大動脈弁膜症
狭窄の駆出性雑音・失神から、閉鎖不全の拡張期雑音、人工弁まで
27問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 高齢者の労作時の狭心痛・失神・息切れ。胸骨右縁第2肋間の収縮期駆出性雑音が頸部へ放散し、遅脈なら大動脈弁狭窄症。まず心エコー。
- 大動脈弁狭窄症は症状が出ると予後が悪く、突然死もある。症状のある重症例は弁置換(外科手術かTAVI)。運動負荷はしない。
- 胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音と大きな脈圧なら大動脈弁閉鎖不全症。機械弁を入れたら生涯ワルファリン。
起こり方と症状:狭窄と逆流
大動脈弁が硬く狭くなるのが大動脈弁狭窄症(AS)、閉じきらずに拡張期に血が左室へ戻るのが大動脈弁閉鎖不全症(AR)。
| 大動脈弁狭窄症(AS) | 大動脈弁閉鎖不全症(AR) | |
|---|---|---|
| 原因 | 高齢者は加齢による弁の石灰化、若い〜中年の人は先天性の二尖弁 | 弁そのものの病気(二尖弁・感染性心内膜炎など)か、大動脈の付け根が広がる病気(加齢・高血圧・Marfan症候群・大動脈解離など) |
| 左室 | 圧負荷で壁が厚くなる。心電図で左室肥大 | 容量負荷で左室が広がる |
| 症状 | 労作時の狭心痛・失神・心不全(息切れ)。症状が出ると予後が悪く、突然死もある | 長く無症状。進むと息切れ・狭心痛 |
- ASでは狭い弁で心拍出量の上限が決まり、運動しても増やせない。血管が広がって血圧が下がると、冠動脈の血流が減って心筋虚血を起こす。
- ASの予後の目安:症状が出てから、狭心痛で約5年、失神で約3年、心不全で約2年。
雑音と脈:ASとARを並べて
| AS | AR | |
|---|---|---|
| 雑音 | 収縮期駆出性雑音(収縮中期に強まって弱まる、ひし形) | 拡張期の灌水様雑音(Ⅱ音のすぐ後から弱まる高い音) |
| 最強点 | 胸骨右縁第2肋間。頸部へ放散 | 胸骨左縁第3肋間(第4肋間も) |
| 脈 | 遅脈・小脈(頸動脈の拍動の立ち上がりが遅い) | 速脈・大脈 |
| 脈圧 | 小さい | 大きい(拡張期血圧が下がる。例 142/36 mmHg) |
| ほかの音 | Ⅳ音。Ⅱ音は小さくなる(重いと奇異性分裂) | 収縮期の駆出性雑音も加わり、往復雑音(to and fro murmur) |
- ARの雑音は坐位で前かがみになり、息を吐いて止めたところで聴く。
- ARでは爪を軽く押すと、毛細血管の拍動が見える(Quincke徴候)。脈圧が大きいための所見で、ASでは見られない。
大動脈弁狭窄症:検査と治療
- ① 心エコー弁口面積・血流の速さ
- ② 重症度と症状症状があれば治療へ
- ③ 冠動脈造影治療の前に
- ④ 弁置換外科手術かTAVI
- 疑ったら、まず心エコー。重症の目安は、弁口面積1.0 cm2未満・最大血流速度4 m/秒以上・平均圧較差40 mmHg以上。
- 症状のある重症ASに運動負荷心電図はしない(失神・突然死の危険)。
- 方針は自覚症状・併存疾患・心エコー・心臓カテーテル検査で決める。
- 症状のある重症ASは弁置換。外科的な大動脈弁置換術か、カテーテルで入れる経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)。高齢の人や手術の危険が高い人ではTAVIを考え、循環器内科と心臓外科のチームで決める。
- 利尿薬・降圧薬・強心薬では狭窄は治らない。失神してもペースメーカではなく弁置換。
画像で出たら 心エコーで、ASは弁が厚く白く(石灰化)、開きが悪い。連続波ドプラでは、収縮期に弁を通る血流が速い(重症では4 m/秒以上)。ARはカラードプラで、拡張期に大動脈弁から左室へ吹きこむ逆流が見える。
大動脈弁閉鎖不全症:検査と治療
- 進むと左室が広がり、心尖拍動が左下方へずれる。拡張期血圧が下がって冠動脈の血流が減り、狭心痛が出る。
- 心エコー(カラードプラ)で逆流の程度と、左室の大きさ・収縮を見る。手術の前には心臓カテーテル(大動脈造影・冠動脈造影)。
- 症状が出たら大動脈弁置換術。症状がなくても、左室の収縮が落ちたり大きく広がったりしたら手術を考える。TAVIは主にASの治療。
- IABPは使わない(拡張期に大動脈の圧を上げ、逆流を増やす)。
人工弁:機械弁と生体弁
| 機械弁 | 生体弁 | |
|---|---|---|
| 長もち | 長くもつ | 10〜20年で傷み、再手術が要ることがある |
| 抗凝固 | 生涯ワルファリン | 術後しばらく(3か月ほど)を過ぎれば、ふつうは要らない |
| 向く人 | 若い人 | 高齢者(大動脈弁ではおおむね65歳以上) |
- 機械弁でも抜歯や手術は受けられる(抜歯はふつうワルファリンを続けたまま、大きな手術ではヘパリンに置き換えて)。人工弁は感染性心内膜炎を起こしやすく、抜歯の前に抗菌薬を飲む(くわしくは感染性心内膜炎で)。
画像で出たら 機械弁は、輪の中に半円の板が2枚ついた、硬い人工の弁。生体弁は、布を巻いた枠にブタやウシの組織でできた3枚の弁尖がついた弁。
似た病気との見分け
収縮期雑音のとき
| 閉塞性肥大型心筋症 | 若い人、突然死の家族歴。最強点は胸骨左縁第3〜4肋間で、頸部へは放散しにくい。Valsalvaで大きく、しゃがむと小さくなる(ASとは逆) |
|---|---|
| 僧帽弁閉鎖不全症 | 心尖部の全収縮期雑音で、腋窩へ放散する |
| 心房中隔欠損症 | 胸骨左縁第2肋間の収縮期雑音と、Ⅱ音の固定性分裂 |
拡張期雑音・脈の異常のとき
| 僧帽弁狭窄症 | 心尖部の拡張期ランブル(輪転様雑音)。Ⅰ音の亢進と僧帽弁開放音 |
|---|---|
| 動脈管開存症 | 胸骨左縁第2肋間の連続性雑音 |
| 心タンポナーデ | 奇脈(吸気で収縮期血圧が10 mmHg以上下がる)。頸静脈怒張と心音の減弱 |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
弁膜症のうち、労作時の失神・狭心痛を起こし、突然死しやすいのは?★★★必修
大動脈弁狭窄症
狭い弁で心拍出量の上限が決まり、運動しても増やせない。僧帽弁・三尖弁の病気やARで突然死することは少ない。
- Q2
ASで、出ると予後が悪いとされる症状は?(3つ)★★★
狭心痛・失神・心不全
出たら弁の治療を急ぐ。出てからの余命の目安は、狭心痛で約5年、失神で約3年、心不全で約2年。脈圧の増大や爪床の毛細血管拍動は、ARの所見。
- Q3
ASの原因で多いのは、高齢者と、若い〜中年の人でそれぞれ何?★★★
高齢者は加齢による弁の石灰化、若い〜中年の人は先天性の二尖弁
二尖弁は早くから傷んで石灰化し、ARの原因にもなる。短絡はないので、チアノーゼは出ない。
- Q4
ASとARで、左室にかかる負荷は?★★★必修
AS=圧負荷(壁が厚くなる)、AR=容量負荷(左室が広がる)
ASでは心電図で左室肥大が出るが、胸部X線の心陰影はあまり大きくならないことが多い。左室に入る血が減って前負荷が下がるのは、僧帽弁狭窄症。
- Q5
ASの雑音の最強点と、放散する方向は?★★★必修
胸骨右縁第2肋間(大動脈弁領域)。頸部へ放散
胸骨左縁第2肋間は肺動脈弁、胸骨左縁の下部は三尖弁、心尖部は僧帽弁の領域。
- Q6
ASの雑音は、心周期のどこで、どんな形?★★★必修
収縮期の駆出性雑音(収縮中期に強まって弱まる、ひし形)
Ⅰ音から少し遅れて始まり、Ⅱ音の前に終わる。Ⅰ音からⅡ音まで同じ強さで続く全収縮期雑音は、僧帽弁閉鎖不全・心室中隔欠損。
- Q7
ASの脈の特徴は?★★★必修
遅脈・小脈(頸動脈の拍動の立ち上がりが遅く、小さい)
狭い弁口から、ゆっくり押し出されるため。速脈・大脈はAR、奇脈は心タンポナーデ。
- Q8
ASで聴く過剰心音は?★★★必修
Ⅳ音
厚く硬くなった左室に、心房が強く血を押しこむ音。
- Q9
拡張期雑音があり、血圧は142/36 mmHg。考える弁膜症は?★★★
大動脈弁閉鎖不全症
拡張期に大動脈から左室へ血が戻り、拡張期血圧が下がって脈圧が大きくなる。脈は速脈・大脈。
- Q10
ARの雑音の種類と最強点は?★★★必修
拡張期の灌水様雑音。胸骨左縁第3肋間
全収縮期雑音ではない。拡張期の輪転様雑音(ランブル)は僧帽弁狭窄症。
- Q11
ARの拡張期雑音を聴きやすくする姿勢は?★★★必修
坐位で前かがみになり、息を吐いて止める
心基部が胸壁に近づく。左側臥位で聴きやすいのは、心尖部の音(Ⅲ音・僧帽弁の雑音)。
- Q12
ASを疑った。まず行う検査は?★★★必修
心エコー(経胸壁)
弁の石灰化と開き方、弁を通る血流の速さ、左室の厚さと動きが分かる。Holter心電図・胸部CT・運動負荷心電図を先にしない。
- Q13
心エコーで、重症のASと判断する目安は?(3つ)★★★
弁口面積1.0 cm2未満・最大血流速度4 m/秒以上・平均圧較差40 mmHg以上
連続波ドプラで、弁を通る血流の速さを測る。弁口が狭いほど速くなる。
- Q14
症状のある重症ASの治療は?★★★
大動脈弁置換術(外科手術か、カテーテルで入れるTAVI)
左室駆出率が下がっていれば、なおさら急ぐ。利尿薬・降圧薬・強心薬では狭窄は治らない。高齢の人や手術の危険が高い人ではTAVIを考え、チームで選ぶ。
- Q15
ASの治療方針を決めるのに使う情報は?(4つ)★★★必修
自覚症状・併存疾患・心エコー・心臓カテーテル検査
外科手術かTAVIかも、年齢と併存疾患による手術の危険で決める。治療の前に冠動脈造影で冠動脈の狭窄も確かめる。MIBG心筋シンチは使わない。
- Q16
ARが進むと出てくる所見は?(2つ)★★★
心尖拍動の左下方への移動(左室の拡大)・狭心痛
拡張期血圧が下がって冠動脈の血流が減り、厚く広がった左室は酸素を多く使う。脈圧はさらに大きくなる。
- Q17
ARで、逆流の程度と左室の大きさ・収縮を見る検査は?★★★
心エコー(カラードプラ)
手術の前には心臓カテーテル(大動脈造影で逆流、冠動脈造影で狭窄)も行う。Holter心電図や心筋シンチでは分からない。
- Q18
症状のある高度のARの治療は?★★★
大動脈弁置換術
症状がなくても、左室の収縮が落ちたり大きく広がったりしたら手術を考える。TAVIは主にASの治療。
- Q19
機械弁で弁置換をした人が、生涯飲み続ける薬は?★★★
ワルファリン
人工の弁につく血栓を防ぐ。PT-INRを見て量を合わせる。生体弁なら、術後しばらくで要らなくなる。
- Q20
生体弁が機械弁より劣る点は?★★★
耐久性(10〜20年で傷み、再手術が要ることがある)
毎年の交換が要るわけではない。若い人ほど早く傷む。
- Q21
大動脈弁置換で、まず生体弁を考えるのはどんな人?★★★
高齢者(おおむね65歳以上)
ワルファリンを続けずにすみ、残りの年数なら弁の傷みも問題になりにくい。若い人には、長もちする機械弁が多い。
- Q22
ARで、爪を軽く押すと見える毛細血管の拍動は?★★★
Quincke徴候
脈圧が大きいための所見で、ARが重いほどはっきりする。ASでは見られない。
- Q23
ARで、拡張期雑音に収縮期の駆出性雑音が加わった往復する雑音は?★★★
to and fro murmur(往復雑音)
戻ってきた分も押し出すので、収縮期に弁を通る血が増えて雑音が出る。
選択肢の○×
起こり方
- 1
重いASでは、血管が広がって血圧が下がると、心筋虚血を起こしやすい。104B31
心拍出量を増やせないので、血圧が下がると冠動脈の血流が減る。血管拡張薬は少量から慎重に使う。