合併症
| 時期 | 合併症 | 手がかり |
|---|---|---|
| 発症〜24時間 | 心室細動 | 来院直後からモニター。起きたら直ちに電気的除細動 |
| 下壁梗塞 | 洞停止・房室ブロック | 右冠動脈が洞結節・房室結節を養う。徐脈で失神したらアトロピン |
| 数日〜1週間 | 心室中隔穿孔 | 新しい収縮期雑音・ショック |
| 左室自由壁破裂 | 心タンポナーデ・急な血圧低下(雑音は出ない) | |
| 乳頭筋断裂 | 新しい収縮期雑音(急性僧帽弁閉鎖不全)・肺水腫。後乳頭筋に多い(左前下行枝の病変ではない) | |
| 数週後 | Dressler症候群 | 発熱・胸痛(心膜炎) |
| 慢性期 | 心室瘤 | STが上昇したまま。緊急手術ではない |
| 広い梗塞 | 心原性ショック | 心拍出量↓・肺動脈楔入圧↑・中心静脈圧↑・末梢血管抵抗↑ |
- 心室中隔穿孔・自由壁破裂・乳頭筋断裂は心エコーで診断し、緊急手術。
- 左室の収縮が落ちると左房圧が上がり、乳頭筋の虚血で僧帽弁閉鎖不全が起こる。心拍出量は下がり、交感神経が強く働く。右室梗塞では肺動脈圧は上がらない。大動脈弁閉鎖不全は起こらない(大動脈解離で考える)。
- IABP:拡張期にふくらませて冠血流を増やし、収縮期の直前にしぼませて後負荷を下げる。下行大動脈に置き、弓部にかけない。抗血栓療法をして下肢虚血に注意。酸素化はできない(それはECMO)。
似た病気との見分け
| 急性大動脈解離 | 背中へ移る激痛、腕の血圧の左右差。抗血栓薬は使えない |
|---|---|
| 肺血栓塞栓症 | 頻呼吸・低酸素、片脚の腫れ。Dダイマーが上がる |
| 急性心膜炎 | 吸気・仰臥位で強まり、前かがみで楽になる。広い範囲の誘導でST上昇 |
| 急性心筋炎 | かぜのような症状の後。トロポニンが上がるが、冠動脈に狭窄がない |
| たこつぼ心筋症 | 強いストレスの後。心尖部が動かないのに、冠動脈に狭窄がない |
画像で出たら 心エコーは責任血管の領域だけ動きが悪い。冠動脈造影は責任病変で途切れるか細くなる。詰まった先が、別の冠動脈から中隔枝などの側副血行で映ることがある。
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
胸痛が20分以上続く、安静時にくり返す、だんだん悪化する。考える病気は?★★★必修
急性冠症候群
決まった労作で起こり数分で治まる、安定狭心症の形が崩れている。
- Q2
ACSの痛みが広がりやすい部位は?(4つ)★★★必修
下顎・頸部・左肩・左腕
心臓の痛みは、同じ高さの脊髄に入る部位の痛みとして感じる。
- Q3
ACSらしくない胸痛の性状は?(3つ)★★★必修
吸気で強まる・押すと痛む・痛む場所が移る
吸気は胸膜・心膜、圧迫は胸壁、移動は大動脈解離を考える。針で刺すような痛みもACSらしくない。
- Q4
糖尿病の高齢者。胸痛はなく、冷汗と悪心がある。まず疑うのは?★★★
急性冠症候群
無痛性心筋虚血。心筋梗塞の後にも起こる。胸痛ではなく心窩部痛と嘔気で来ることもあり、冷汗は緊急のサイン。
- Q5
不安定狭心症とNSTEMIを分ける検査は?★★★必修
心筋トロポニン
心電図ではどちらもST低下・陰性T波で分けられない。
- Q6
ACSを疑う患者。最初に行う検査は?★★★
12誘導心電図(10分以内)
胸痛がなくても行う。造影CTや心エコーより先。
- Q7
心筋が壊れたかを確かめる血液検査は?★★★必修
心筋トロポニン
BNPは心不全、Dダイマーは血栓の目安で、心筋の障害は分からない。CKが正常に戻った数日後も、トロポニンは高いまま。
- Q8
胸痛が続き、ST低下とトロポニン陽性。次に行うのは?★★★
緊急冠動脈造影
高リスクのNSTEMI。ST上昇がなくても待たない。
- Q9
ST-T変化を見つけた。まず何と比べる?★★★必修
以前の心電図(術前・健診)
前からある変化か、新しい変化かで意味がまったく違う。
- Q10
前壁・側壁・下壁の梗塞で、ST上昇が出る誘導は?★★★
V1〜V4/Ⅰ・aVL・V5・V6/Ⅱ・Ⅲ・aVF
前壁〜側壁の梗塞では、Ⅱ誘導にST上昇は出ない。
- Q11
冠動脈造影で、前室間溝を心尖部へ下る血管は?★★★
左前下行枝
左冠動脈は主幹部からすぐ前下行枝と回旋枝に分かれる。
- Q12
不安定狭心症で、胸痛が治まった後に残りうる所見は?★★★
陰性T波
V2・V3の深い陰性T波は、前下行枝の根もとの強い狭窄を示す。
- Q13
陳旧性心筋梗塞の心電図で、梗塞した場所を示す所見は?★★★
異常Q波(出ている誘導で場所が分かる)
V1〜V4なら前壁、Ⅱ・Ⅲ・aVFなら下壁。ST上昇と同じ対応で読む。
- Q14
左室全体の動きが落ち、心原性ショック。責任病変は?★★★
左冠動脈主幹部
前下行枝と回旋枝に分かれる手前なので、左室の大部分が虚血になる。
- Q15
ACSの初期治療で、来院後すぐ使う薬は?(3つ)★★★
アスピリン(かみ砕く)・ヘパリン・硝酸薬
酸素はSpO2が低いときだけ。硝酸薬は右室梗塞・低血圧では使わない。
- Q16
頻脈・高血圧の急性心筋梗塞。来院直後に使わない薬は?★★★
アトロピン
徐脈のときの薬。心拍数を上げて酸素の消費を増やす。
- Q17
右室梗塞で血圧が低い。避ける薬と、代わりに行うことは?★★★
硝酸薬を避け、輸液で前負荷を保つ
硝酸薬は静脈を広げ、心臓に戻る血を減らす。
- Q18
手術直後に起こったACS。使えない薬は?★★★必修
血栓溶解薬
傷口で止まっている血も溶かしてしまう。
- Q19
左冠動脈主幹部や多枝の病変があるACS。選ぶ血行再建は?★★★
冠動脈バイパス術(CABG)
PCIではなく手術。それまで抗血小板薬・ヘパリン・硝酸薬で落ち着かせる。
- Q20
心筋梗塞の再発予防に続ける薬は?(2種類)★★★
抗血小板薬とスタチン(ステント後しばらくは抗血小板薬2剤=DAPT)
ステント血栓症を防ぎ、プラークを安定させる。抗凝固薬は加えない。
- Q21
心筋梗塞の後の心臓リハビリ。いつ始めて、いつまで続ける?★★★
急性期に低負荷から始め、退院後も続ける
高い負荷から始めない。2週間のベッド上安静も要らない。
- Q22
下壁梗塞で起こりやすい不整脈は?(2つ)★★★
洞停止・房室ブロック
右冠動脈が洞結節と房室結節を養うことが多い。徐脈で失神したらアトロピン。
- Q23
心筋梗塞で入院した直後、突然意識を失い脈が触れない。モニターは心室細動。直ちに行うのは?★★★
電気的除細動
胸骨圧迫を始め、除細動器が届きしだい電気ショック。発症直後ほど起こりやすいので、来院した時からモニターする。
- Q24
梗塞の数日後に起こる機械的合併症は?(3つ)★★★
心室中隔穿孔・左室自由壁破裂・乳頭筋断裂
壊死した心筋がもろくなって裂ける。心エコーで診断し、緊急手術。
- Q25
梗塞の数日後、新しい収縮期雑音と呼吸困難が出た。考える合併症は?(2つ)★★★
心室中隔穿孔・乳頭筋断裂
左室自由壁破裂は雑音が出ず、心タンポナーデで急に血圧が下がる。どれも心エコーで診断し、緊急手術。
- Q26
心筋梗塞の合併症のうち、緊急手術にならないのは?★★★
心室瘤
心電図ではST上昇が続く。
- Q27
心原性ショックの心拍出量・肺動脈楔入圧・中心静脈圧・末梢血管抵抗は?★★★
↓・↑・↑・↑
送り出せない血が心臓の手前にたまり、体は血管を締める。
- Q28
左室の収縮が落ちた。左房圧と僧帽弁はどうなる?★★★
左房圧が上がり、僧帽弁閉鎖不全
乳頭筋が虚血で弱り、弁がきちんと閉じなくなる。
- Q29
IABPのバルーンをふくらませる時期は?★★★
拡張期
冠動脈の血流は拡張期に流れる。収縮期の直前にしぼませて後負荷を下げる。
- Q30
ACSを疑う患者。心雑音がなくても、心エコーで見るものは?★★★
壁運動の低下
責任血管の領域だけ動きが悪くなる。
- Q31
右室梗塞で血圧が低い。輸液に加えて使ってよい強心薬は?★★★
ドブタミン
ヘパリン・アスピリンも使ってよい。硝酸薬は使わない。
- Q32
心臓リハビリで、有酸素運動に組み合わせる運動は?★★★
筋力トレーニング
低い負荷の有酸素運動から始め、筋力トレーニングも組み合わせる。
- Q33
PCIの直後に、頻脈とショックになった。まず考える合併症は?★★★
心タンポナーデ(冠動脈の穿孔)
心エコーで心嚢液を確かめ、心嚢穿刺。
- Q34
心筋梗塞で、心室細動が起こりやすい時期は?★★★
発症直後(24時間以内)
来院直後からモニターし、除細動器を準備する。
- Q35
乳頭筋断裂が多いのは、前乳頭筋と後乳頭筋のどちら?★★★
後乳頭筋
養う血管が1本(右冠動脈か回旋枝)だけのため。左前下行枝の病変では起こりにくい。
- Q36
IABPを置く場所は?★★★
下行大動脈(先端は弓部にかけない)
大静脈ではない。抗血栓療法をして、下肢虚血に注意する。
- Q37
心尖部が動かないのに、冠動脈に狭窄がない。考える病気は?★★★必修
たこつぼ心筋症
強いストレスの後に多い。
選択肢の○×
検査の順番
心電図と冠動脈
- 6
胸痛が治まり、梗塞部の誘導に陰性T波が出てきた。詰まった冠動脈の血流は戻ったと考える。109E67
再灌流のサイン。心筋梗塞が否定されたわけではない。