感染性心内膜炎
続く発熱と心雑音から、血液培養・心エコー・治療まで
25問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 数週間つづく発熱に新しい心雑音があれば感染性心内膜炎。抜歯などの歯科治療のあとや、指先の痛む結節(Osler結節)・脳塞栓が手がかり。
- 抗菌薬を始める前に血液培養を複数セット、続けて心エコーで疣贅を探す。血液から黄色ブドウ球菌が出たら、心エコーでIEを探す。
- 合併症は脳塞栓・脳出血・心不全。治療は殺菌的な抗菌薬の点滴。抑えられない心不全・弁周囲膿瘍・塞栓のくり返しは手術。
起こり方と危険因子
感染性心内膜炎(IE)は、血液に入った菌が弁や心内膜に付いて増え、疣贅(菌と血栓のかたまり)をつくる。疣贅は弁を壊し(逆流・心不全)、はがれて全身の動脈に飛ぶ(塞栓)。菌が血液に入るきっかけと、菌が付きやすい心臓の2つで整理する。
| 菌が入るきっかけ | 抜歯などの歯科治療(扁桃摘出術など口の中の手術も)・血管内のカテーテル(透析・中心静脈ポート) |
|---|---|
| 菌が付きやすい心臓 | 弁膜症(僧帽弁・大動脈弁の逆流)・人工弁・手術していない心室中隔欠損症。速い血流が当たって傷んだ内膜に付く |
| 緑色連鎖球菌 | 口の中の常在菌。歯科治療のあと。ゆっくり(亜急性に)進む |
| 黄色ブドウ球菌 | 皮膚・カテーテルから入る。急に進み、短い期間で弁を壊す |
- 機械弁と生体弁で、IEの起こりやすさに大きな差はない。
症状と身体所見
数週間つづく発熱(解熱薬・かぜ薬で下がっては上がる)に、新しい逆流性の心雑音があればIEを考える。不明熱の代表。
| 心雑音 | 心尖部の全収縮期雑音(僧帽弁閉鎖不全)、胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音(大動脈弁閉鎖不全) |
|---|---|
| 指先・手足 | Osler結節:指先・足趾の腹にできる、痛む赤い結節。Janeway病変:手掌・足底の、痛まない小さな出血斑 |
| 眼 | 眼瞼結膜の点状出血、眼底のRoth斑(中心が白い網膜の出血。皮膚の所見ではない) |
| 血液 | 貧血、赤沈・CRPの上昇、γグロブリンの上昇 |
合併症
| 塞栓 | 最も注意するのは脳塞栓(突然の片麻痺・めまい・構音障害)。四肢の動脈に詰まると、急に痛み、白く冷たくなり、脈が触れない |
|---|---|
| 脳出血 | 脳梗塞だけでなく、脳出血も起こる。感染性脳動脈瘤(細菌が動脈の壁を壊してできる。頭部MRAで見つかる)の破裂や、梗塞が出血に変わる(出血性梗塞) |
| 心不全 | 弁が壊れて(弁穿孔など)逆流が急に強まり、心不全になる。息切れ・起座呼吸・肺うっ血。手術を考える最も多い理由 |
| 弁周囲膿瘍 | 菌が弁輪の周りに広がって膿瘍をつくる。抗菌薬だけでは治りにくい |
- 僧帽弁・大動脈弁(左心系)の疣贅は、全身の動脈(脳・四肢・腎・脾)に飛ぶ。肺塞栓は起こしにくい(肺に飛ぶのは三尖弁など右心系の疣贅)。
検査の順番
- ① 血液培養抗菌薬の前に複数セット
- ② 経胸壁心エコー疣贅・弁の逆流
- ③ 経食道心エコー疣贅を見つける感度が最も高い
- ④ 血液培養の再検陰性になったかを確かめる
- 抗菌薬を始める前に、血液培養を複数セット(時間をあけ、別の部位から)。不明熱でIEを疑えば、尿・便・痰・髄液より血液の培養を優先する。
- 先に抗菌薬を使うと、熱は一時下がっても培養が陰性になりやすく、診断が遅れる。
- 診断の柱は、血液培養と心エコー(疣贅・弁の逆流)の2つ(Duke基準の大基準)。
- 疣贅を見つける感度は経食道心エコーが最も高い(CT・MRI・シンチより鋭敏)。経胸壁で疣贅が見えなくても否定できない。
- 血液培養で黄色ブドウ球菌(ブドウの房のように集まるGram陽性球菌)が出たら、心雑音がなくても心エコーでIEを探す。治療を始めたら血液培養をくり返し、陰性になったのを確かめる。熱が続く、心不全や塞栓が出てきたときは心エコーもやり直す。
- 脳や下肢に塞栓が起きても、まず血液培養と心エコー(頸動脈超音波・下肢静脈造影ではない)。
画像で出たら 心エコーでは、弁(または心室中隔欠損の近く)に付いて揺れ動く塊(疣贅)と、カラードプラで逆流のジェットが見える。頭部MRIでは散らばった小さな脳梗塞、頭部CTでは脳出血。
治療と予防
| 抗菌薬 | 血液培養を採ったら、抗菌薬の点滴を始める(緊急手術・ステロイドではない)。結果が出たら菌に合わせて変える。殺菌的な薬を大量に、点滴で数週間 |
|---|---|
| 緑色連鎖球菌 | ベンジルペニシリン(ペニシリンG)。静菌的な内服薬(ミノサイクリン・クラリスロマイシン)は使わない |
| 手術 | 抑えられない心不全・弁穿孔・弁周囲膿瘍・大きくなる疣贅と塞栓には弁置換など |
| 手術を待つ | 脳出血のあとの昏睡。人工心肺でヘパリンを使い、出血が広がる |
| 予防 | 人工弁・IEの既往など危険の高い人は、抜歯の前に抗菌薬(アモキシシリン)を1回飲む |
似た病気との見分け
発熱と心雑音・塞栓があるとき
| 左房粘液腫 | 発熱・体重減少・関節痛と脳塞栓。体位で変わる拡張期雑音。心エコーで左房に動く腫瘤 |
|---|---|
| 全身性エリテマトーデス | 若い女性。蝶形紅斑・関節炎、抗核抗体が陽性。弁に菌のいない疣贅(Libman-Sacks心内膜炎)ができることがある |
| リウマチ熱 | A群溶連菌の咽頭炎の2〜3週後。輪状紅斑・多関節炎・心炎。あとに僧帽弁狭窄症などの弁膜症を残す |
血液から黄色ブドウ球菌が出たとき
| カテーテル関連血流感染症 | 中心静脈カテーテル・ポートの刺入部が赤く痛む。カテーテルを抜き、心エコーでIEも探す |
|---|---|
| 化膿性脊椎炎 | 高齢者・糖尿病・透析の、発熱と腰痛(棘突起の叩打痛)。MRIで診断し、心エコーでIEも探す |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
IEのきっかけとして、病歴で必ず聞く処置は?★★★必修
抜歯などの歯科治療
口の中の菌が血液に入る。数週間前の処置のこともある。扁桃摘出術など、口の中の手術も同じ。
- Q2
IEを起こしやすい心臓は?(3つ)★★★
弁膜症(僧帽弁・大動脈弁の逆流)・人工弁・心室中隔欠損症
逆流や短絡の速い血流が当たり、傷んだ内膜に菌が付く。
- Q3
歯科治療のあとのIEで、多い原因菌は?★★★
緑色連鎖球菌(口の中の常在菌)
血液培養ではGram陽性球菌。ゆっくり(亜急性に)進み、多くはペニシリンが効く。
- Q4
皮膚や血管内のカテーテル(透析・中心静脈ポート)から入り、IEを起こす菌は?★★★必修
黄色ブドウ球菌
急に進み、短い期間で弁を壊す。血液培養では、ブドウの房のように集まったGram陽性球菌に見える。
- Q5
解熱薬で下がっては上がる発熱が数週間。新しい心雑音がある。考える病気は?★★★必修
感染性心内膜炎
不明熱の代表。かぜ薬・解熱薬・抗菌薬で様子を見るうちに、診断が遅れやすい。
- Q6
IEで新しく聴こえやすい心雑音は?(2つ)★★★必修
心尖部の全収縮期雑音(僧帽弁閉鎖不全)・胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音(大動脈弁閉鎖不全)
疣贅が弁を壊して逆流が起こる。前からあった雑音が強くなることもある。
- Q7
IEで、指先や足趾の腹にできる、痛みのある赤い結節は?★★★必修
Osler結節
免疫の反応で起こる小さな血管炎とされる。手掌・足底にできる痛まない小さな出血斑は、Janeway病変。
- Q8
IEで、眼に見える所見は?(2つ)★★★必修
眼瞼結膜の点状出血・眼底のRoth斑
Roth斑は中心が白い網膜の出血で、皮膚の所見ではない。
- Q9
IEで、疣贅がはがれて起こる合併症のうち、最も注意するのは?★★★
脳塞栓症
突然の片麻痺・めまい・構音障害で来る。人工弁の人の発熱と片麻痺も、まずこれ。下肢の動脈に詰まると、急に痛み、白く冷たくなる。
- Q10
IEで、細菌が脳の動脈の壁を壊してでき、破れると脳出血になる動脈瘤は?★★★
感染性脳動脈瘤(細菌性動脈瘤)
頭部MRAで見つかる。塞栓でできた梗塞が出血に変わることもある(出血性梗塞)。
- Q11
IEで、弁が壊れて逆流が急に強まると起こるのは?★★★
心不全
労作時の息切れ・起座呼吸・肺うっ血。IEで手術を考える最も多い理由。
- Q12
IEを疑ったら、最初に行う検査は?★★★必修
血液培養(抗菌薬の前に、複数セット)
時間をあけ、別の部位から採る。尿・便・痰・髄液の培養より優先する。
- Q13
血液培養に続けて行い、疣贅と弁の逆流を見る検査は?★★★
心エコー(まず経胸壁)
診断の柱は、血液培養と心エコーの2つ(Duke基準の大基準)。
- Q14
疣贅を見つける感度が最も高い検査は?★★★
経食道心エコー
食道から、心臓のすぐ後ろで見る。CT・MRI・PET・シンチより鋭敏。人工弁のIEや弁周囲膿瘍も見つけやすい。
- Q15
血液培養から黄色ブドウ球菌が出た。心雑音がなくても行う検査は?★★★必修
心エコー(IEを探す)
黄色ブドウ球菌の菌血症は、IEを合併しやすい。化膿性脊椎炎やカテーテル感染で見つかったときも同じ。
- Q16
黄色ブドウ球菌の菌血症。治療を始めたあと、血液培養をもう一度採るのはなぜ?★★★
陰性になったことを確かめるため
陰性になった日から治療期間を数える。熱が続き、心不全や塞栓が出てきたら、心エコーもやり直す。
- Q17
IEを疑い、血液培養を採った。結果はまだ出ていない。直ちに始める治療は?★★★
抗菌薬の点滴
結果が出たら、菌と薬の効き方(感受性)に合わせて変える。緊急手術・ステロイド・免疫グロブリンではない。
- Q18
緑色連鎖球菌によるIE。まず使う抗菌薬は?★★★
ベンジルペニシリン(ペニシリンG)
殺菌的な薬を大量に、点滴で数週間使う。ゲンタマイシンを併用することもある。
- Q19
IEで手術(弁置換など)を考える場面は?(3つ)★★★
抑えられない心不全・弁周囲膿瘍・大きくなる疣贅と塞栓
弁穿孔で逆流が急に強まったときも。手術のあとも抗菌薬を続ける。
- Q20
人工弁の人が抜歯を受ける。前もって行うことは?★★★
抗菌薬(アモキシシリン)の予防内服
IEの危険が高い人(人工弁・IEの既往など)に、処置の前に1回飲む。
- Q21
手術していない心室中隔欠損症のIEで、疣贅ができやすい所は?★★★
欠損孔の近くの右室側
左室から右室へ抜ける短絡の血流が当たる所。小さな欠損でも、IEの危険は残る。