大動脈瘤・Marfan症候群
健診で見つかる拍動性腫瘤から、破裂・嗄声、Marfan症候群まで
25問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 多くは無症状で、健診やほかの検査で見つかる。腹部大動脈瘤は臍のまわりの拍動性腫瘤。突然の腰背部痛とショックなら破裂を考えて造影CT、すぐ手術へ。
- 弓部大動脈瘤は左反回神経を押して嗄声。手術は人工血管置換術かステントグラフト内挿術。
- Marfan症候群は常染色体顕性(優性)遺伝。高身長・クモ状指・水晶体偏位・自然気胸。大動脈基部が広がり、大動脈弁閉鎖不全と大動脈解離を起こす。
起こり方と原因
大動脈の壁が弱り、こぶのように広がったものが大動脈瘤。できる場所で、腹部大動脈瘤(腎動脈より下に多い)、胸部大動脈瘤(上行・弓部・下行)、両方にまたがる胸腹部大動脈瘤に分ける。多くは無症状で、健診やほかの病気の検査(超音波・CT・胸部X線)で見つかる。
| 動脈硬化 | 最も多い原因。高血圧のある高齢者に多い。喫煙は、瘤ができて大きくなる危険因子 |
|---|---|
| 壁がもろくなる病気 | Marfan症候群(中膜が弱く、大動脈基部から広がる)・梅毒(上行大動脈)・高安動脈炎(炎症で壁が傷む) |
- Buerger病は大動脈瘤の原因にならない。手足の末梢の細い動脈が詰まる病気。
腹部大動脈瘤:触診と破裂
| 破裂する前 | 臍のまわりに拍動性の腫瘤を触れる。後腹膜にあるので、呼吸では動かない。聴診で血管雑音(bruit)を聴くことがある |
|---|---|
| 破裂 | 突然の腰背部痛・腹痛と、ショック(冷汗・頻脈・血圧低下・意識の低下)。痛みが少し軽くなり、立ちくらみだけのこともある。側腹部から腰にかけての皮下出血は、後腹膜に出血したしるし |
- 高齢者の突然の腰痛を、尿路結石や腰椎の病気と決めつけない。お腹に拍動性の腫瘤があれば、まず破裂を考える。
胸部大動脈瘤:嗄声で見つかる
胸部大動脈瘤も多くは無症状。大きくなると、まわりを押して症状が出る。胸部X線では、縦隔の陰影が広がり、大動脈弓が突き出る。
| 左反回神経 | 嗄声。弓部の瘤が、大動脈弓の下をくぐって喉頭へ戻る左反回神経を押す。声帯が動かず、飲水でむせることもある |
|---|---|
| 食道 | 嚥下困難 |
| 気管・肺 | 喀血(瘤が破れこむ) |
| 破裂 | 突然死(胸腔・縦隔への大出血) |
検査と治療
- ① 触診・超音波拍動性腫瘤・瘤の径
- ② 造影CT大きさ・範囲・破裂
- ③ 手術を決める径・大きくなる速さ・症状
- ④ 手術人工血管かステントグラフト
- 疑ったら造影CTで、瘤の大きさ・範囲・枝との関係と、まわりの血腫(破裂)を見る。嗄声があり胸部X線で大動脈弓が突き出ていれば胸部CT。気管支鏡・呼吸機能検査ではない。
- 症状がなくても、大きい瘤は破裂する。腹部では男性で径5.5 cm以上(女性は5.0 cm以上)、急に大きくなるとき(半年で5 mm以上)、痛みがあるときに手術を考える。それまでは禁煙・降圧を続け、定期的に径を測る。
- 破裂したら、輸液・輸血で循環を保ちながら緊急手術。尿量が増えれば、循環が良くなったしるし。
手術は人工血管置換術かステントグラフト内挿術(破裂でも同じ)。動脈塞栓術・血栓溶解療法・血栓除去術では治らない。
| 人工血管置換術 | 開腹・開胸し、大動脈を遮断して瘤を人工血管に置き換える。負担が大きく、若く全身状態のよい人に向く |
|---|---|
| ステントグラフト内挿術 | 鼠径部の大腿動脈からカテーテルで入れ、瘤の内側に広げて瘤へ血が入らないようにする。負担が小さく、高齢・併存疾患の多い人に向く。日本の腹部大動脈瘤では、こちらのほうが多い |
- 胸腹部大動脈瘤の手術では、脊髄を養う動脈(Adamkiewicz動脈)の血流が途絶え、脊髄梗塞(対麻痺)になることがある。
Marfan症候群:見つけ方
結合組織をつくるフィブリリン1(FBN1)の遺伝子の異常で、大動脈の中膜・水晶体を支えるZinn小帯・骨格が弱くなる。常染色体顕性(優性)遺伝で、子やきょうだいに1/2で伝わる。染色体の異常ではなく、知能は正常。
| 骨格 | 高身長・やせ型で、手足と指が長い(クモ状指)。親指を握りこむと指先が小指側から出る(母指徴候)、手首を握ると親指と小指が重なる(手首徴候)。漏斗胸・側弯 |
|---|---|
| 眼 | 水晶体偏位(亜脱臼)。強い近視。散瞳して細隙灯顕微鏡で見る |
| 心臓・大動脈 | 大動脈基部の拡大(大動脈弁輪拡張症)から、大動脈弁閉鎖不全(胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音、脈圧が大きい)と大動脈解離。僧帽弁逸脱(収縮中期クリック。逆流があれば収縮期の高調な雑音) |
| 肺 | 自然気胸(肺尖のブラ) |
| 家族歴 | 若くして突然死した親、高身長のきょうだい |
- 若い人の大動脈解離、高身長の人の気胸や大動脈弁閉鎖不全を見たら、手指・眼・家族歴を確かめる。
- 大動脈弁閉鎖不全の拡張期雑音は、坐位で前かがみになり、息を吐いたところで最もよく聴こえる。
Marfan症候群:検査と管理
心エコーで大動脈基部の径と弁の逆流を、眼科検査で水晶体を見る。大動脈全体は造影CT・MRIで。染色体検査・頭部MRIは要らない。大動脈基部の拡大と水晶体偏位の2つがそろうことが、診断の決め手になる。
| 薬 | β遮断薬(ARBも)で心拍と血圧を下げ、大動脈が広がるのを遅らせる。ACE阻害薬も禁忌ではない |
|---|---|
| 生活 | 競技スポーツ・激しい運動は避ける(大動脈の手術のあとも)。胸痛・背部痛が出たらすぐ受診 |
| 経過 | 大動脈の病変は進む。生涯、定期的に画像で大動脈を調べる(手術のあとも、残った大動脈が広がる) |
| 手術 | 基部が大きく広がったとき、解離したとき、大動脈弁閉鎖不全が強いとき。大動脈弁と基部をまとめて置き換える(大動脈基部置換術:Bentall手術)。弁を残して基部だけ替える方法もある。弁尖は石灰化していない(広がるのは弁輪) |
| 家族 | 遺伝カウンセリングを案内する。高身長のきょうだいも調べる |
似た病気との見分け
突然の腰背部痛・腹痛のとき
| 大動脈解離 | 突然の激しい胸背部痛で始まり、痛む場所が移る。無症状で見つかることは少ない |
|---|---|
| 尿路結石 | 側腹部の疝痛と血尿。拍動性の腫瘤はなく、ショックにもならない |
| 椎体の圧迫骨折 | 骨粗鬆症の高齢者。軽い外力のあとの腰痛で、叩くと痛む |
嗄声のとき
| 肺癌・食道癌・甲状腺癌 | 腫瘍やリンパ節の転移が反回神経を巻きこむ。CTで大動脈とは別の腫瘤が見える |
|---|
高身長・水晶体偏位・大動脈の拡大のとき
| ホモシスチン尿症 | 体型と水晶体偏位が似る。知的障害と血栓症を伴う。常染色体潜性(劣性)遺伝で、新生児マススクリーニングの対象 |
|---|---|
| Klinefelter症候群 | 47,XXY。手足の長い高身長に、小さい精巣・女性化乳房 |
| Ehlers-Danlos症候群 | 皮膚がよく伸び、関節が動きすぎる。血管型では動脈や腸管が破れる |
| 高安動脈炎 | 若い女性。微熱と赤沈の亢進が続き、上肢の血圧の左右差・頸部の血管雑音。上行大動脈が広がり、大動脈弁閉鎖不全も起こす |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
大動脈瘤の原因で最も多いのは?★★★必修
動脈硬化(高血圧・喫煙が危険因子)
高血圧のある高齢者に多く、喫煙は瘤ができるのも大きくなるのも早める。ほかに、中膜が弱いMarfan症候群、梅毒、高安動脈炎でも瘤ができる。
- Q2
大動脈瘤は、多くの場合どのように見つかる?★★★
無症状のまま、健診やほかの病気の検査で偶然に
破裂するまで症状がないことが多い。触診・超音波・CT・胸部X線で見つかる。突然の激痛で始まる大動脈解離とは、ここが違う。
- Q3
腹部大動脈瘤を疑う、腹部の触診の所見は?★★★必修
臍のまわりの拍動性の腫瘤
後腹膜にあるので、呼吸では動かない。聴診で血管雑音(bruit)を聴くこともある。腹壁の静脈怒張は門脈圧亢進症の所見。
- Q4
高血圧の高齢者が、突然の腰背部痛でショックになった。腹部に拍動性の腫瘤。考える病気は?★★★必修
腹部大動脈瘤の破裂
後腹膜に出血し、側腹部から腰に皮下出血が出ることもある。尿路結石や腰椎の病気と思いこまない。
- Q5
腹部大動脈瘤の破裂を疑う。静脈路を確保したら行う検査は?★★★
腹部CT(造影)
瘤の大きさと、まわりの血腫(破裂)がすぐ分かる。腰椎MRI・静脈性尿路造影・腹部X線では分からない。ショックが強ければ、ベッドサイドの超音波で瘤を確かめてそのまま手術へ。
- Q6
破裂した腹部大動脈瘤に輸液を始めた。循環が良くなったことを示す所見は?★★★必修
尿量が増える
腎臓に血が回ってきたしるし。意識が落ちる、呼吸が速くなる、脈が極端に遅くなるのは、悪くなっているしるし。
- Q7
弓部大動脈瘤で嗄声が出るのは、どの神経が押されるから?★★★
左反回神経
左反回神経は大動脈弓の下をくぐって喉頭へ戻る。声帯が動かなくなり、飲水でむせることもある。
- Q8
弓部大動脈瘤で、嗄声のほかに起こりうるものは?(3つ)★★★
嚥下困難・喀血・突然死
食道を押すと嚥下困難、気管や肺に破れこむと喀血、破裂すると突然死する。
- Q9
嗄声が続き、胸部X線で大動脈弓が以前より突き出ている。次に行う検査は?★★★
胸部造影CT
瘤の径・範囲と枝との関係を見て、手術を決める。肺癌などの腫瘤との見分けにもなる。気管支鏡・呼吸機能検査ではない。
- Q10
大動脈瘤の手術は2つ。何と何?★★★
人工血管置換術・ステントグラフト内挿術
破裂した腹部大動脈瘤でも同じ。嗄声を起こした弓部の瘤も手術する。
- Q11
症状のない腹部大動脈瘤。手術を考える瘤の径は?★★★
男性で5.5 cm以上(女性は5.0 cm以上)
径が大きいほど破裂しやすく、破裂すると助かりにくい。急に大きくなるとき(半年で5 mm以上)、痛みがあるときも手術を考える。それまでは禁煙・降圧を続けて径を測る。
- Q12
胸腹部大動脈瘤の手術で、とくに注意する合併症は?★★★
脊髄梗塞(対麻痺)
脊髄を養う肋間動脈・腰動脈(Adamkiewicz動脈)の血流が途絶えて起こる。ステントグラフトでも起こる。
- Q13
Marfan症候群の遺伝形式は?★★★
常染色体顕性(優性)遺伝
フィブリリン1(FBN1)遺伝子の異常。子やきょうだいに1/2で伝わるので、高身長のきょうだいも調べ、遺伝カウンセリングを案内する。
- Q14
高身長で水晶体偏位がある。手に見られる所見は?★★★必修
クモ状指(長い指)
親指を握りこむと指先が小指側から出る(母指徴候)、手首を握ると親指と小指が重なる(手首徴候)。漏斗胸・側弯もよく見る。
- Q15
Marfan症候群の眼の所見は?★★★
水晶体偏位(亜脱臼)
水晶体を支えるZinn小帯が弱い。強い近視も多い。散瞳して細隙灯顕微鏡で見る。
- Q16
Marfan症候群で広がりやすい大動脈の部位は?★★★必修
大動脈基部(弁輪〜Valsalva洞)
中膜が弱く、基部から広がる(大動脈弁輪拡張症)。大動脈弁閉鎖不全と大動脈解離のもとになる。
- Q17
上行大動脈の基部が広がると起こる弁膜症は?★★★必修
大動脈弁閉鎖不全
弁輪が広がり、弁が閉じなくなる。胸骨左縁第3肋間の拡張期雑音で、脈圧が大きい。雑音は坐位で前かがみ・息を吐いたところでよく聴こえる。上行大動脈瘤は、僧帽弁閉鎖不全の原因にはなりにくい。
- Q18
Marfan症候群の小児。心尖部で収縮中期クリックを聴く。原因は?★★★
僧帽弁逸脱
弁がたわんで左房側にはみ出す。逆流が加わると、クリックに続いて収縮期の高調な雑音を聴く。
- Q19
Marfan症候群で起こりやすい肺の合併症は?★★★必修
自然気胸
肺尖にブラができやすい。気胸の既往は、Marfan症候群を疑う手がかりにもなる。
- Q20
気胸の既往がある高身長の若い男性。親が若くして突然死している。突然の胸背部痛。背景にある病気は?★★★必修
Marfan症候群
大動脈基部から解離し、上行大動脈に及ぶ(Stanford A型)ことが多い。若い人の大動脈解離では、手指・眼・家族歴を確かめる。
- Q21
Marfan症候群を疑ったとき、方針を決めるために行う検査は?(2つ)★★★必修
心エコー・眼科検査
心エコーで大動脈基部の径と弁の逆流を、眼科で水晶体偏位を見る。大動脈全体は造影CT・MRIで調べる。
- Q22
Marfan症候群で、大動脈が広がるのを遅らせるために飲む薬は?★★★
β遮断薬(ARBも)
心拍と血圧を下げ、大動脈の壁にかかる力を減らす。
- Q23
Marfan症候群で、大動脈基部が広がり大動脈弁閉鎖不全もある。行う手術は?★★★
大動脈基部置換術(Bentall手術)
人工弁のついた人工血管で、大動脈弁と基部をまとめて置き換え、冠動脈をつなぎ直す。弁を残して基部だけ替える方法もある。
- Q24
ステントグラフト内挿術で、カテーテルを入れる血管は?★★★
大腿動脈(鼠径部)
瘤の内側に人工血管を広げ、瘤に血が入らないようにする。日本の腹部大動脈瘤の手術では、今はこちらのほうが多い。