急性心筋炎
かぜの後の胸痛・心不全から、冠動脈の確認・心筋生検・劇症型まで
7問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- かぜ症状(発熱・咽頭痛)や悪心・腹痛の数日〜1週あとに、胸痛・呼吸困難・ショック。トロポニン・CKの上昇とST-T変化があれば急性心筋炎を考える。
- 冠動脈造影で狭窄がないことを確かめて、心筋梗塞と分ける。心エコーで左室の壁運動の低下(壁は浮腫で厚くなる)。確定は心筋生検。
- 心原性ショックや心室細動・完全房室ブロックになる劇症型は、PCPSなどの補助循環で循環を保ち、心筋の回復を待つ。
起こり方と症状
心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こり、心臓の動きが落ちたり、不整脈が出たりする病気。原因の多くはウイルス(コクサッキーB群などのエンテロウイルス・アデノウイルス・インフルエンザウイルスなど)。かぜ症状の数日〜1週ほどあとに、心臓の症状が出る。
| 前ぶれ | 発熱・咽頭痛などのかぜ症状。悪心・嘔吐・腹痛・食欲低下も多く、胃腸炎と思われて見逃されやすい |
|---|---|
| 心臓の症状 | 胸痛(胸部不快感)・呼吸困難。重いと血圧が下がってショックになり、心室細動で突然倒れることもある |
| 診察 | 頻脈・Ⅲ音(奔馬調律)・両肺のcrackles(肺うっ血)。頸静脈怒張・下腿浮腫。ショックでは四肢が冷たい |
検査:心筋梗塞と分ける
- ① 心電図・採血ST-T変化・トロポニン↑
- ② 心エコー壁運動の低下
- ③ 冠動脈造影狭窄がない
- ④ 心臓MRI・心筋生検炎症を確かめる
- 採血:心筋トロポニン・CK(CK-MB)の上昇(心筋が壊れている)。CRP・白血球の上昇(炎症)。BNPの上昇(心不全)。AST・LDも上がる。
- 心電図:ST-T変化(ST上昇・陰性T波。広い範囲の誘導に出ることが多い)。完全房室ブロックや心室頻拍・心室細動も出る。日ごとに変わるので、くり返しとる。
- 胸部X線:肺うっ血・心拡大。
- 心エコー:左室の壁運動が落ちる(左室全体に及ぶことが多い)。壁は浮腫で一時的に厚くなり、左室はあまり大きくならない。心膜液がたまることもある。
- 冠動脈造影:有意な狭窄がない。心筋梗塞でもST上昇・トロポニン上昇・壁運動の低下が出るので、冠動脈を見て分ける。
- 心臓MRI:心筋の浮腫と遅延造影。遅延造影は心外膜側〜壁の中層に出て、冠動脈の領域に一致しない。
- 心筋生検:確定診断。炎症細胞の浸潤と心筋細胞の壊死を見る。巨細胞性・好酸球性など、免疫抑制療法の要る型も分かる。
- 使わない:MIBG心筋シンチグラフィ(心臓の交感神経を見る検査)。
画像で出たら 心電図は、ST上昇や陰性T波が広い範囲の誘導に出る。心エコーでは左室全体の動きが悪く、壁がむくんで厚く見える。冠動脈造影は狭窄がなく、数週後の心エコーでは動きが戻っている。
治療・劇症型・経過
治療の基本は、安静と、心不全・不整脈の治療。ウイルスそのものに効く薬はなく、炎症がおさまるのを待つ。多くは数週で心臓の動きが戻る。初めは軽く見えても数時間〜数日で急に悪くなることがあるので、入院してモニターで見る。
| 劇症型 | 急に心原性ショックや、止まらない心室細動になる重い型。血行動態は心係数↓・肺動脈楔入圧↑(くわしくは心不全で) |
|---|---|
| 補助循環 | 薬で血圧が保てなければ、PCPS(VA-ECMO)・IABP・Impellaで循環を保ち、心筋の回復を待つ。戻らなければ補助人工心臓・心臓移植 |
| 房室ブロック | 完全房室ブロックには一時的ペーシング。炎症がおさまると戻ることが多い |
| 免疫抑制療法 | 心筋生検で巨細胞性・好酸球性と分かれば、ステロイドなどを使う |
- 一部は炎症が続き(慢性心筋炎)、拡張型心筋症のような、大きく動きの悪い心臓になる。
似た病気との見分け
かぜの後の胸痛・トロポニン上昇・心不全のとき
| 急性心筋梗塞 | ST上昇は1本の冠動脈の領域に収まり、反対側の誘導にST低下。冠動脈造影で閉塞や高度の狭窄が見つかる |
|---|---|
| たこつぼ心筋症 | 強い精神的・身体的ストレスのあと。高齢女性に多い。心尖部が動かず、基部はよく動く。冠動脈は正常 |
| 急性心膜炎 | 深く息を吸う・仰向けで強まり、前かがみで楽になる胸痛。心膜摩擦音。左室の動きはふつう保たれる |
| 拡張型心筋症 | 数か月〜年の単位で進む息切れ。左室が大きく、壁はびまん性に薄い |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
かぜ症状の数日〜1週あとに、胸痛・呼吸困難やショック。トロポニンとCKが上がり、冠動脈に狭窄がない。考える病気は?★★★必修
急性心筋炎(ウイルス性心筋炎)
心筋が炎症で傷み、心不全・不整脈・ショックを起こす。若い人や、ふだん元気な人にも起こる。
- Q2
急性心筋炎の前ぶれで、かぜ症状と並んで多く、胃腸炎と間違えられやすい症状は?★★★
悪心・嘔吐・腹痛・食欲低下(消化器症状)
胸の症状がなく、おなかの症状から始まることもある。かぜや胃腸炎のあとの息切れ・ふらつき・低血圧では、心電図とトロポニンを確かめる。
- Q3
急性心筋炎で多い心電図の変化は?★★★
ST-T変化(ST上昇・陰性T波)
広い範囲の誘導に出ることが多いが、心筋梗塞と見分けにくいこともある。日ごとに形が変わり、房室ブロックが後から出ることもあるので、くり返しとる。
- Q4
急性心筋炎で起こる、命に関わる不整脈は?(2つ)★★★必修
完全房室ブロック・心室細動(心室頻拍)
炎症が刺激伝導系や心室の筋に及ぶ。心室細動で突然倒れ、心肺停止で運ばれることもある。
- Q5
急性心筋炎の心エコーで見る、左室の動きの所見は?★★★必修
壁運動の低下(左室全体に及ぶことが多い)
1本の冠動脈の領域に限らないことが多い。劇症型では、左室がほとんど動かなくなる。
- Q6
かぜの後の胸痛で、トロポニン陽性・ST変化あり。急性心筋梗塞を否定するために行う検査は?★★★必修
冠動脈造影(有意な狭窄がない)
心筋炎でもST上昇・トロポニン上昇・壁運動の低下が出るので、冠動脈を見ないと分けられない。ショックや心停止で来ても、まず冠動脈を確かめる。
- Q7
急性心筋炎の確定診断に行う検査は?★★★必修
心筋生検(心内膜心筋生検)
カテーテルで心臓の内側から心筋を少し取り、炎症細胞の浸潤と心筋細胞の壊死を確かめる。巨細胞性・好酸球性など、ステロイドなどの免疫抑制療法が要る型も分かる。
- Q8
かぜの後に急に心原性ショックや心室細動になり、補助循環が必要になる心筋炎は?★★★必修
劇症型心筋炎
PCPS(VA-ECMO)・IABP・Impellaで循環を保ち、炎症がおさまって心臓の動きが戻るのを待つ。戻らなければ補助人工心臓・心臓移植を考える。
- Q9
急性心筋炎で、心筋の浮腫と炎症を、体を傷つけずに写す検査は?★★★
心臓MRI(T2強調像の高信号・遅延造影)
遅延造影は心外膜側〜壁の中層に出て、冠動脈の領域に一致しない。心筋梗塞の遅延造影は、内膜側から広がる。