心筋症
肥大型・拡張型の見分けから、治療・心臓移植まで
27問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 運動中の失神・突然死の家族歴・Ⅳ音と収縮期駆出性雑音なら肥大型心筋症。心エコーで非対称性中隔肥厚と僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)を見る。
- 肥大型はβ遮断薬が基本。硝酸薬・ジギタリスは使わない(出口の閉塞が強まる)。雑音は左室が小さくなると大きくなる(Valsalva・立位)。
- 心拡大・Ⅲ音・左室の拡大とびまん性の収縮低下なら拡張型心筋症。β遮断薬とACE阻害薬(ARB)で予後を良くする。重ければ心臓移植(原疾患で最も多い)。
肥大型心筋症:見つけ方
左室の壁が厚くなり、収縮は保たれるが、硬くて広がりにくい(左室拡張末期圧↑)。家族に同じ病気が多く、多くは常染色体顕性遺伝(サルコメア蛋白の遺伝子異常)。病理は心筋細胞の錯綜配列。厚い中隔が左室の出口(流出路)をふさぐものを閉塞性という。
| きっかけ | 健診での心電図異常(左室高電位・陰性T波)。若い血縁者の突然死 |
|---|---|
| 症状 | 運動中の失神・気が遠くなる感じ、労作時の息切れ・胸部圧迫感。若い人の突然死の原因になる |
| 聴診 | Ⅳ音。閉塞性では胸骨左縁第3〜4肋間の収縮期駆出性雑音 |
| 心エコー | 診断に最も役立つ。非対称性中隔肥厚(中隔が後壁よりずっと厚い)。閉塞性では僧帽弁の収縮期前方運動(SAM) |
| そのほか | Holter心電図で不整脈(非持続性心室頻拍など)を探す。心臓MRIの遅延造影は心筋の線維化を示す |
- 年月がたって壁が薄くなり、左室が広がって収縮も落ちたものを拡張相肥大型心筋症という(心臓移植の適応になる)。
画像で出たら 心エコーの傍胸骨長軸像で、中隔が後壁よりずっと厚い。僧帽弁のMモードで、収縮期に前尖が中隔の方へ盛り上がる(SAM)。
肥大型心筋症:雑音の変化と治療
閉塞性の雑音は、左室が小さくなるほど、また収縮が強いほど大きくなる(出口がさらに狭まる)。大動脈弁狭窄症の雑音はValsalvaで小さくなるので、見分けに使える。
| 雑音が大きくなる | 雑音が小さくなる |
|---|---|
| Valsalva手技(いきむ)・立位・硝酸薬・頻脈 | しゃがむ(蹲踞)・ジソピラミド・β遮断薬 |
治療
| 使う薬 | β遮断薬が基本(収縮を弱め、心拍数を下げて左室に血がたまる時間をのばす)。合わなければベラパミル。閉塞性にはジソピラミド(シベンゾリン)も |
|---|---|
| 使わない | 硝酸薬・ジギタリス(どちらも閉塞を強める)。β刺激薬などの強心薬。うっ血がなければ利尿薬も使わない(脱水で閉塞が強まる) |
| 突然死の予防 | 危険が高ければ植込み型除細動器(ICD)。目安は突然死の家族歴・原因の分からない失神・非持続性心室頻拍・著しい壁の肥厚・心臓MRIの遅延造影 |
| 生活 | 激しい運動は控える(軽い運動はしてよい)。血縁者にも検査をすすめる |
拡張型心筋症
左室が大きく広がり、全体に収縮が落ちる(駆出率↓)。虚血・弁膜症・薬・アルコールなど原因のはっきりした心筋の障害(二次性)を除いて診断する。家族性のこともあり、若い家族の突然死や心臓病が手がかりになる。
| 症状・所見 | 労作時の息切れ(進むと起座呼吸・浮腫)。Ⅲ音。心拡大(心胸郭比↑、心尖拍動が左外側へ) |
|---|---|
| 心エコー | 左室の拡大と、びまん性の壁運動低下。広がった左室で僧帽弁が閉じきらず、僧帽弁閉鎖不全(心尖部の汎収縮期雑音) |
| 冠動脈造影 | 有意な狭窄がないことを確かめ、虚血性心筋症と見分ける |
| 心カテーテル | 肺動脈楔入圧↑・平均肺動脈圧↑(左心性の肺高血圧) |
- 心房細動や心室性不整脈を合併しやすく、突然死もある。
画像で出たら 心エコーで左室が丸く大きく、壁は薄く、どこもあまり動かない。胸部X線は心拡大と肺うっ血。
拡張型心筋症の治療と心臓移植
| 予後を良くする薬 | β遮断薬+ACE阻害薬(またはARB)。症状がなくても、左室の収縮が落ちていれば使う。いまはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬・SGLT2阻害薬も加え、ACE阻害薬の代わりにARNI(サクビトリルバルサルタン)も使う(くわしくは心不全で) |
|---|---|
| 予後を良くしない | α遮断薬・Ca拮抗薬(ベラパミル・ジルチアゼムは収縮を弱めて悪くする)。経口の強心薬(続けるとかえって悪くすることがある) |
| 心房細動 | 抗凝固薬を加える |
| 重症のとき | 突然死の予防にICD・僧帽弁の治療・補助人工心臓・心臓移植・緩和ケア(遺伝子治療はまだ行われていない) |
わが国の心臓移植
| 原疾患 | 拡張型心筋症が代表で、原疾患として最も多い。拡張相の肥大型・虚血性・拘束型心筋症も適応になる |
|---|---|
| 適応にならない | 薬物依存症(中毒)に伴う心筋症(アルコール依存も)。移植後の服薬と生活の管理が守れない |
| 待つ間 | 提供者が少なく待機は数年。多くは補助人工心臓をつけて待つ |
| 移植後 | 免疫抑制薬を生涯続ける。10年生存率はおよそ9割 |
たこつぼ・薬剤性・アルコール性
| たこつぼ心筋症 | 高齢女性が、身内の死などの強いストレスの後に胸痛・呼吸困難。ST上昇があり、急性冠症候群に似るが、冠動脈に狭窄がない。心尖部が動かず、基部はよく動く。多くは数週間で元に戻る |
|---|---|
| 薬剤性 | アントラサイクリン系抗癌薬(ドキソルビシンなど)。総投与量が多いほど起こりやすく、治療の数年後に出ることもある。悪性リンパ腫・肉腫などの治療歴を詳しく聞く。使う前と使っている間は、心エコーで心機能を見る |
| アルコール性 | 長年の大量飲酒で左室が広がり、収縮が落ちる。禁酒で回復が期待できる。害はお酒の種類ではなく量で決まる。大量の飲酒は高血圧・心房細動も起こす |
画像で出たら たこつぼ心筋症の左室造影:拡張期は普通の形で、収縮期には基部だけが縮み、心尖部は丸くふくらんだまま(たこつぼの形)。
似た病気との見分け
左室の壁が厚いとき(たこつぼ心筋症では厚くならない)
| 高血圧性心肥大 | 長く続く高血圧。壁は全体に厚くなる |
|---|---|
| 大動脈弁狭窄症 | 高齢者に多い。胸骨右縁第2肋間の駆出性雑音が頸部へ広がる |
| 心アミロイドーシス | 壁が厚いのに、心電図は低電位。手根管症候群を伴う高齢者 |
| Fabry病 | X連鎖遺伝。若い頃からの手足の痛み・汗が出ない・被角血管腫・蛋白尿 |
心筋症と紛らわしい心不全
| 急性心筋炎 | かぜ症状の数日後に、心不全・不整脈・ショック。トロポニンが上がり、冠動脈は正常 |
|---|---|
| 心サルコイドーシス | 房室ブロック、心室中隔の基部が薄い。ぶどう膜炎・両側肺門リンパ節腫脹。遺伝しない |
| 拘束型心筋症 | 壁は厚くなく収縮も保たれるのに、広がらない。両心房が大きい。収縮性心膜炎と同じくdip and plateauを示す |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
運動中に失神した若い人。突然死の家族歴があり、Ⅳ音と収縮期駆出性雑音を聴く。考える病気は?★★★必修
肥大型心筋症
運動で左室の出口の狭窄が強まるか、不整脈が出て、脳への血流が落ちる。若い人の突然死の原因として大事。
- Q2
肥大型心筋症の多くを占める遺伝形式は?★★★必修
常染色体顕性遺伝(サルコメア蛋白の遺伝子異常)
家族に同じ病気が多く、病歴で家族歴を聞くことが診断に役立つ。血縁者にも検査をすすめる。
- Q3
肥大型心筋症を疑った。心エコーで見る所見は?(2つ)★★★
非対称性中隔肥厚・僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)
中隔が後壁よりずっと厚い。収縮期に僧帽弁の前尖が中隔へ引き寄せられ、左室の出口がふさがる(閉塞性)。診断に最も役立つのは心エコー。
- Q4
肥大型心筋症で主に障害されるのは、左室の収縮と拡張のどちら?★★★
拡張(左室拡張末期圧が上がる)
壁が厚く硬いので広がりにくい。収縮は保たれ、駆出率はむしろ高い。Ⅳ音は、硬い左室に心房が血を押し込む音。
- Q5
肥大型心筋症の治療の基本になる薬は?★★★
β遮断薬
収縮を弱めて閉塞を和らげ、心拍数を下げて左室に血がたまる時間をのばす。β遮断薬が合わなければベラパミル(Ca拮抗薬)。
- Q6
突然死の危険が高い肥大型心筋症で、突然死を防ぐ治療は?★★★
植込み型除細動器(ICD)
目安は、突然死の家族歴、原因の分からない失神、非持続性心室頻拍、著しい壁の肥厚、心臓MRIの遅延造影。
- Q7
若い〜中年の人の労作時の息切れ。Ⅲ音と心拡大があり、心エコーで左室が大きく全体に動きが悪い。考える病気は?★★★
拡張型心筋症
左室が広がり、駆出率が下がる。家族性のこともあり、若い家族の突然死が手がかりになる。
- Q8
拡張型心筋症と虚血性心筋症を見分ける検査は?★★★必修
冠動脈造影
どちらも左室が広がり収縮が落ちる。冠動脈に有意な狭窄がなければ拡張型。心エコー・BNP・Holter心電図では分けられない。
- Q9
拡張型心筋症で、心尖部に汎収縮期雑音を聴く。何が起きている?★★★必修
僧帽弁閉鎖不全(広がった左室で弁が閉じきらない)
弁そのものは正常でも起こる(機能性)。重ければ弁の手術やカテーテル治療も考える。
- Q10
拡張型心筋症の予後を良くする薬は?(2種類)★★★必修
β遮断薬・ACE阻害薬(またはARB)
β遮断薬は少量から始めて増やす。いまはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬・SGLT2阻害薬も加え、ACE阻害薬の代わりにARNIも使う(くわしくは心不全で)。
- Q11
わが国の心臓移植で、最も多い原疾患は?★★★
拡張型心筋症
次いで拡張相の肥大型心筋症。虚血性心筋症・拘束型心筋症も適応になる。
- Q12
わが国で心臓移植を待つ人の多くが、移植までつけているものは?★★★
補助人工心臓
提供者が少なく、待機は数年に及ぶ。
- Q13
強いストレスの後に胸痛とST上昇。冠動脈に狭窄がなく、左室は心尖部が動かず基部がよく動く。考える病気は?★★★必修
たこつぼ心筋症
高齢女性に多い。左室造影で、収縮期に心尖部が丸くふくらむ(たこつぼの形)。多くは数週間で元に戻る。
- Q14
心筋障害を起こす抗癌薬で、総投与量が多いほど起こりやすいものは?★★★必修
アントラサイクリン系(ドキソルビシンなど)
治療から数年たって心不全が出ることもある。左室の収縮が落ちていたら、悪性リンパ腫・肉腫などの治療歴を詳しく聞く。使う前と使っている間は、心エコーで心機能を見る。
- Q15
左室の壁が厚い。肥大型心筋症のほかに見分ける病気は?(3つ)★★★
高血圧性心肥大・心アミロイドーシス・Fabry病
大動脈弁狭窄症でも厚くなる。たこつぼ心筋症では壁は厚くならない。
- Q16
肥大型心筋症の病理で特徴的な所見は?★★★
心筋細胞の錯綜配列
心筋細胞が向きをそろえず、入り乱れて並ぶ。線維化も伴う。
- Q17
拡張型心筋症の心不全。肺動脈楔入圧と平均肺動脈圧は?★★★
どちらも上がる
左房圧の上昇が、肺静脈から肺動脈へさかのぼる(左心性の肺高血圧)。dip and plateauは収縮性心膜炎・拘束型心筋症、左室と大動脈の圧較差は大動脈弁狭窄症・閉塞性肥大型心筋症。
- Q18
心房細動を合併した拡張型心筋症。β遮断薬・ACE阻害薬に加える薬は?★★★
抗凝固薬
心不全は脳塞栓の危険を高める。いまはDOACを使うことが多い(ワルファリンも使える)。
- Q19
心臓移植の適応にならない心筋症は?★★★
薬物依存症(中毒)に伴う心筋症
移植後の服薬と生活の管理が守れないおそれがある。アルコール依存によるものも同じ。
選択肢の○×
肥大型の治療
- 1いきむと静脈還流が減って左室が小さくなり、出口がさらに狭まる。立位・硝酸薬・頻脈でも大きくなり、しゃがむと小さくなる。大動脈弁狭窄症の雑音は、Valsalvaで小さくなる。
- 2小さくなる。収縮を弱めて出口の圧較差を下げる、閉塞性の治療薬。突然死の予防にはならない(それはICD)。
- 3
閉塞性肥大型心筋症の息切れや胸部圧迫感には、硝酸薬やジギタリスを使う。禁忌102D26106D33118D31105I21120D44
硝酸薬は前負荷を減らし、ジギタリスは収縮を強めて、どちらも出口の閉塞を強める。β刺激薬も同じ。うっ血がなければ利尿薬も使わない。 - 4運動中の突然死の危険がある。軽い運動まで禁じる必要はない。
治療・移植
その他の心筋症
- 7
飲酒による心臓への害を減らすには、お酒の種類を変えればよい。114E44
害はアルコールの量で決まる。大量の飲酒は高血圧・心房細動・心筋症を起こし、禁酒で心機能の回復が期待できる。