徐脈性不整脈
めまい・失神の徐脈から、心電図の読み方とペースメーカーまで
20問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 失神(Adams-Stokes発作)・めまいをくり返したら徐脈を疑い、心電図でP波とQRSの関係を見る。P波もQRSも数秒止まるのは洞停止、P波とQRSが互いに関係なく出るのは完全房室ブロック。
- まず原因の薬(β遮断薬・抗不整脈薬など)をやめる。失神するほどの徐脈にはアトロピン静注、効かなければ一時的ペーシング。
- 薬などの原因がない、症状のある徐脈は恒久的ペースメーカー(ICDではない)。症状のないWenckebach型は経過観察。
徐脈とは:伝わる道と症状
心臓の電気は、右房の洞結節で生まれ、房室結節→His束→右脚・左脚を通って心室に伝わる。洞結節が止まる・遅くなるのが洞不全症候群、房室結節から下で伝わらなくなるのが房室ブロック。心拍数がおおむね50/分未満を徐脈という。
| 症状 | めまい・眼前暗黒感・失神、だるさ。遅い脈が続くと、労作時の息切れ・下腿浮腫・心拡大(心不全) |
|---|---|
| Adams-Stokes発作 | 心拍が数秒止まって脳の血流が途絶え、前ぶれなく突然倒れる。多くは数秒〜十数秒で元に戻る。座っていても寝ていても起こる |
- 脚ブロックだけでは脈は遅くならない。失神を起こすのは完全房室ブロック・高度房室ブロックと洞停止。
房室ブロック:P波とQRSの関係で分ける
P波(心房の興奮)とQRS(心室の興奮)を1対1で対応させ、PQ時間の延び方とQRSの抜け方を見る。Ⅱ度は、P波は規則正しく出るのに、ときどきQRSが続かないもの。
| Ⅰ度 | PQ時間が0.20秒を超えて延びるだけで、QRSは抜けない。それだけなら治療は要らない |
|---|---|
| Ⅱ度 Wenckebach型(MobitzⅠ型) | PQ時間が1拍ごとに延び、やがてQRSが1つ抜ける。房室結節での障害で、若い人・運動選手・睡眠中にも見られる。症状がなければ経過観察 |
| Ⅱ度 MobitzⅡ型 | PQ時間は一定のまま、突然QRSが抜ける。房室結節より下の障害で、完全房室ブロックに進みやすい。2拍以上続けて抜けるものは高度房室ブロック |
| Ⅲ度(完全) | 心房の興奮がまったく伝わらない。P波とQRSがそれぞれ一定の間隔で、互いに関係なく出る(房室解離)。心室は下の補充調律で、遅く規則的に打つ(40/分前後) |
- 完全房室ブロックの聴診:Ⅰ音の強さが拍ごとに変わり、ときに大きく響く(大砲音)。心房と心室がばらばらに縮むため。
- 失神(Adams-Stokes発作)・心不全を起こすのは、おもに完全房室ブロックと高度房室ブロック。
画像で出たら まずP波を全部探す(T波に重なって隠れることもある)。Ⅰ度はPQ時間が大きいマス1つ(0.20秒)より長い。Wenckebach型はPQ時間が少しずつ延びて抜ける。2:1では、QRSとQRSの間にP波が2つ。完全房室ブロックでは、P波とQRSがそれぞれ等間隔に並び、PQ時間がばらばら。
洞不全症候群:洞結節が止まる・遅れる
洞結節の働きが落ちて、脈が遅くなる・止まる。高齢者に多い。3つの型に分ける。
| Ⅰ型:洞性徐脈 | P波とQRSは1対1で形も正常なまま、心拍数が遅い(50/分未満)。薬・甲状腺機能低下症など、ほかの原因がないもの |
|---|---|
| Ⅱ型:洞停止・洞房ブロック | P波もQRSも突然出なくなり、平らな線が数秒続く。休みの長さがPP間隔のちょうど整数倍なら洞房ブロック |
| Ⅲ型:徐脈頻脈症候群 | 発作性心房細動(心房粗動)が止まった直後に、長い洞停止。頻脈の間に抑えられた洞結節が、すぐには動き出さない |
- 徐脈頻脈症候群で、頻脈を抑える薬(β遮断薬・Ca拮抗薬・抗不整脈薬)は停止を長くする。始めた後に悪くなったら、まず中止。
- 治療:症状のある停止にはペースメーカー。心房細動そのものをカテーテルアブレーションで治せば、停止も起こらなくなる。
画像で出たら Holter心電図で、不規則に細かく揺れる基線(心房細動)や速い頻拍が急に止まり、数秒の平らな線のあと、P波のある洞調律が戻る。
原因:まず薬を確かめる
徐脈を見たら、治せる原因(とくに薬)を先に探す。
| 薬 | β遮断薬・Ca拮抗薬(ベラパミル・ジルチアゼム)・ジギタリス・抗不整脈薬。まず原因の薬をやめる。施設に入って飲み忘れがなくなり、急に効きすぎることもある |
|---|---|
| 心臓の病気 | 加齢による刺激伝導系の変性が多い。下壁の急性心筋梗塞(右冠動脈が房室結節を養う。くわしくは急性冠症候群で)、心サルコイドーシス(心室中隔の基部が薄くなる)、急性心筋炎(かぜの数日後に) |
| 迷走神経が強い | 若い人・運動選手・睡眠中には、洞性徐脈やWenckebach型が病気でなく見られる |
- 薬をやめても、効果が切れるまでに失神をくり返すなら一時的ペーシングで支える。やめても徐脈が続くときに、恒久的ペースメーカー。
- 腎機能の落ちた高齢者は、ジゴキシンがたまって徐脈になりやすい(腎臓から出る薬)。
治療:急ぐとき
- ① アトロピン静注失神・血圧低下のある徐脈に
- ② 一時的ペーシング効かない・くり返す
- ③ 原因を除く薬・高K血症・心筋梗塞
- ④ 恒久的ペースメーカー原因がなく続く徐脈
- 失神・血圧低下など症状のある徐脈には、まずアトロピン静注。迷走神経を抑えて心拍数を上げる。房室結節より下のブロック(幅の広いQRSの補充調律)には効きにくい。
- 一時的ペーシング:すぐ始められるのは、胸に貼ったパッドから刺激する経皮ペーシング。続いて、静脈から右室にリードを入れる経静脈ペーシング。アドレナリン・ドパミンの点滴も、ペーシングまでのつなぎに使う。
- アトロピン・イソプロテレノールは一時しのぎ。くり返す徐脈を、薬で抑え続けることはしない。
- リドカインは使わない(心拍を支えている心室の補充調律まで抑える)。ベラパミルは房室伝導を悪くする。
恒久的ペースメーカー
本体を鎖骨の下の皮下に植え込み、静脈から入れたリードで右房・右室を刺激する。自分の脈が設定(例えば60/分)より遅くなると、電気を出して心臓を動かす。
| 植え込む | 症状(めまい・失神・心不全)のある徐脈で、原因になる薬などがないもの。洞不全症候群・Ⅱ度/Ⅲ度房室ブロック・徐脈頻脈症候群。MobitzⅡ型・完全房室ブロックは、症状がなくても考える |
|---|---|
| 植え込まない | 症状のないⅠ度・Wenckebach型。薬が原因の徐脈(まず中止)。ICD(植込み型除細動器)は徐脈に使うものではない(心室頻拍・心室細動に) |
| 心電図 | 鋭いスパイクの直後に幅の広いQRS=心室ペーシング(右室から刺激するので、左脚ブロックに似た形)。心房ペーシングでは、スパイクのあとにP波。心房細動の心房はペーシングできない |
| 検査・生活 | MRIは、条件付きMRI対応の機種か確かめてから(撮る前後に設定を変える)。CT・PET・超音波検査では、この確認は要らない。電気メス・低周波治療器など、体に電気を流すものや強い電磁波で誤作動しうる |
画像で出たら QRSの直前に細く鋭い縦線(ペーシングスパイク)があり、幅の広いQRSが設定の間隔(60/分なら大きいマス5つおき)で規則正しく並ぶ。心室期外収縮・心室頻拍と読みまちがえない。
似た病気との見分け
失神をくり返すが、ペースメーカーでは防げないもの
| 心室頻拍・心室細動 | 幅の広いQRSの速い頻拍。植込み型除細動器(ICD)(くわしくは心室性不整脈で) |
|---|---|
| 大動脈弁狭窄症 | 運動中の失神・胸痛、駆出性収縮期雑音。弁置換 |
| 反射性失神 | 長い立位・痛み・排尿などのきっかけと、冷汗などの前ぶれ。徐脈も起こるが、横になればすぐ戻る |
| てんかん | 舌の側面をかむ・失禁。発作のあと、しばらくもうろうとする。脳波 |
脈が遅いとき、心臓の外の原因
| 高K血症 | 腎不全やKを上げる薬。T波が高く尖り、QRSの幅が広がる。放っておくと心停止 |
|---|---|
| 甲状腺機能低下症 | 寒がり・むくみ・便秘・体重増加。TSH↑・FT4↓ |
| 有機リン中毒 | 縮瞳・流涎・発汗、コリンエステラーゼの低下。アトロピンとPAM |
| 神経性やせ症 | 低体重・無月経に、徐脈・低体温・低血圧 |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
房室ブロックや洞停止で心拍が数秒止まり、脳の血流が途絶えて意識を失う発作を何という?★★★必修
Adams-Stokes発作
前ぶれなく突然倒れ、数秒〜十数秒で戻る。座っていても寝ていても起こる。くり返すなら、ペースメーカーが要る徐脈を考える。
- Q2
PQ時間が0.20秒を超えて延びるが、QRSは1拍も抜けない。心電図の所見は?★★★必修
Ⅰ度房室ブロック
心電図の大きいマス1つ(0.20秒)より長い。ふつう症状はなく、それだけなら治療は要らない。
- Q3
PQ時間が1拍ごとに少しずつ延び、やがてQRSが1つ抜ける。心電図の所見は?★★★必修
Wenckebach型Ⅱ度房室ブロック(MobitzⅠ型)
房室結節での障害で、迷走神経の強い若い人や、睡眠中にも見られる。抜けた後のPQ時間は短く戻る。
- Q4
P波のあとのQRSが、ときどき抜ける(2:1で抜けるなど)。房室ブロックの程度は?★★★必修
Ⅱ度房室ブロック
伝わる拍では、P波とQRSが対応している。2拍以上続けて抜けるものは高度房室ブロック。P波とQRSがまったく関係なく出るなら完全(Ⅲ度)。
- Q5
P波とQRSがそれぞれ一定の間隔で、互いに関係なく出る。QRSは遅く規則的。心電図の所見は?★★★必修
完全(Ⅲ度)房室ブロック
心房の興奮がまったく心室へ伝わらず、心室は下の補充調律で打つ(房室解離)。失神(Adams-Stokes発作)や心不全を起こす。
- Q6
完全房室ブロックの聴診で、特徴的な所見は?★★★必修
Ⅰ音の強さが拍ごとに変わり、ときに大きく響く(大砲音)
心房と心室がばらばらに縮み、房室弁が大きく開いた所で心室が縮むと、Ⅰ音が大きくなる。Ⅱ音の亢進は肺高血圧、Ⅲ音は心不全の所見。
- Q7
P波もQRSも突然出なくなり、平らな線が数秒続いた。その時に眼前暗黒感・失神。心電図の所見は?★★★
洞停止(洞不全症候群)
洞結節が電気を出さない。休みの長さがPP間隔のちょうど整数倍なら洞房ブロックで、これも洞不全症候群に入る。
- Q8
発作性心房細動(心房粗動)が止まった直後に、数秒の洞停止が起こる。病名は?★★★
徐脈頻脈症候群(洞不全症候群のⅢ型)
頻脈の間に抑えられた洞結節が、すぐに動き出さない。β遮断薬・Ca拮抗薬・抗不整脈薬で頻脈を抑えると、停止は長くなる。症状のある停止にはペースメーカー、心房細動にはカテーテルアブレーション。
- Q9
降圧薬を飲む高齢者が、脈拍36/分でふらつく。飲んでいる薬で、まず原因に考えるのは?★★★
β遮断薬
洞結節と房室結節の働きを抑える。ベラパミル・ジルチアゼム(Ca拮抗薬)、ジギタリス、抗不整脈薬も徐脈を起こす。利尿薬・ACE阻害薬・抗血小板薬・SU薬は、洞結節・房室結節を直接は抑えない。
- Q10
薬で起きた、症状のある徐脈(洞停止・房室ブロック)。まずすることは?★★★
原因の薬をやめる
効果が切れるまでに失神をくり返すなら、一時的ペーシングで支える。やめても徐脈が続くときに、恒久的ペースメーカーを考える。腎機能の落ちた高齢者では、ジゴキシンがたまって徐脈になりやすい。
- Q11
完全房室ブロックを合併しやすい病気は?(2つ)★★★
下壁の急性心筋梗塞・心サルコイドーシス
下壁梗塞では、多くの人で房室結節を養う右冠動脈が詰まる(ブロックは一時的なことが多い)。心サルコイドーシスは肉芽腫が刺激伝導系を壊す。中年の房室ブロックでは、心エコーで心室中隔の基部が薄くないか見る。
- Q12
失神した患者のモニターで、高度の房室ブロック。直ちに静注する薬は?★★★必修
アトロピン
迷走神経を抑えて、洞結節と房室結節の働きを高める。効かなければ経皮ペーシング(アドレナリン・ドパミンの点滴も)。アドレナリンの1回静注は、心停止の時の使い方。
- Q13
高度の徐脈で、意識消失をくり返している。すぐに心拍を保つ治療は?★★★
一時的ペーシング(まず経皮、続いて経静脈)
胸に貼ったパッドから刺激する経皮ペーシングは、すぐ始められる。続いて静脈から右室にリードを入れる。原因を確かめ、続く徐脈なら恒久的ペースメーカーへ。
- Q14
原因になる薬がないのに、洞停止や房室ブロックによる失神をくり返す。治療は?★★★
恒久的ペースメーカー植込み
めまい・失神・心不全など、症状のある徐脈が適応。完全房室ブロックやMobitzⅡ型は、症状がなくても考える。
- Q15
ペースメーカーを植え込んだ人の心電図。鋭いスパイクの直後に、幅の広いQRSが規則正しく続く。所見は?★★★必修
心室ペーシング
右室の中から刺激するので、左脚ブロックに似た形になる。心房ペーシングなら、スパイクのあとにP波が続く。心室期外収縮・心室頻拍と読みまちがえない。
- Q16
ペースメーカーを植え込んだ人に、機種を確かめてから行う検査は?★★★必修
MRI(MRCPなども)
強い磁場で誤作動や発熱が起こりうる。条件付きMRI対応の機種なら、前後で設定を変えて撮れる(以前は撮れないとされた)。CT・PET・超音波検査では、この確認は要らない。
- Q17
P波とQRSが1対1で形も正常なまま、心拍数が36/分。心電図の所見は?★★★
洞性徐脈
洞結節から出る興奮そのものが遅い。β遮断薬などの薬、甲状腺機能低下症、低体温をまず探す。
選択肢の○×
しくみ・症状
房室ブロック
- 2
症状のない若い人のWenckebach型房室ブロックは、経過観察でよい。101A18
房室結節での軽い障害で、迷走神経の強い人や睡眠中にも見られる。薬もペースメーカーも要らない。
原因