出る順7

心膜疾患・心臓腫瘍

かぜの後の胸痛から、心タンポナーデ・左房粘液腫まで

28問
第101〜120回

マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題

まずこれだけ

  1. かぜの数日後に、深く息を吸うと強くなる胸痛。心膜摩擦音と広い範囲の誘導のST上昇があれば急性心膜炎。治療はNSAIDs。
  2. 血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱に奇脈があれば心タンポナーデ。ベッドサイドの心エコーで心嚢液を確かめ、心嚢穿刺。
  3. 体位で強さが変わる拡張期雑音に発熱・体重減少・関節痛があれば左房粘液腫。心エコーで見つける。

急性心膜炎

心臓を包む心膜の炎症。かぜ(ウイルス感染)の数日後に起こることが多い(原因の分からない特発性も、多くはウイルスによる)。

胸痛深く息を吸うと強くなる・仰向けで強くなる。座って前かがみになると楽になる。数時間〜数日続く
聴診心膜摩擦音(炎症を起こした心膜がこすれる、ひっかくような高い音。収縮期にも拡張期にも聴こえる)
心電図広い範囲の誘導でST上昇(下に凸)とPR部分の低下。1本の冠動脈の領域に収まらず、反対側の誘導のST低下(鏡像)がない
心エコー壁運動は正常で、心嚢液が少したまることがある
治療NSAIDs(アスピリンなど)。再発を減らすためにコルヒチンを加える
  • まず心電図・心エコー・胸部X線。運動負荷心電図はしない(急性心膜炎・心筋炎では禁忌)。
  • ST上昇があっても血栓溶解薬(t-PA)は使わない。冠動脈は詰まっておらず、心膜の中に出血する。

心タンポナーデ:起こり方と所見

心膜の中(心嚢)に液や血がたまって心臓が外から押され、拡張期に心室が広がれなくなる。心臓に血が入れず、送り出す血も減る。急にたまると(出血)少しの量でも起こり、ゆっくりたまると大量になるまで持ちこたえる。

Beckの3徴血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱
脈頻脈(徐脈にはならない)・脈圧が小さい・奇脈(吸気で収縮期血圧が10 mmHg以上下がる)。遅脈は出ない(遅脈は大動脈弁狭窄症)
ショック閉塞性ショック(緊張性気胸・広い肺塞栓と同じ)。中心静脈圧は早期から上がる
肺肺うっ血は起こらない(呼吸音はふつう正常)
心電図低電位・洞性頻脈
胸部X線ゆっくりたまると心陰影が拡大する(急にたまった時は、あまり大きくならない)

心嚢に液や血がたまる原因

ゆっくりたまるがんの心膜転移(癌性心膜炎):肺癌・乳癌・大腸癌など。SLE(漿膜炎)・結核・尿毒症・甲状腺機能低下症・ウイルス性心膜炎
急にたまる心臓の手術・カテーテル治療(アブレーション・PCI)の後。胸部外傷。A型大動脈解離の心嚢への破裂(大動脈解離の項)

心タンポナーデの検査と治療

  1. ① 診察頸静脈怒張・心音の減弱・奇脈
  2. ② 心電図・胸部X線低電位・心陰影の拡大
  3. ③ 心エコー心嚢液と右室の虚脱
  4. ④ 心嚢穿刺抜けば血圧が戻る
  • 疑ったらベッドサイドの心エコーで心嚢液(心臓のまわりのエコーフリースペース)を確かめる。
  • タンポナーデになっている印:拡張期に右室がつぶれる(右室虚脱)・右房の虚脱。下大静脈は太く張ったままで、呼吸で細くならない。
  • 治療は心嚢穿刺(心嚢ドレナージ)。外傷では搬送の前にも行う。がんの末期でも、息苦しさを和らげるために勧める。
  • 人工呼吸(陽圧換気)は、心臓に戻る血をさらに減らし、血圧を下げる。
  • 大動脈解離による心タンポナーデは、穿刺より緊急手術を優先する(大動脈解離の項)。

画像で出たら 心エコーでは、心臓のまわりを黒い帯(エコーフリースペース)が囲む。量が多いと心臓が液の中で揺れ、心電図でQRSの高さが1拍ごとに変わる(電気的交互脈)。ゆっくりたまった時の胸部X線は、心陰影が左右に大きく丸く広がる。CTでは、心臓のまわりに液の層が見える。

収縮性心膜炎

心膜が厚く硬くなり(石灰化することも)、心室が拡張期に広がれない(拡張障害)。収縮する力は保たれる。心臓の手術や放射線治療の後、結核などで起こり、原因の分からないものも多い。

症状右心不全が主体(頸静脈怒張・下腿浮腫・肝腫大・腹水)。左心不全が主体ではない
診察拡張早期の過剰心音(心膜ノック音)。吸気で頸静脈の怒張が強くなる(Kussmaul徴候)
画像胸部CTで心膜の肥厚・石灰化
心臓カテーテル心室圧のdip and plateau(拡張早期に一度下がり、すぐ平らになる)。左右の心室の拡張期圧が等しくなる
治療心膜切除術。利尿薬は症状を軽くするだけ
  • β遮断薬・ジギタリスは効かない。1回に送り出せる量が決まっているので、脈が遅くなると心拍出量が落ちる。
  • 心嚢ドレナージでは治らない(液ではなく、心膜そのものの病気)。

画像で出たら 胸部CTでは、心臓を包む心膜が厚く、白く石灰化して縁どる。カテーテルの圧の記録では、左室と右室の拡張期の線が重なり、√の形(dip and plateau)になる。

心臓腫瘍(左房粘液腫)

原発性の心臓腫瘍で最も多いのは粘液腫(良性)。多くは左房にでき、心房中隔から茎でぶら下がって揺れる。心臓の腫瘍全体では、肺癌・乳癌などの転移のほうがずっと多い。原発性の悪性腫瘍(多くは肉腫)は予後が悪い。

心音体位で強さが変わる心尖部の拡張期雑音(僧帽弁狭窄症に似る)。Ⅱ音の直後の過剰音(tumor plop)
弁口をふさぐ腫瘍が拡張期に僧帽弁口へはまり込む。労作時の息切れ・失神(眼前暗黒感)
全身症状発熱・体重減少・関節痛・倦怠感。赤沈亢進・白血球増加・CRP上昇・γグロブリン高値(腫瘍がIL-6を出す)。膠原病や感染性心内膜炎と間違えやすい
塞栓かけらが飛んで脳塞栓(片麻痺)。左心の腫瘍なので、肺塞栓は起こさない
診断・治療心エコー(左房の中に動く腫瘤)。見つけたら早めに摘出する(塞栓・突然死を防ぐ)

似た病気との見分け

息で強まる胸痛・ST上昇のとき

急性心筋梗塞ST上昇は1本の冠動脈の領域だけで、反対側の誘導にST低下。トロポニンが上がり、その領域の壁運動が落ちる
急性心筋炎かぜの後に、トロポニンの上昇と壁運動の低下。心不全や不整脈で急に悪くなる
気胸突然の胸痛と息苦しさ。片側の呼吸音が弱く、胸部X線で肺が縮んでいる

ショックで頸静脈が怒張するとき

緊張性気胸片側の呼吸音の消失・鼓音・気管の偏位。画像を待たずに脱気
肺血栓塞栓症低酸素が目立つ。心エコーで右室が大きく、心嚢液はない

拡張障害や、左房の腫瘤・拡張期雑音のとき

拘束型心筋症心筋の病気(アミロイドーシスなど)で、心膜は厚くない。dip and plateauは出るが、心膜切除では治らない
僧帽弁狭窄症リウマチ熱の既往。僧帽弁開放音に続く拡張期ランブル。心房細動を起こしやすく、左房(左心耳)に血栓ができる
感染性心内膜炎発熱と心雑音。血液培養が陽性で、心エコーで弁に疣贅

合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。

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一問一答

  1. Q1

    かぜの数日後から、深く息を吸うと強くなる胸痛。広い範囲の誘導でST上昇。考える病気は?★★★必修

    急性心膜炎

    仰向けで強まり、座って前かがみになると楽になる。ST上昇が1本の冠動脈の領域に収まらず、反対側の誘導のST低下もない。

    102D27107A33113B29114D72116E38104A12

  2. Q2

    急性心膜炎で聴こえる、特徴的な音は?★★★必修

    心膜摩擦音

    炎症を起こした心膜どうしがこすれる、ひっかくような高い音。収縮期にも拡張期にも聴こえ、時間や体位で変わる。

    113B29104A12102D27107A33114D72

  3. Q3

    急性心膜炎の治療で、まず使う薬は?★★★

    NSAIDs(アスピリンなど)

    再発を減らすためにコルヒチンを加える。心嚢液が増えてこないか、心エコーで見ていく。

    107A33

  4. Q4

    心タンポナーデの3徴(Beckの3徴)は?★★★必修

    血圧低下・頸静脈怒張・心音の減弱

    心臓が外から押されて血が入らず、静脈に血がたまり、送り出す血は減る。心音は液にさえぎられて遠くなる。

    101H26103A17109I50111A40111I61115F40116A19104D28105C30107F27108I41

  5. Q5

    吸気で、収縮期血圧が10 mmHg以上下がる所見は?★★★

    奇脈

    吸気で右室に入る血が増えても、心膜の中に逃げ場がない。中隔が左室側へ押され、左室から出る血が減る。

    101H26102G01104D28108I41111A40115A27116A19

  6. Q6

    心タンポナーデで、脈拍と脈圧はどうなる?★★★

    頻脈・脈圧の低下

    1回に送り出せる量が減るので、脈を速くして補う。徐脈にはならない。

    102G01103A17104D28108I41

  7. Q7

    心嚢液がゆっくりたまった時の、心電図と胸部X線の所見は?★★★必修

    低電位・心陰影の拡大

    心臓のまわりの液で、電気が弱まって記録される。急にたまった時は少しの量でもタンポナーデになり、心陰影はあまり大きくならない。

    105C30107F27115A27

  8. Q8

    肺癌や乳癌の患者に心嚢液がたまり、心タンポナーデになった。原因は?★★★必修

    がんの心膜転移(癌性心膜炎)

    大腸癌などでも起こる。抗癌薬の治療中にも、治療をやめた後の末期にも起こる。

    104D28105C30107F27108I41109I50

  9. Q9

    心タンポナーデが急に起こりやすい場面は?(3つ)★★★

    開心術の後・カテーテル治療(アブレーション・PCI)の後・胸部外傷

    心臓やその近くが傷つき、心膜の中に血がたまる。ショックでも頸静脈が虚脱していれば、カテーテルの穿刺部からの出血(後腹膜血腫など)を考える。

    115F40116A19105E44101H26

  10. Q10

    SLEの患者に、息苦しさと奇脈・心音の減弱・低電位。原因の病態は?★★★

    心外膜炎(漿膜炎)による心嚢液の貯留

    SLEの漿膜炎は、心膜にも胸膜にも起こる。SLEの心内膜炎(Libman-Sacks)は弁の病変で、奇脈や低電位は出ない。

    115A27111I61

  11. Q11

    心タンポナーデを疑った。まず行う検査は?★★★必修

    心エコー(ベッドサイドで)

    心臓のまわりに心嚢液(エコーフリースペース)が見える。患者を動かさずにすぐでき、ショックのほかの原因も分かる。

    105C30108I41111I61115A27101H26

  12. Q12

    心エコーで、心タンポナーデを示す右室の所見は?★★★

    拡張期の右室の虚脱

    心膜の中の圧が上がると、圧の低い右房・右室から押しつぶされる。

    117C70

  13. Q13

    心タンポナーデの治療は?★★★必修

    心嚢穿刺(心嚢ドレナージ)

    少し抜くだけで血圧が戻ることが多い。外傷では搬送の前にも行う。がんの末期でも、息苦しさを和らげるために勧める。

    107F27109I50110B52

  14. Q14

    心膜が厚く硬くなり、心室が拡張期に広がれない病気は?★★★

    収縮性心膜炎

    収縮する力は保たれる。胸部CTで心膜の肥厚や石灰化が見える。

    106D18114D41119D02

  15. Q15

    収縮性心膜炎で主体になる心不全は?★★★

    右心不全(頸静脈怒張・下腿浮腫・肝腫大・腹水)

    左心不全が主体ではない。拡張早期に過剰心音(心膜ノック音)を聴く。

    106D18114D41

  16. Q16

    収縮性心膜炎の心臓カテーテル検査で、心室圧の波形と、左右の心室の拡張期圧は?★★★

    dip and plateau・左右で等しくなる

    拡張早期に一気に血が入ってすぐ止まるので、圧が一度下がって平らになる。dip and plateauは拘束型心筋症でも出る。

    114D41119D02106D18

  17. Q17

    収縮性心膜炎の根本的な治療は?★★★

    心膜切除術

    利尿薬は症状を軽くするだけ。心嚢ドレナージは液がたまった時の治療で、硬くなった心膜は治らない。

    114D41

  18. Q18

    原発性の心臓腫瘍で最も多いのは?★★★

    粘液腫(多くは左房)

    良性で、心房中隔から茎でぶら下がる。心臓の腫瘍全体では、肺癌・乳癌などの転移のほうがずっと多い。

    111A09117A60107I56108D25110I43

  19. Q19

    体位で強さが変わる拡張期雑音に、発熱・体重減少・関節痛。考える病気は?★★★

    左房粘液腫

    腫瘍が拡張期に僧帽弁口へはまり込み、僧帽弁狭窄症に似た雑音と、息切れ・失神が出る。腫瘍が出すIL-6で炎症反応が上がり、膠原病や感染性心内膜炎と間違えやすい。

    117A60108D25110I43107I56

  20. Q20

    左房粘液腫の診断に行う検査は?★★★

    心エコー

    左房の中に動く腫瘤が見え、拡張期に僧帽弁口をふさぐ。血液培養は陰性。

    108D25110I43117A60

  21. Q21

    左房粘液腫のかけらが飛んで起こりやすい塞栓は?★★★

    脳塞栓(片麻痺)

    左心の腫瘍なので、全身の動脈へ飛ぶ。肺塞栓は起こさない。

    110I43111A09

  22. Q22

    左房粘液腫が見つかった。治療は?★★★

    早めに外科的に摘出する

    塞栓や弁口の閉塞による突然死を防ぐため。経過観察にはしない。

    117A60

  23. Q23

    吸気で、頸静脈の怒張がかえって強くなる所見は?★★★

    Kussmaul徴候

    ふつう吸気では頸静脈は細くなる。硬い心膜で右心が広がれない収縮性心膜炎で典型。心膜の炎症で心嚢液がたまった人にも出ることがある。

    115A27

  24. Q24

    左房粘液腫で、Ⅱ音の直後に聴こえる過剰音は?★★★

    tumor plop

    腫瘍が拡張期に左室側へ落ちこむ時の音。体位で聴こえ方が変わる。

    107I56

選択肢の○×

急性心膜炎

  1. 1

    急性心膜炎を疑ったら、運動負荷心電図で虚血がないか確かめる。禁忌114D72

  2. 2

    急性心膜炎でも、ST上昇があればt-PAなどの血栓溶解薬を使う。107A33

心タンポナーデ

  1. 3

    心タンポナーデのショックでは、中心静脈圧は低い。108G34112C17109B38

  2. 4

    心タンポナーデでは、肺うっ血が起こる。102G01

  3. 5

    甲状腺機能亢進症は、心嚢液がたまる原因になる。111I61

収縮性心膜炎

  1. 6

    収縮性心膜炎には、β遮断薬で脈を遅くすると効果がある。106D18114D41

心タンポナーデ

  1. 7

    心タンポナーデでは、遅脈を触れる。111A40

タンポナーデの検査・治療

  1. 8

    心タンポナーデでは、心エコーで下大静脈が虚脱して見える。117C70

  2. 9

    心タンポナーデで息苦しければ、まず人工呼吸器を付ける。107F27

心臓腫瘍

  1. 10

    心臓の原発性悪性腫瘍は、予後がよい。111A09