心膜疾患・心臓腫瘍
かぜの後の胸痛から、心タンポナーデ・左房粘液腫まで
28問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- かぜの数日後に、深く息を吸うと強くなる胸痛。心膜摩擦音と広い範囲の誘導のST上昇があれば急性心膜炎。治療はNSAIDs。
- 血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱に奇脈があれば心タンポナーデ。ベッドサイドの心エコーで心嚢液を確かめ、心嚢穿刺。
- 体位で強さが変わる拡張期雑音に発熱・体重減少・関節痛があれば左房粘液腫。心エコーで見つける。
急性心膜炎
心臓を包む心膜の炎症。かぜ(ウイルス感染)の数日後に起こることが多い(原因の分からない特発性も、多くはウイルスによる)。
| 胸痛 | 深く息を吸うと強くなる・仰向けで強くなる。座って前かがみになると楽になる。数時間〜数日続く |
|---|---|
| 聴診 | 心膜摩擦音(炎症を起こした心膜がこすれる、ひっかくような高い音。収縮期にも拡張期にも聴こえる) |
| 心電図 | 広い範囲の誘導でST上昇(下に凸)とPR部分の低下。1本の冠動脈の領域に収まらず、反対側の誘導のST低下(鏡像)がない |
| 心エコー | 壁運動は正常で、心嚢液が少したまることがある |
| 治療 | NSAIDs(アスピリンなど)。再発を減らすためにコルヒチンを加える |
- まず心電図・心エコー・胸部X線。運動負荷心電図はしない(急性心膜炎・心筋炎では禁忌)。
- ST上昇があっても血栓溶解薬(t-PA)は使わない。冠動脈は詰まっておらず、心膜の中に出血する。
心タンポナーデ:起こり方と所見
心膜の中(心嚢)に液や血がたまって心臓が外から押され、拡張期に心室が広がれなくなる。心臓に血が入れず、送り出す血も減る。急にたまると(出血)少しの量でも起こり、ゆっくりたまると大量になるまで持ちこたえる。
| Beckの3徴 | 血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱 |
|---|---|
| 脈 | 頻脈(徐脈にはならない)・脈圧が小さい・奇脈(吸気で収縮期血圧が10 mmHg以上下がる)。遅脈は出ない(遅脈は大動脈弁狭窄症) |
| ショック | 閉塞性ショック(緊張性気胸・広い肺塞栓と同じ)。中心静脈圧は早期から上がる |
| 肺 | 肺うっ血は起こらない(呼吸音はふつう正常) |
| 心電図 | 低電位・洞性頻脈 |
| 胸部X線 | ゆっくりたまると心陰影が拡大する(急にたまった時は、あまり大きくならない) |
心嚢に液や血がたまる原因
| ゆっくりたまる | がんの心膜転移(癌性心膜炎):肺癌・乳癌・大腸癌など。SLE(漿膜炎)・結核・尿毒症・甲状腺機能低下症・ウイルス性心膜炎 |
|---|---|
| 急にたまる | 心臓の手術・カテーテル治療(アブレーション・PCI)の後。胸部外傷。A型大動脈解離の心嚢への破裂(大動脈解離の項) |
心タンポナーデの検査と治療
- ① 診察頸静脈怒張・心音の減弱・奇脈
- ② 心電図・胸部X線低電位・心陰影の拡大
- ③ 心エコー心嚢液と右室の虚脱
- ④ 心嚢穿刺抜けば血圧が戻る
- 疑ったらベッドサイドの心エコーで心嚢液(心臓のまわりのエコーフリースペース)を確かめる。
- タンポナーデになっている印:拡張期に右室がつぶれる(右室虚脱)・右房の虚脱。下大静脈は太く張ったままで、呼吸で細くならない。
- 治療は心嚢穿刺(心嚢ドレナージ)。外傷では搬送の前にも行う。がんの末期でも、息苦しさを和らげるために勧める。
- 人工呼吸(陽圧換気)は、心臓に戻る血をさらに減らし、血圧を下げる。
- 大動脈解離による心タンポナーデは、穿刺より緊急手術を優先する(大動脈解離の項)。
画像で出たら 心エコーでは、心臓のまわりを黒い帯(エコーフリースペース)が囲む。量が多いと心臓が液の中で揺れ、心電図でQRSの高さが1拍ごとに変わる(電気的交互脈)。ゆっくりたまった時の胸部X線は、心陰影が左右に大きく丸く広がる。CTでは、心臓のまわりに液の層が見える。
収縮性心膜炎
心膜が厚く硬くなり(石灰化することも)、心室が拡張期に広がれない(拡張障害)。収縮する力は保たれる。心臓の手術や放射線治療の後、結核などで起こり、原因の分からないものも多い。
| 症状 | 右心不全が主体(頸静脈怒張・下腿浮腫・肝腫大・腹水)。左心不全が主体ではない |
|---|---|
| 診察 | 拡張早期の過剰心音(心膜ノック音)。吸気で頸静脈の怒張が強くなる(Kussmaul徴候) |
| 画像 | 胸部CTで心膜の肥厚・石灰化 |
| 心臓カテーテル | 心室圧のdip and plateau(拡張早期に一度下がり、すぐ平らになる)。左右の心室の拡張期圧が等しくなる |
| 治療 | 心膜切除術。利尿薬は症状を軽くするだけ |
- β遮断薬・ジギタリスは効かない。1回に送り出せる量が決まっているので、脈が遅くなると心拍出量が落ちる。
- 心嚢ドレナージでは治らない(液ではなく、心膜そのものの病気)。
画像で出たら 胸部CTでは、心臓を包む心膜が厚く、白く石灰化して縁どる。カテーテルの圧の記録では、左室と右室の拡張期の線が重なり、√の形(dip and plateau)になる。
心臓腫瘍(左房粘液腫)
原発性の心臓腫瘍で最も多いのは粘液腫(良性)。多くは左房にでき、心房中隔から茎でぶら下がって揺れる。心臓の腫瘍全体では、肺癌・乳癌などの転移のほうがずっと多い。原発性の悪性腫瘍(多くは肉腫)は予後が悪い。
| 心音 | 体位で強さが変わる心尖部の拡張期雑音(僧帽弁狭窄症に似る)。Ⅱ音の直後の過剰音(tumor plop) |
|---|---|
| 弁口をふさぐ | 腫瘍が拡張期に僧帽弁口へはまり込む。労作時の息切れ・失神(眼前暗黒感) |
| 全身症状 | 発熱・体重減少・関節痛・倦怠感。赤沈亢進・白血球増加・CRP上昇・γグロブリン高値(腫瘍がIL-6を出す)。膠原病や感染性心内膜炎と間違えやすい |
| 塞栓 | かけらが飛んで脳塞栓(片麻痺)。左心の腫瘍なので、肺塞栓は起こさない |
| 診断・治療 | 心エコー(左房の中に動く腫瘤)。見つけたら早めに摘出する(塞栓・突然死を防ぐ) |
似た病気との見分け
息で強まる胸痛・ST上昇のとき
| 急性心筋梗塞 | ST上昇は1本の冠動脈の領域だけで、反対側の誘導にST低下。トロポニンが上がり、その領域の壁運動が落ちる |
|---|---|
| 急性心筋炎 | かぜの後に、トロポニンの上昇と壁運動の低下。心不全や不整脈で急に悪くなる |
| 気胸 | 突然の胸痛と息苦しさ。片側の呼吸音が弱く、胸部X線で肺が縮んでいる |
ショックで頸静脈が怒張するとき
| 緊張性気胸 | 片側の呼吸音の消失・鼓音・気管の偏位。画像を待たずに脱気 |
|---|---|
| 肺血栓塞栓症 | 低酸素が目立つ。心エコーで右室が大きく、心嚢液はない |
拡張障害や、左房の腫瘤・拡張期雑音のとき
| 拘束型心筋症 | 心筋の病気(アミロイドーシスなど)で、心膜は厚くない。dip and plateauは出るが、心膜切除では治らない |
|---|---|
| 僧帽弁狭窄症 | リウマチ熱の既往。僧帽弁開放音に続く拡張期ランブル。心房細動を起こしやすく、左房(左心耳)に血栓ができる |
| 感染性心内膜炎 | 発熱と心雑音。血液培養が陽性で、心エコーで弁に疣贅 |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
かぜの数日後から、深く息を吸うと強くなる胸痛。広い範囲の誘導でST上昇。考える病気は?★★★必修
急性心膜炎
仰向けで強まり、座って前かがみになると楽になる。ST上昇が1本の冠動脈の領域に収まらず、反対側の誘導のST低下もない。
- Q2
急性心膜炎で聴こえる、特徴的な音は?★★★必修
心膜摩擦音
炎症を起こした心膜どうしがこすれる、ひっかくような高い音。収縮期にも拡張期にも聴こえ、時間や体位で変わる。
- Q3
急性心膜炎の治療で、まず使う薬は?★★★
NSAIDs(アスピリンなど)
再発を減らすためにコルヒチンを加える。心嚢液が増えてこないか、心エコーで見ていく。
- Q4
心タンポナーデの3徴(Beckの3徴)は?★★★必修
血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱
心臓が外から押されて血が入らず、静脈に血がたまり、送り出す血は減る。心音は液にさえぎられて遠くなる。
- Q5
吸気で、収縮期血圧が10 mmHg以上下がる所見は?★★★
奇脈
吸気で右室に入る血が増えても、心膜の中に逃げ場がない。中隔が左室側へ押され、左室から出る血が減る。
- Q6
心タンポナーデで、脈拍と脈圧はどうなる?★★★
頻脈・脈圧の低下
1回に送り出せる量が減るので、脈を速くして補う。徐脈にはならない。
- Q7
心嚢液がゆっくりたまった時の、心電図と胸部X線の所見は?★★★必修
低電位・心陰影の拡大
心臓のまわりの液で、電気が弱まって記録される。急にたまった時は少しの量でもタンポナーデになり、心陰影はあまり大きくならない。
- Q8
肺癌や乳癌の患者に心嚢液がたまり、心タンポナーデになった。原因は?★★★必修
がんの心膜転移(癌性心膜炎)
大腸癌などでも起こる。抗癌薬の治療中にも、治療をやめた後の末期にも起こる。
- Q9
心タンポナーデが急に起こりやすい場面は?(3つ)★★★
開心術の後・カテーテル治療(アブレーション・PCI)の後・胸部外傷
心臓やその近くが傷つき、心膜の中に血がたまる。ショックでも頸静脈が虚脱していれば、カテーテルの穿刺部からの出血(後腹膜血腫など)を考える。
- Q10
SLEの患者に、息苦しさと奇脈・心音の減弱・低電位。原因の病態は?★★★
心外膜炎(漿膜炎)による心嚢液の貯留
SLEの漿膜炎は、心膜にも胸膜にも起こる。SLEの心内膜炎(Libman-Sacks)は弁の病変で、奇脈や低電位は出ない。
- Q11
心タンポナーデを疑った。まず行う検査は?★★★必修
心エコー(ベッドサイドで)
心臓のまわりに心嚢液(エコーフリースペース)が見える。患者を動かさずにすぐでき、ショックのほかの原因も分かる。
- Q12
心エコーで、心タンポナーデを示す右室の所見は?★★★
拡張期の右室の虚脱
心膜の中の圧が上がると、圧の低い右房・右室から押しつぶされる。
- Q13
心タンポナーデの治療は?★★★必修
心嚢穿刺(心嚢ドレナージ)
少し抜くだけで血圧が戻ることが多い。外傷では搬送の前にも行う。がんの末期でも、息苦しさを和らげるために勧める。
- Q14
心膜が厚く硬くなり、心室が拡張期に広がれない病気は?★★★
収縮性心膜炎
収縮する力は保たれる。胸部CTで心膜の肥厚や石灰化が見える。
- Q15
収縮性心膜炎で主体になる心不全は?★★★
右心不全(頸静脈怒張・下腿浮腫・肝腫大・腹水)
左心不全が主体ではない。拡張早期に過剰心音(心膜ノック音)を聴く。
- Q16
収縮性心膜炎の心臓カテーテル検査で、心室圧の波形と、左右の心室の拡張期圧は?★★★
dip and plateau・左右で等しくなる
拡張早期に一気に血が入ってすぐ止まるので、圧が一度下がって平らになる。dip and plateauは拘束型心筋症でも出る。
- Q17
収縮性心膜炎の根本的な治療は?★★★
心膜切除術
利尿薬は症状を軽くするだけ。心嚢ドレナージは液がたまった時の治療で、硬くなった心膜は治らない。
- Q18
原発性の心臓腫瘍で最も多いのは?★★★
粘液腫(多くは左房)
良性で、心房中隔から茎でぶら下がる。心臓の腫瘍全体では、肺癌・乳癌などの転移のほうがずっと多い。
- Q19
体位で強さが変わる拡張期雑音に、発熱・体重減少・関節痛。考える病気は?★★★
左房粘液腫
腫瘍が拡張期に僧帽弁口へはまり込み、僧帽弁狭窄症に似た雑音と、息切れ・失神が出る。腫瘍が出すIL-6で炎症反応が上がり、膠原病や感染性心内膜炎と間違えやすい。
- Q20
左房粘液腫の診断に行う検査は?★★★
心エコー
左房の中に動く腫瘤が見え、拡張期に僧帽弁口をふさぐ。血液培養は陰性。
- Q21
左房粘液腫のかけらが飛んで起こりやすい塞栓は?★★★
脳塞栓(片麻痺)
左心の腫瘍なので、全身の動脈へ飛ぶ。肺塞栓は起こさない。
- Q22
左房粘液腫が見つかった。治療は?★★★
早めに外科的に摘出する
塞栓や弁口の閉塞による突然死を防ぐため。経過観察にはしない。
- Q23
吸気で、頸静脈の怒張がかえって強くなる所見は?★★★
Kussmaul徴候
ふつう吸気では頸静脈は細くなる。硬い心膜で右心が広がれない収縮性心膜炎で典型。心膜の炎症で心嚢液がたまった人にも出ることがある。
- Q24
左房粘液腫で、Ⅱ音の直後に聴こえる過剰音は?★★★
tumor plop
腫瘍が拡張期に左室側へ落ちこむ時の音。体位で聴こえ方が変わる。