末梢血管疾患
間欠性跛行の見かたから、急性動脈閉塞・静脈瘤・リンパ浮腫まで
22問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 喫煙・糖尿病のある高齢者が歩くと足が痛み、立ち止まると治まる(間欠性跛行)なら閉塞性動脈硬化症。ABIが0.9以下で確かめる。
- 治療は禁煙・運動療法・抗血小板薬。足は冷やさず、傷をつくらない。安静時痛・潰瘍があれば血行再建。
- 心房細動の人に、突然の手足の痛み・蒼白・脈が触れないなら急性動脈閉塞。すぐヘパリンを始め、血栓を取る。
閉塞性動脈硬化症:症状と見分け
足の動脈が動脈硬化で細くなり、詰まる(末梢動脈疾患の大部分)。喫煙・糖尿病・高血圧・脂質異常症のある高齢男性に多く、透析の患者にも多い。我が国では増えている。症状は進み方で4段階に分ける(Fontaine分類)。
| Ⅰ度 | 冷感・しびれ |
|---|---|
| Ⅱ度 | 間欠性跛行:一定の距離を歩くと足が痛み、立ち止まって数分休むと治まり、また歩ける |
| Ⅲ度 | 安静時痛 |
| Ⅳ度 | 潰瘍・壊死。小さな傷や靴ずれが治らない |
Ⅲ・Ⅳ度は包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)(以前の重症下肢虚血)。足を失う危険が高い。
- 痛むのは、詰まった所より先の筋肉。病変は浅大腿動脈に最も多く、ふくらはぎが痛む。腸骨動脈なら、殿部・太ももも痛む。
- 脈は大腿・膝窩・足背・後脛骨で触れる。膝窩動脈が触れなければ、そこか、それより上が詰まっている。
- 痛み・冷感・しびれ・筋力低下は出るが、腱反射は亢進しない。
- 冠動脈疾患・脳血管疾患を合併しやすい(全身の動脈硬化)。
- 神経性の間欠性跛行(腰部脊柱管狭窄症)は、前かがみになる・座ると治まり、立ち止まるだけでは治まらない。
- 若い喫煙男性で、下腿・足の細い動脈が詰まるのはBuerger病(閉塞性血栓血管炎)。皮膚の静脈に沿って赤く腫れる(遊走性静脈炎)。大動脈瘤はつくらない。
検査:ABIから画像へ
- ① 脈を触れる大腿・膝窩・足背・後脛骨
- ② ABI0.9以下で診断
- ③ 超音波・CT・MRI詰まった場所と長さ
- ④ 血管造影血管内治療と一緒に
- ABI = 足関節の収縮期血圧 ÷ 上腕の収縮期血圧。上腕は、左右の高いほうで割る。
- 0.9以下で閉塞性動脈硬化症(正常は1.0〜1.4)。0.4未満は、安静時痛や潰瘍が出るほどの重い虚血のことが多い。
- 透析の患者に、ガドリニウム造影MRIは使わない(腎性全身性線維症)。
画像で出たら 造影CT・血管造影で、動脈が途中で途切れるか細くなり、そのまわりを細い側副血行が回り込む。左右を比べて、映らない側を探す。
治療と生活指導
| 生活 | 禁煙(いちばん大事)・減量。足を清潔にし、傷をつくらない(フットケア)。冷やさず保温する |
|---|---|
| 運動療法 | 監視下の歩行運動。痛みが出るまで歩いて休む、をくり返す。側副血行が育ち、歩ける距離が延びる。安静にはしない |
| 薬 | 抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル・シロスタゾール)とスタチン。ワルファリン(抗凝固薬)ではない |
| 血行再建 | 運動と薬で良くならない跛行や、CLTIに。血管内治療(バルーン・ステント)・バイパス術 |
| CLTI | 血行再建を急ぐ。プロスタグランジン製剤も使う。壊死や感染が広がれば切断 |
- シロスタゾールは、抗凝固薬と一緒に使うと出血しやすい(抗血小板作用と血管拡張作用をあわせもつ)。
- β遮断薬は、足の血流を増やさない。
- 慢性の閉塞に、バルーンカテーテルでの血栓除去は行わない(それは急性動脈閉塞の治療)。
- 弾性ストッキングで脚を締めつけない(動脈の血流がさらに減る)。
- Buerger病も禁煙が第一。抗血小板薬・血管拡張薬を使い、ステロイドは使わない。
急性動脈閉塞症
手足の動脈が突然詰まる。多くは心房細動で左房にできた血栓が飛ぶ塞栓症(僧帽弁狭窄症も原因)。腕にも起こる。もとからある動脈硬化の上に、血栓ができて詰まることもある。
| 症状(5P) | 突然の痛み・蒼白・脈が触れない・しびれ・動かしにくい(麻痺)。冷たい。腫れはない |
|---|---|
| 治療 | すぐヘパリンを始め、カテーテルで血栓を取る(Fogartyカテーテル・血栓回収)か溶かして、早く血流を戻す。心房細動には、そのあと抗凝固薬を続ける |
| 血流が戻った後 | 壊れた筋肉の中身が全身に流れる:高K血症・CK上昇・代謝性アシドーシス・ミオグロビン尿(急性腎障害)・患肢の腫れ(コンパートメント症候群) |
- しびれがあっても、蒼白で脈が触れなければ、神経ではなく血管の病気と考える。
- 下大静脈フィルターは役に立たない(下肢の静脈の血栓が肺に飛ぶのを防ぐもの)。
下肢静脈瘤・リンパ浮腫
| 下肢静脈瘤 | リンパ浮腫 | |
|---|---|---|
| 起こり方 | 静脈の弁が壊れ、血が逆流してたまる。立ち仕事・妊娠出産のあと、女性に多い | 癌の手術でリンパ節を郭清した後・放射線治療の後。子宮・卵巣の癌なら下肢、乳癌なら上肢 |
| 見た目 | 皮膚の静脈がふくれて曲がりくねる。夕方のだるさ・むくみ。長く続くと色素沈着・うっ滞性皮膚炎・潰瘍(くるぶしの内側) | ゆっくり進む片側のむくみ。足の甲・指まで。長く続くと皮膚が硬くなり、押しても圧痕が残りにくい |
| 治療 | 弾性ストッキング・下肢挙上。逆流する静脈を閉じる血管内焼灼術・抜去術(ストリッピング)・硬化療法。抗凝固薬は使わない | 弾性着衣・弾性包帯での圧迫に、用手的リンパドレナージ・運動・スキンケアを組み合わせる。温めない |
- 脚を挙げて静脈をへこませ、太ももの付け根をしばって立たせると、静脈瘤がふくらまない:大伏在静脈の根もとの弁が壊れている(Trendelenburg試験)。
似た病気との見分け
歩くと足が痛むとき
| 腰部脊柱管狭窄症 | 前かがみ・座ると楽になり、自転車なら長くこげる。足背動脈は触れ、ABIは正常。腰椎MRIで確かめる |
|---|---|
| 糖尿病の神経障害 | 両足の先から左右対称のしびれ。歩かなくても続く。足背動脈は触れ、アキレス腱反射・振動覚が落ちる |
手足の色が変わる・むくむとき
| 深部静脈血栓症 | 片側の下肢全体が急に腫れて痛む。赤紫色で、脈は触れる(冷たく白くはならない) |
|---|---|
| コレステロール塞栓症 | カテーテル検査・治療の後。足趾が紫色になり(blue toe)、網状皮斑・好酸球増多・腎障害。足の脈は触れる |
| 甲状腺機能低下症 | 両側・全身のむくみで、押しても圧痕が残らない(粘液水腫) |
| ネフローゼ症候群 | 両側の下腿とまぶたのむくみ。圧痕が残る。尿蛋白が多い |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
喫煙・糖尿病のある高齢男性。歩くと足が痛み、立ち止まると数分で治まって、また歩ける。この症状と、考える病気は?★★★必修
間欠性跛行・閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)
足の動脈が動脈硬化で細くなり、詰まる。高血圧・脂質異常症・透析の患者にも多く、我が国では増えている。
- Q2
閉塞性動脈硬化症で、最も病変が多い動脈と、そのとき痛む場所は?★★★
浅大腿動脈・ふくらはぎ
痛むのは、詰まった所より先の筋肉。腸骨動脈の病変なら、殿部・太ももも痛む。
- Q3
閉塞性動脈硬化症が進み、安静にしていても足が痛む、潰瘍や壊死ができた。この状態を何という?★★★必修
包括的高度慢性下肢虚血(CLTI。以前の重症下肢虚血)
Fontaine分類のⅢ度(安静時痛)とⅣ度(潰瘍・壊死)。足を失う危険が高く、血行再建を急ぐ。
- Q4
閉塞性動脈硬化症の患者に合併しやすく、あわせて調べる病気は?(2つ)★★★必修
冠動脈疾患・脳血管疾患
同じ動脈硬化が全身に起こる。反対に、狭心症の患者では頸部・腹部の血管雑音を聴き、足背動脈を触れる。
- Q5
間欠性跛行で、血管性(閉塞性動脈硬化症)と神経性(腰部脊柱管狭窄症)を見分ける手がかりは?★★★必修
治まり方(神経性は、前かがみになる・座ると治まり、立ち止まるだけでは治まらない)
神経性では足背動脈が触れ、ABIは正常。確かめるのは腰椎MRI。
- Q6
若い喫煙男性。下腿や足の細い動脈が詰まり、間欠性跛行から安静時痛になった。考える病気は?★★★
Buerger病(閉塞性血栓血管炎)
手足の末梢の中小の動脈が詰まり、皮膚の静脈に沿って赤く腫れる(遊走性静脈炎)。高齢者の閉塞性動脈硬化症と違い、大動脈瘤はつくらない。
- Q7
間欠性跛行の患者。閉塞性動脈硬化症を確かめるために、まず測るものは?★★★
足関節上腕血圧比(ABI)
両腕と両足首の収縮期血圧を測る。体に負担がなく、外来ですぐできる。0.9以下で閉塞性動脈硬化症(正常は1.0〜1.4)。
- Q8
上腕の収縮期血圧が右156・左158、足関節が右110・左48。左のABIは?★★★必修
約0.30(48÷158)
足関節の血圧を、左右の上腕のうち高いほうで割る。0.4未満は、安静時痛や潰瘍が出るほどの重い虚血のことが多い。右は約0.70で、間欠性跛行の程度。
- Q9
閉塞性動脈硬化症の生活指導で、最も大事なことは?★★★必修
禁煙
喫煙は動脈硬化を最も強く進める。減量し、糖尿病・高血圧・脂質異常症も治療する。
- Q10
間欠性跛行の治療で、薬と並ぶ基本は?★★★
運動療法(監視下の歩行運動)
痛みが出るまで歩いて休む、をくり返す。側副血行が育ち、歩ける距離が延びる。安静にはしない。糖尿病の患者にも勧めてよい。
- Q11
血流の悪い足に、小さな傷や靴ずれができた。どうなりやすい?★★★必修
治りにくく、潰瘍・壊疽になる
毎日足を見て、清潔に保ち、合う靴をはく(フットケア)。
- Q12
抗血小板作用と血管拡張作用をあわせもち、間欠性跛行に使う薬は?★★★必修
シロスタゾール
抗凝固薬(心房細動のワルファリン・DOACなど)を飲んでいる人に加えると、出血しやすくなる。心不全の人には使わない。
- Q13
運動と薬で良くならない間欠性跛行や、CLTIで行う治療は?★★★
血行再建(血管内治療・バイパス術)
血管内治療は、バルーンで広げてステントを置く(腸骨動脈・浅大腿動脈の病変など)。バイパス術は、詰まった所を人工血管や自分の静脈で迂回する。
- Q14
心房細動の高齢者に、突然、片側の手足の痛みとしびれ。蒼白で冷たく、脈が触れない。考える病気は?★★★必修
急性動脈閉塞症(塞栓症)
左房にできた血栓が飛んで詰まる。痛み・蒼白・脈拍消失・知覚異常・運動麻痺(5P)。しびれがあっても、神経の病気ではない。
- Q15
急性動脈閉塞で、血流を戻す治療は?★★★必修
血栓除去術(Fogartyカテーテル・血栓回収術)・カテーテルからの血栓溶解
診断したらすぐヘパリンを始め、早く血流を戻す。時間がたつほど筋肉が壊死する。心房細動による塞栓なら、そのあと抗凝固薬(DOACなど)を続ける。
- Q16
急性動脈閉塞で血流が戻った後、壊れた筋肉から出たもので起こる、血液と尿の変化は?★★★必修
高K血症・CK上昇・代謝性アシドーシス・ミオグロビン尿
筋腎代謝症候群(再灌流障害)。高K血症で不整脈、ミオグロビンで急性腎障害を起こす。患肢が腫れ、強ければコンパートメント症候群。尿が濃くなるのは、ビリルビンではなくミオグロビンのため。
- Q17
立ち仕事や出産のあとの女性。下腿の皮膚の静脈がふくれて曲がりくねる。考える病気は?★★★必修
下肢静脈瘤
静脈の弁が壊れ、血が逆流してたまる。多くは大伏在静脈。夕方に足がだるく、むくむ。
- Q18
下肢静脈瘤が長く続くと、下腿の皮膚に出る変化は?(3つ)★★★必修
色素沈着・うっ滞性皮膚炎(湿疹)・潰瘍
うっ血のため。くるぶしの内側のまわりに出やすい。むくみも出る。
- Q19
子宮・卵巣の癌や乳癌の手術でリンパ節を郭清した後、片側の手足がゆっくりむくむ。考える病気は?★★★
リンパ浮腫(続発性)
足の甲・指までむくむ。長く続くと皮膚が硬くなり、押しても圧痕が残りにくい。蜂窩織炎を起こしやすい。
- Q20
リンパ浮腫の治療の中心は?★★★
弾性着衣・弾性包帯による圧迫
用手的リンパドレナージ・圧迫したままの運動・スキンケアを組み合わせる。温めると、むくみが強くなる。
- Q21
CLTIで、血行再建とあわせて使う、血管を広げて血小板を抑える点滴の薬は?★★★
プロスタグランジン製剤
安静時痛や潰瘍に使う。壊死や感染が広がった所は切断する。
選択肢の○×
症状
- 1
膝窩動脈の拍動が触れなくても、膝までの血流は保たれている。117E40
膝窩動脈が触れないのは、そこか、それより上の動脈が詰まっているから。大腿・膝窩・足背・後脛骨の順に触れて、詰まった高さを推し量る。
治療
急性動脈閉塞
- 5
心房細動による下肢の動脈塞栓では、下大静脈フィルターを置く。119D57
フィルターは、下肢の静脈の血栓が肺に飛ぶのを防ぐもの。動脈の塞栓は左心から来るので、役に立たない。
静脈瘤・リンパ浮腫
- 6
下肢静脈瘤には、抗凝固薬を使う。103D53
静脈瘤の治療にはならない。弾性ストッキング・下肢挙上と、逆流する静脈を閉じる治療(血管内焼灼術・抜去術・硬化療法)。
症状
- 7
閉塞性動脈硬化症の間欠性跛行では、腱反射が亢進する。104E22
腱反射は変わらない。痛み・冷感・しびれ・筋力低下は出る。亢進するのは、脳・脊髄の錐体路の障害。
治療
- 8
CLTIでは、β遮断薬で足の血流を増やす。119A64
β遮断薬に、足の血流を増やす働きはない。血行再建とプロスタグランジン製剤で治療する。 - 9
慢性の閉塞性動脈硬化症には、バルーンカテーテルで血栓を取り除く治療を行う。109A34
血栓除去は、急に詰まった急性動脈閉塞の治療。慢性の狭窄・閉塞には、バルーンで広げてステントを置く血管内治療か、バイパス術。 - 10
閉塞性動脈硬化症の脚は、弾性ストッキングで締めつけるとよい。102E66
締めつけると、動脈の血流がさらに減る。弾性ストッキングは静脈瘤・リンパ浮腫・DVTの予防に使い、はく前に足の動脈の血流を確かめる。 - 11
Buerger病の治療には、副腎皮質ステロイドを使う。101G24
効かない。何よりも禁煙。抗血小板薬・血管拡張薬を使う。