僧帽弁膜症
雑音の聴き分けから、原因・合併症・治療まで
23問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 心尖部の高い音の全収縮期雑音は僧帽弁閉鎖不全症。開放音(opening snap)と心尖部の拡張中期ランブルは僧帽弁狭窄症、収縮中期クリックは僧帽弁逸脱症。
- 狭窄症の多くは小児期のリウマチ熱が原因。左房が大きくなり、心房細動から左房内血栓・脳塞栓を起こしやすい。
- 閉鎖不全症の原因は僧帽弁逸脱・腱索断裂・心筋梗塞・拡張型心筋症・感染性心内膜炎。症状がなく左室が保たれていれば心エコーで経過を見る。手術は弁形成術が第一。
聴診で分ける:狭窄症・閉鎖不全症・逸脱症
どちらも雑音は心尖部で最も強い。収縮期か拡張期かと、音の高さで分ける。
| 僧帽弁狭窄症 | 僧帽弁閉鎖不全症 | |
|---|---|---|
| 心雑音 | 拡張中期の低い音(ランブル) | 高い音の全収縮期雑音。腋窩へ広がる |
| Ⅰ音 | 亢進 | 減弱 |
| 過剰心音 | 僧帽弁開放音(opening snap):Ⅱ音のすぐ後 | Ⅲ音:逆流が多いと出る |
- ランブルは低い音なので、ベル型を心尖部に当て、左側臥位で聴く。
- 収縮中期クリックは僧帽弁逸脱症。たるんだ弁尖が左房側へ落ち込み、腱索が急に張る音で、後に収縮後期の雑音(逆流)が続く。Marfan症候群に合併しやすい。
僧帽弁狭窄症:原因と病態
弁尖が厚く硬くなって癒着し、拡張期に左房から左室へ血が流れにくくなる。原因の多くは小児期のリウマチ熱(A群溶連菌の咽頭炎のあと)で、何十年もたってから息切れが出てくる。子どもの頃の長い発熱・関節痛・輪状紅斑の病歴が手がかり。高齢者では、弁輪の石灰化で狭くなるものもある。
- ① 左房の拡大左房圧が上がる
- ② 心房細動大きな左房で起こる
- ③ 左房内血栓左心耳に血がよどむ
- ④ 脳塞栓弁膜症で最も多い
| 左房 | 胸部X線で左第3弓の突出(左心耳)・右第2弓の二重陰影。血栓は閉鎖不全症よりできやすい |
|---|---|
| 肺・右心 | 肺うっ血で労作時の息切れ。肺高血圧になり、進むと右心不全(頸静脈怒張・肝腫大・下腿浮腫) |
| 左室 | 入る血が減り、前負荷は下がる。左室は大きくならない |
画像で出たら 心エコーの傍胸骨長軸像で、弁尖が厚く、拡張期に前尖がドームのようにふくらんで開ききらない。左房が大きい。短軸像では弁口が狭い。心電図は心房細動のことが多い。
僧帽弁狭窄症:治療
| 心房細動 | 心拍数を下げる薬と抗凝固薬で脳塞栓を防ぐ(薬の選び方は心房細動で) |
|---|---|
| 重症度 | 心エコーで弁口面積を測る |
| 弁を広げる | 症状のある高度の狭窄症に。弁の形が合えば経皮的僧帽弁交連切開術(カテーテルの先の風船で、癒着した弁の合わせ目(交連)を裂いて広げる)。前もって経食道心エコーで、左房内血栓がないことを確かめる。合わなければ手術(弁置換など) |
| 人工弁 | 機械弁は長持ちするが生涯ワルファリンが要る。妊娠を望む女性では、ワルファリンの催奇形性を考えて生体弁も考える(若い人では早く傷む) |
僧帽弁閉鎖不全症:原因と病態
収縮期に僧帽弁が閉じきらず、左室から左房へ血が逆流する。弁尖や腱索そのものが壊れるものと、左室が広がったり乳頭筋が弱ったりして閉じなくなるものがある。
| 僧帽弁逸脱症 | 弁の粘液変性で弁尖がたるみ、収縮期に弁輪を越えて左房側へ落ち込む。いまは閉鎖不全症の原因として多い。健診の心雑音で見つかることが多い |
|---|---|
| 腱索断裂 | 突然の呼吸困難と肺うっ血。弁尖がひるがえり、急に高度の逆流になる |
| 心筋梗塞 | 乳頭筋の虚血・断裂(くわしくは急性冠症候群で) |
| 拡張型心筋症 | 左室と弁輪が広がり、弁が閉じきらない(弁そのものは正常) |
| 感染性心内膜炎 | 疣贅が弁尖を壊し、腱索を切る |
| リウマチ熱 | 狭窄症と一緒に、閉鎖不全も起こす |
- 大動脈の病気(大動脈解離・上行大動脈瘤・高安動脈炎)が起こすのは大動脈弁閉鎖不全で、僧帽弁は傷みにくい。
- 逆流した血は左房にたまり、次の拡張期にまた左室へ入る。左房と左室の両方に容量負荷がかかり、ゆっくり両方が大きくなる(胸部X線で左第4弓も突出)。
画像で出たら カラードプラで、収縮期に左室から左房へ向かう逆流のジェット(モザイク状の色)。逸脱では弁尖が弁輪を越えて左房側へ落ち込み、腱索断裂では弁尖の先がひるがえり、切れた腱索が糸のように揺れる。
僧帽弁閉鎖不全症:経過と治療
| 合併症 | 左房が大きくなると心房細動を起こし、頻脈で心不全が悪くなる(動悸の発作・夜間の息苦しさ) |
|---|---|
| 症状がなく軽い | 左室の大きさと駆出率が保たれていれば、定期的な心エコーで逆流と左室の変化を追う |
| 手術 | 症状のある高度の逆流に。まず僧帽弁形成術、できなければ弁置換術。症状がなくても、左室の収縮が落ちたり大きくなってきたら考える。手術の危険が高い人には、カテーテルで弁尖をクリップで留める治療もある |
| 急性の高度な逆流 | 腱索断裂・乳頭筋断裂・感染性心内膜炎で起こる。左房が大きくなる間もなく突然の肺水腫。血管拡張薬・IABPで後負荷を下げ、緊急手術 |
似た病気との見分け
収縮期雑音のとき
| 心室中隔欠損症 | 胸骨左縁第3〜4肋間の全収縮期雑音。欠損が小さいほど音は大きい |
|---|---|
| 三尖弁閉鎖不全症 | 胸骨左縁下部の全収縮期雑音。吸気で大きくなる |
| 大動脈弁狭窄症 | 胸骨右縁第2肋間の収縮期駆出性雑音で、頸部へ広がる。高齢者の失神・狭心痛 |
拡張期雑音・左房の異常のとき
| 大動脈弁閉鎖不全症 | 胸骨左縁第3肋間の、拡張早期の高い音の雑音。脈圧が大きい。大動脈解離・上行大動脈瘤・高安動脈炎・Marfan症候群で起こる |
|---|---|
| 左房粘液腫 | 体位で強さが変わる拡張期雑音。発熱・体重減少・関節痛と脳塞栓。心エコーで左房に動く腫瘤(拡張期に僧帽弁口をふさぐ) |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
心尖部で聴く、高い音の全収縮期雑音。考える弁膜症は?★★★必修
僧帽弁閉鎖不全症
収縮期に左室から左房へ血が逆流する音で、腋窩へ広がる。胸骨左縁の全収縮期雑音なら、心室中隔欠損症や三尖弁閉鎖不全症を考える。
- Q2
僧帽弁狭窄症で聴かれる心音と心雑音は?(2つ)★★★必修
僧帽弁開放音(opening snap)・心尖部の拡張中期ランブル
硬くなった弁がⅡ音のすぐ後に開く音が開放音で、続いて狭い弁口を血が通る低い音がランブル。低い音なので、ベル型を心尖部に当て、左側臥位で聴く。
- Q3
子どもの頃に長く続いた発熱・関節痛と、輪のような赤い発疹。数十年後に、心尖部の拡張中期ランブルと息切れ。この弁膜症の原因になった病気は?★★★
リウマチ熱
A群溶連菌の咽頭炎のあとに起こる(輪のような発疹は輪状紅斑)。弁尖が厚くなって癒着し、何十年もかけて僧帽弁狭窄症(閉鎖不全症も)になる。数日前の歯科治療は感染性心内膜炎のきっかけで、狭窄症の原因ではない。
- Q4
胸部X線で左第3弓が突出する弁膜症は?★★★必修
僧帽弁狭窄症(左房の拡大)
左第3弓は左心耳。左房が大きいと右第2弓の二重陰影も出る。閉鎖不全症では左室も大きくなり、左第4弓も突出する。
- Q5
弁膜症のうち、心原性脳塞栓症を最も起こしやすいのは?★★★
僧帽弁狭窄症
左房が大きくなって心房細動を起こし、血がよどむ左心耳に血栓ができる。閉鎖不全症は逆流で血が動くので、狭窄症ほど血栓はできない。
- Q6
人工弁への置換を予定している若い女性。機械弁か生体弁かを選ぶときに、必ず確かめることは?★★★
妊娠の希望(挙児希望)
機械弁は長持ちするが、生涯ワルファリンが要り、ワルファリンには催奇形性がある。妊娠を望むなら生体弁を考える(若い人では早く傷み、再手術になりやすい)。う歯は術前に治すが、弁の種類を決める理由にはならない。
- Q7
僧帽弁閉鎖不全症の原因になる病気は?(5つ)★★★
僧帽弁逸脱・腱索断裂・心筋梗塞(乳頭筋)・拡張型心筋症・感染性心内膜炎
リウマチ熱でも起こる。大動脈解離・上行大動脈瘤・高安動脈炎が起こすのは大動脈弁閉鎖不全で、僧帽弁は傷みにくい。
- Q8
心エコーで、収縮期に僧帽弁の弁尖が弁輪を越えて左房側へ落ち込む。診断は?★★★
僧帽弁逸脱症
弁の粘液変性によることが多く、いまの僧帽弁閉鎖不全症の多い原因。健診の心雑音で見つかることも多い。聴診では収縮中期クリック、逆流があれば収縮期雑音。カラードプラで左房への逆流を見る。
- Q9
突然の呼吸困難と肺うっ血。心尖部に全収縮期雑音。発熱はなく、左室の壁運動は正常で、僧帽弁の後尖に糸のようなものが付いて揺れる。原因は?★★★
腱索断裂
切れた腱索ごと弁尖がひるがえり、急に高度の逆流になる。心筋梗塞の数日後なら乳頭筋断裂、発熱と炎症反応があれば感染性心内膜炎を考える。
- Q10
僧帽弁閉鎖不全症を放置していた人。不整な動悸の発作をくり返し、夜、横になると息苦しい。合併しているのは?(2つ)★★★
心房細動・心不全
左房が大きくなると心房細動が起こり、頻脈と心房の収縮がなくなることで心不全が悪くなる。受診した時に脈が整でも、発作性のことがある。
- Q11
症状がなく、左室の大きさと駆出率が保たれた軽い僧帽弁閉鎖不全症。対応は?★★★
定期的な心エコー検査
逆流の程度・左室の大きさ・駆出率を追い、手術の時期を逃さない。すぐの手術は要らず、β遮断薬で逆流の進行は防げない。心房細動がなければ抗凝固もしない。
- Q12
症状のある高度の僧帽弁閉鎖不全症。まず考える手術は?★★★
僧帽弁形成術(できなければ置換術)
自分の弁を残す形成術は、置換術より術後の経過が良いことが多く、機械弁のような生涯の抗凝固もいらない。症状がなくても、左室の収縮が落ちたり大きくなってきたら手術を考える。
- Q13
急性の高度な僧帽弁閉鎖不全。緊急手術を待つ間に、血行動態を良くする治療は?(2つ)★★★
血管拡張薬・大動脈内バルーンパンピング(IABP)
後負荷を下げると大動脈へ送り出しやすくなり、逆流が減って肺うっ血も軽くなる。β遮断薬・ジギタリスでは良くならない。
- Q14
僧帽弁狭窄症の重症度を決める弁口面積。測る検査は?★★★
心エコー
短軸像で弁口をなぞるか、ドプラ法で求める。中心静脈圧・大動脈圧・左室圧・混合静脈血の酸素飽和度は、カテーテルで測る。
選択肢の○×
聴診
狭窄症
閉鎖不全症の治療
- 5
高度の僧帽弁閉鎖不全症に、僧帽弁交連切開術を行う。108A57
交連切開は、癒着して開かなくなった弁を広げる狭窄症の治療(多くはカテーテルの風船で行う、経皮的僧帽弁交連切開術)。閉鎖不全症には弁形成術、できなければ弁置換術。