大動脈解離
突然の胸背部痛から、A型・B型の見分けと治療まで
29問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 突然の激しい胸背部痛が背中から腰・頸へ移る。腕の血圧に左右差や拡張期雑音があれば大動脈解離。確定と方針は胸腹部の造影CT。
- 上行大動脈に解離があればStanford A型で緊急手術。なければB型で、まず降圧。
- IABP・血栓溶解薬・抗血小板薬は使わない。ショックで頸静脈怒張・心音の減弱があれば、心エコーで心タンポナーデを確かめる。
起こり方と分類
大動脈の内膜に裂け目ができ、血液が中膜の中に流れこんで、壁が内と外の2層に裂けていく。もとの通り道が真腔、裂けてできた通り道が偽腔。多くは高血圧の人に起こる(治療していない、薬を飲み忘れる)。若い人ではMarfan症候群を考える。
| 型 | 解離の範囲 | 治療 |
|---|---|---|
| Stanford A型 | 上行大動脈に解離がある(裂け目の場所は問わない) | 緊急手術 |
| Stanford B型 | 上行大動脈に解離がない(下行大動脈から先だけ) | 降圧の内科治療 |
- A型が危ないのは、上行大動脈のすぐそばに大動脈弁・冠動脈・心膜があるから(→合併症)。
症状と身体所見
| 痛み | 突然の激しい胸背部痛。起こった瞬間が最も強い(だんだん強くなる痛みは解離らしくない)。背中から腰へ、頸へと痛む場所が移る。体の向き・呼吸・押すことでは変わらず、安静でも治まらない |
|---|---|
| 血圧 | 上肢の血圧に左右差(解離が鎖骨下動脈に及ぶ)。左右差がなくても否定できない |
| 痛みが目立たない | 痛みが軽くなっても否定できない。痛みより失神・片麻痺で来ることがある。高齢者では疲労感や肩の痛みだけのことも |
合併症:どこまで裂けたかで決まる
| 裂けた所 | 起こること | 手がかり |
|---|---|---|
| 大動脈弁の付け根 | 大動脈弁閉鎖不全 | 胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音。急に起こると肺水腫・ショック |
| 心膜の中へ破裂 | 心タンポナーデ | 血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱、低電位。急死の主な原因 |
| 冠動脈 | 心筋梗塞(多くは右冠動脈) | Ⅱ・Ⅲ・aVFのST上昇(下壁梗塞) |
| 頸動脈 | 脳虚血 | 片麻痺・意識障害、視野障害。しばらくして治まることもある |
| 腎動脈・腸間膜動脈 | 腎不全・腸管の虚血 | 乏尿、腹痛 |
| 腸骨動脈 | 下肢の虚血 | 下肢の脈が触れにくい |
| 肋間動脈 | 脊髄の虚血 | 対麻痺 |
- 大動脈弁閉鎖不全・心タンポナーデ・冠動脈の閉塞は、上行大動脈が裂けるA型で起こる。B型では起こらない(B型は腹部の枝・下肢の虚血と、破裂による血胸に注意)。
- 僧帽弁閉鎖不全(心尖部の全収縮期雑音)は起こさない。
- 破裂しても緊張性気胸にはならない(たまるのは血液)。
検査
- ① 両腕の血圧左右差
- ② 心電図下壁のST上昇に注意
- ③ 心エコー大動脈弁の逆流・心嚢液
- ④ 胸腹部造影CT確定・A型かB型か
- 胸腹部の造影CTで確定し、方針を決める。内膜のフラップで内腔が真腔と偽腔の2つに分かれる。上行大動脈に及ぶか、枝の血流、心嚢液まで一度に分かる。片麻痺で来ても、背部痛や血圧の左右差があれば胸腹部まで撮る。
- ショック・頸静脈怒張・心音の減弱なら、CT室へ動かす前にベッドサイドの心エコーで心タンポナーデを見る。
- 心電図に異常がなくても否定できない。下壁のST上昇は、解離が右冠動脈に及んだためのことがある。
- しない:先に冠動脈造影(心臓カテーテル検査)、運動負荷心電図・心筋シンチ。
- 心筋トロポニン・Dダイマーでは、解離の範囲も治療方針も決まらない(Dダイマーは解離でも上がる)。
画像で出たら 造影CTでは、大動脈の中を横切る薄い膜(フラップ)で内腔が2つに分かれる。偽腔が血栓で閉じていると、壁が三日月状に厚く見える。単純CTでは、内膜の石灰化が内側にずれる。胸部X線では上縦隔が広がる。
治療
| まず全員 | 降圧と鎮痛、安静。β遮断薬で脈を遅くし、Ca拮抗薬などの静注で血圧を下げる(収縮期100〜120 mmHgが目安)。痛みはモルヒネなどで抑える |
|---|---|
| A型 | 緊急手術(上行大動脈の人工血管置換術)。痛みが治まり血圧が落ち着いていても、待たない。ショックなら降圧薬は使わず、すぐ手術 |
| B型 | 合併症がなければ降圧の内科治療。破裂や、臓器・下肢の虚血があればステントグラフト内挿術(TEVAR) |
- IABPは使わない(禁忌)。拡張期に大動脈の圧を上げ、解離を広げ、大動脈弁の逆流も増やす。
- 血栓溶解薬・抗血小板薬は使わない(裂けた壁からの出血が広がる)。脳梗塞・心筋梗塞に見えても、解離を否定してから。
- 心タンポナーデがあっても、手術の前に心嚢ドレナージで一気に抜かない。血圧が戻ると、さらに出血する。
似た病気との見分け
| 急性冠症候群 | 締めつけ感が続き、冷汗を伴う。ST変化・トロポニンの上昇・責任血管の領域の壁運動低下。解離が右冠動脈に及ぶと、両方が同時に起こる |
|---|---|
| 肺血栓塞栓症 | 術後・臥床のあとの突然の呼吸困難。低酸素なのに呼吸音と胸部X線は正常 |
| 急性心膜炎 | 吸気・仰臥位で強まり、前かがみで楽になる。広い範囲の誘導でST上昇 |
| 高安動脈炎 | 若い女性。微熱と炎症反応が続き、上肢の血圧の左右差・頸部の血管雑音・大動脈弁閉鎖不全がゆっくり進む |
| 緊張性気胸 | 片側の呼吸音の消失と気管の偏位。頸静脈怒張・ショック |
| 脊椎の病気 | 圧迫骨折は軽い外傷のあと、叩くと痛む。化膿性脊椎炎は発熱が先にある。転移性脊椎腫瘍も安静で治まらない |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
大動脈解離の人に最も多い基礎疾患は?★★★必修
高血圧
治療していない人や、降圧薬を飲み忘れる人に多い。若い人ではMarfan症候群を考える。
- Q2
Stanford分類で、A型とB型を分けるのは、どこに解離があるか?★★★
上行大動脈(あればA型、なければB型)
裂け目がどこにあっても、上行大動脈に及べばA型。A型は緊急手術、B型はまず降圧。
- Q3
突然の激しい胸背部痛が、背中から腰や頸へと移っていく。考える病気は?★★★必修
大動脈解離
解離が大動脈に沿って広がるので、痛む場所も移る。
- Q4
大動脈解離の痛みが最も強いのはいつ?★★★必修
起こった瞬間(突然に始まる)
壁が一気に裂けるため。だんだん強くなる痛みは解離らしくない。
- Q5
大動脈解離を疑ったとき、両腕で比べる所見は?★★★必修
血圧(左右差)
解離が鎖骨下動脈に及ぶと、片方の腕の血流が減る。脈の触れ方にも差が出る。
- Q6
A型解離で聴こえる心雑音は?★★★必修
胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音(大動脈弁閉鎖不全)
大動脈弁の付け根まで裂けて、弁が閉じなくなる。急に起こると肺水腫やショックになる。
- Q7
A型解離が心嚢の中へ破裂すると起こるのは?★★★
心タンポナーデ
血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱(Beckの3徴)、心電図は低電位。急死の主な原因になる。
- Q8
解離が冠動脈に及んだ。巻きこまれやすい冠動脈と、心電図の所見は?★★★
右冠動脈。Ⅱ・Ⅲ・aVFのST上昇(下壁梗塞)
下壁梗塞に見えても、背部痛・血圧の左右差・拡張期雑音があれば解離を先に考える。
- Q9
解離が頸動脈に及ぶと起こる症状は?★★★必修
片麻痺・意識障害(脳虚血)
しばらくして治まることもある。胸背部痛のあとの片麻痺は、脳梗塞と決めつけない。
- Q10
解離が腹部の枝や腸骨動脈に及ぶと起こるものは?(3つ)★★★
腎不全(乏尿)・腸管の虚血・下肢の虚血
B型でも起こる。下肢の脈の触れ方も確かめる。
- Q11
大動脈解離を疑う。確定し、治療方針を決める検査は?★★★必修
胸腹部の造影CT
上行大動脈に及ぶか(A型かB型か)、偽腔、枝の血流、心嚢液が一度に分かる。片麻痺で来た人でも胸腹部まで撮る。
- Q12
造影CTで、大動脈解離を示す所見は?★★★必修
内膜のフラップ(真腔と偽腔の2つの腔)
大動脈の中を横切る薄い膜として見える。
- Q13
胸背部痛でショック。頸静脈が怒張し、心音が弱い。まず行う検査は?★★★必修
心エコー(心嚢液を見る)
CT室へ動かす前に、ベッドサイドで心タンポナーデを確かめる。大動脈弁の逆流や上行大動脈のフラップも見える。
- Q14
どの型でも、まず始める治療は?★★★
降圧と鎮痛(β遮断薬・Ca拮抗薬の静注、モルヒネ)
血圧と脈を下げて、解離が広がるのを防ぐ。収縮期100〜120 mmHgが目安。痛みも血圧を上げる。
- Q15
Stanford A型解離の治療は?★★★必修
緊急手術(上行大動脈の人工血管置換術)
心タンポナーデ・大動脈弁閉鎖不全・冠動脈の閉塞で、急に悪くなるため。
- Q16
合併症のないB型解離の治療は?★★★必修
降圧・安静の内科治療
すぐには手術しない。血圧と痛みを抑え、CTで経過をみる。
- Q17
肋間動脈の血流が途絶え、脊髄が虚血になると起こる症状は?★★★
対麻痺
両下肢が動かなくなる。腹部の枝の虚血と同じく、B型でも起こる。
- Q18
B型解離で、破裂や腸管・下肢の虚血を起こした。選ぶ治療は?★★★
ステントグラフト内挿術(TEVAR)
血管の中から裂け目をふさぎ、真腔の血流を戻す。上行大動脈に及ぶA型は、開胸して人工血管に置き換える。
選択肢の○×
症状
合併症
検査
治療
- 8上行大動脈が裂けていると、急に心タンポナーデ・大動脈弁閉鎖不全・冠動脈の閉塞を起こす。原則として緊急手術。
- 9血圧が低いときに降圧薬は使えない。すぐ手術へ。
- 10
大動脈解離で血圧が下がったら、IABPで循環を補助する。禁忌103I76105H36107A54112A67114B32118B46
IABPは拡張期に大動脈の圧を上げ、解離を広げ、大動脈弁の逆流も増やす。大動脈解離と、中等度以上の大動脈弁閉鎖不全には使わない。 - 11裂けた壁からの出血が広がる。脳梗塞や心筋梗塞に見えても、解離を否定してから使う。
- 12一気に抜くと血圧が戻り、破れた所からさらに出血する。緊急手術を優先する(手術までもたないときだけ、少しずつ抜く)。