心房細動
脈の乱れる動悸から、抗凝固と心拍数・調律の治療まで
19問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 突然始まる、脈がバラバラに乱れる動悸。心電図はP波がなく、RR間隔がまったく不規則。症状がなく健診で見つかっても、様子を見ない。
- CHADS2スコアで脳塞栓の危険を見て抗凝固薬(弁膜症がなければDOAC)。抗血小板薬では代わりにならない。機械弁・僧帽弁狭窄症はワルファリン。
- 落ち着いていればβ遮断薬で心拍数を下げる。48時間以上続いていれば、抗凝固をしてから除細動。ショックやWPW症候群の心房細動はすぐ電気的除細動。
見つけ方:動悸・脈・心電図
心房の中で電気がばらばらに興奮し(350〜600/分)、心房は細かく震えるだけで縮まない。その一部だけが房室結節を通って心室へ伝わるので、脈はまったく不規則になる。
| 症状 | 突然始まる動悸。脈がバラバラに乱れて速い。自然に止まり、来院時には脈が整っていることもある(発作性)。症状がなく、健診の心電図で見つかることも多い |
|---|---|
| 脈と心音 | 脈の強さも間隔もそろわない。拡張期の短い拍は手首まで届かず、脈拍数が心拍数より少なくなる(脈拍欠損)。Ⅰ音の強さが拍ごとに変わる。心房が縮まないので、頸静脈波のa波が消える |
| 心電図 | P波がなく、基線が細かく揺れ(f波)、RR間隔がまったく不規則。QRSの幅はふつう狭い |
- 7日以内に自然に止まるものを発作性、それより長く続くものを持続性という。
- 症状がなくても、高齢者によくあるからと様子を見ない。精査と治療(抗凝固の判断)を勧める。
- 心房粗動は、心房の中を電気が約300/分で規則的に回る。Ⅱ・Ⅲ・aVFにのこぎりの歯のような波(F波)が並び、2:1で伝わると心拍数150/分前後で整。心拍数を下げる薬と抗凝固は心房細動と同じに考え、根治はカテーテルアブレーション。
画像で出たら P波の代わりに基線が細かく不規則に揺れ、QRSの間隔がそろわない(Ⅱ・V1で見やすい)。心房粗動では、のこぎりの歯が規則正しく並ぶ。
原因と合併症:血栓が飛ぶ
起こりやすいのは、高齢・高血圧・弁膜症(特に僧帽弁)・心不全・心筋症・大量の飲酒。甲状腺機能亢進症・睡眠時無呼吸・心房中隔欠損症(閉じた後も)でも起こる。見つけたら、心エコー(弁膜症・心機能・左房の大きさ)と甲状腺機能を調べる。
心房が縮まないと、左房(特に左心耳)で血がよどんで血栓ができ、はがれて全身の動脈に詰まる。僧帽弁狭窄症に心房細動が重なると、特に多い。
| 脳:心原性脳塞栓症 | 突然の片麻痺・失語・意識障害。皮質を含む広い梗塞。30分ほどで消えても(一過性脳虚血発作)、抗凝固を始める |
|---|---|
| 腸:上腸間膜動脈閉塞症 | 突然の激しい腹痛。はじめは腹部の所見が軽い。代謝性アシドーシス・LDの上昇。腸が壊死していれば緊急開腹 |
| 腎:腎梗塞 | 突然の側腹部痛・血尿、LDの著しい上昇。造影CTで楔形の造影欠損。除細動の後に起こることもある |
| 手足:急性動脈閉塞症 | 突然の痛み・蒼白・冷感・脈が触れない(くわしくは末梢血管疾患で) |
| 眼:網膜動脈閉塞症 | 突然の片眼の視力低下(痛みはない) |
- 速い心拍が続くと、心不全を起こす・悪くする(くわしくは心不全で)。
抗凝固療法:脳塞栓を防ぐ
心房細動で、まず考えるのは脳塞栓を防ぐ抗凝固療法。危険の大きさはCHADS2スコアで見る。
| 頭文字 | 危険因子 | 点 |
|---|---|---|
| C | 心不全 | 1 |
| H | 高血圧(治療中も含む) | 1 |
| A | 75歳以上 | 1 |
| D | 糖尿病 | 1 |
| S2 | 脳卒中・一過性脳虚血発作の既往 | 2 |
点が高いほど脳塞栓が起こりやすく、1点以上で抗凝固療法を行う(DOACを勧める)。脂質異常症は入らず、家族の脳梗塞も数えない。発作性でも、持続性と同じように考える。
| 非弁膜症性心房細動 | 機械弁・中等度以上の僧帽弁狭窄症のないもの。DOAC(ダビガトラン・リバーロキサバン・アピキサバン・エドキサバン)をワルファリンより先に選ぶ。PT-INRで量を合わせなくてよく、頭蓋内出血が少ない。腎機能を見て量を決める |
|---|---|
| 機械弁・僧帽弁狭窄症(中等度以上) | ワルファリン(DOACは使えない)。PT-INRを見て量を合わせ、目標の範囲にあれば、そのまま続ける。アブレーションで洞調律に戻っても続ける |
- アスピリンなどの抗血小板薬では代わりにならない(脳梗塞の再発予防も、抗凝固薬で)。
- 出血は増える。ワルファリンを飲んでいると、軽い打撲でも大きな皮下血腫ができる。
- 植込み型ペースメーカーだけなら、抗凝固療法は要らない(必須なのは機械弁・ECMO・人工心肺・植込み型補助人工心臓)。
心拍数を下げる・洞調律に戻す
抗凝固に加えて、心拍数を下げる(レートコントロール)か、洞調律に戻して保つ(リズムコントロール)。血行動態が落ち着いていれば、急いで洞調律に戻さない。
| 心拍数を下げる | β遮断薬が基本(房室結節の伝導を抑える)。ベラパミル・ジルチアゼムも使う(心機能が落ちていれば使わない)。ジギタリスは効き始めが遅く、心機能が落ちた例で使う。アトロピンは使わない(心拍数を上げる) |
|---|---|
| 洞調律に戻す | 抗不整脈薬(心機能が保たれていればⅠ群薬、落ちていればアミオダロン)か、電気的除細動(カルディオバージョン)。48時間以上続く・いつ始まったか分からないときは、3週間以上の抗凝固をしてから。待てなければ、経食道心エコーで左房に血栓がないことを確かめて行う。戻した後も4週間は抗凝固を続ける |
| 再発を防ぐ | カテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)。症状のある発作性心房細動によく効く。救急で最初に行う治療ではない(後日、予定して行う) |
- 48時間たつと左房に血栓ができていることがあり、洞調律に戻って心房が動き出した時に飛ぶ。
- ATPの急速静注では、心房細動は止まらない(発作性上室頻拍を止める薬)。
急ぐとき・気をつける組み合わせ
| 血行動態が不安定 | ショック・意識障害・急性心不全・胸痛があれば、待たずにすぐ電気的除細動(QRSに同期させる) |
|---|---|
| WPW症候群に心房細動 | 副伝導路を通って心室へ速く伝わり、幅の広いQRSが不規則に速く続く(心室頻拍に似る)。心室細動になりうる。ショックならすぐ電気的除細動。ジギタリス・ベラパミル・β遮断薬など、房室結節を抑える薬は使わない。落ち着いていればⅠ群の抗不整脈薬。根治は副伝導路のカテーテルアブレーション |
| 長いRR間隔 | 徐脈を起こす薬がないのに、数秒のRR間隔でふらつき・失神 → ペースメーカー植込み。頻脈の時があっても、β遮断薬で抑えると停止が長くなる |
似た病気との見分け
動悸のとき
| 発作性上室頻拍 | 突然始まり突然止まる、規則的な速い動悸(150〜200/分)。QRS幅の狭い頻拍で、P波が見えにくい。迷走神経刺激やATPで止まる |
|---|---|
| 期外収縮 | 「脈が飛ぶ・抜ける」感じ。単発で、続く動悸にはならない |
| 心室頻拍 | 幅の広いQRSが規則的に続く。失神・ショックになりやすい |
| 甲状腺機能亢進症 | 若い人の心房細動に、体重減少・手指の振戦・暑がり。TSH↓・FT4↑ |
心房細動に、めまい・失神が重なるとき
| 洞不全症候群(徐脈頻脈症候群) | 発作性心房細動が止まった直後に、数秒の洞停止。β遮断薬・Ca拮抗薬・抗不整脈薬で悪くなる(始めた後なら、まず中止)。ペースメーカーと、心房細動へのアブレーション |
|---|
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
突然始まる動悸。脈がバラバラに乱れて速く、数分〜数時間で自然に治まった。考える不整脈は?★★★
発作性心房細動
来院時は洞調律に戻り、脈が整っていることも多い。脈が規則的なら発作性上室頻拍、「脈が飛ぶ」だけなら期外収縮を考える。
- Q2
心電図でP波がなく、基線が細かく揺れ、RR間隔がまったく不規則。読みは?★★★
心房細動(細かい揺れはf波)
心房が350〜600/分でばらばらに興奮し、その一部だけが不規則に心室へ伝わる。QRSの幅はふつう狭い。
- Q3
心房細動で、聴診や心電図で数える心拍数より、手首で数える脈拍数が少なくなる。この現象は?★★★必修
脈拍欠損
拡張期の短い拍では左室に血がたまらず、手首まで脈が届かない。心拍数は聴診か心電図で数える。
- Q4
脈拍150/分前後で整。心電図のⅡ・Ⅲ・aVFに、のこぎりの歯のような波が並ぶ。考える不整脈は?★★★
心房粗動(2:1伝導)
心房の中を電気が約300/分で規則的に回り、その半分が心室へ伝わる。心拍数を下げる薬と抗凝固の考え方は心房細動と同じ。根治はカテーテルアブレーション。
- Q5
CHADS2スコアで数える項目と点数は?★★★必修
心不全・高血圧・75歳以上・糖尿病が各1点、脳卒中・一過性脳虚血発作の既往が2点
点が高いほど脳塞栓が起こりやすい。脂質異常症は入らない(動脈硬化の危険因子だが、左房の血栓とは別)。
- Q6
75歳、高血圧を食事療法中。症状のない心房細動で、心機能は正常。まず行うのは?★★★
抗凝固薬(DOAC)の投与
CHADS2スコアは2点(75歳以上・高血圧)。急いで洞調律に戻さず、まず脳塞栓を防ぐ。
- Q7
76歳、高血圧で治療中。数日前から動悸があり、今朝、右片麻痺と構音障害が出て30分で消えた。心電図は新しい心房細動。必要な治療は?★★★必修
抗凝固療法(血液を固まりにくくする薬)
一過性脳虚血発作でも、次は本当の脳塞栓になりうる。CHADS2スコアは、75歳以上(1点)・高血圧(1点)・一過性脳虚血発作(2点)で4点。
- Q8
機械弁置換後や、中等度以上の僧帽弁狭窄症に合併した心房細動。使う抗凝固薬は?★★★
ワルファリン(DOACは使えない)
DOACでは、機械弁の血栓と出血がかえって増える。PT-INRを見て量を合わせる。
- Q9
スタチン・Ca拮抗薬・ARB・ビグアナイド薬・ワルファリンを飲む人が、軽い打撲の後に下腿の皮下血腫が広がった。関係する薬は?★★★
ワルファリン
抗凝固薬で血が止まりにくい。PT-INRが効きすぎていないかを確かめる。
- Q10
血行動態の落ち着いた頻脈性の心房細動。抗凝固薬とともに、心拍数を下げるため最初に使う薬は?★★★
β遮断薬
房室結節の伝導を抑える(レートコントロール)。ベラパミル・ジルチアゼムも使える。ジギタリスは効き始めが遅く、心機能が落ちた例で使う。心房粗動でも同じ。
- Q11
3日前から続く心房細動。血行動態は安定。電気的除細動の前に、まず行うのは?★★★
抗凝固療法(3週間以上。急ぐなら経食道心エコーで左房の血栓を否定する)
48時間以上たつと左房に血栓ができていることがあり、洞調律に戻った時に飛ぶ。除細動の後も4週間は抗凝固を続ける。
- Q12
症状のある発作性心房細動。再発を防ぎ、根治をめざす治療は?★★★
カテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)
心房細動のきっかけになる肺静脈からの興奮を、左房から電気的に切り離す。救急で最初に行う治療ではなく、後日、予定して行う。
- Q13
WPW症候群の人に、幅の広いQRSが不規則に速く続く頻拍。血圧64/48 mmHgで意識が低下している。次に行うのは?★★★
電気的除細動(カルディオバージョン)
心房細動が副伝導路を通って速く伝わっており、心室細動になりうる。WPW症候群でなくても、血行動態が不安定な心房細動はすぐ電気的除細動。
- Q14
持続性心房細動。徐脈を起こす薬は飲んでいないが、Holter心電図で最大6.4秒のRR間隔があり、ふらつきと失神をくり返す。方針は?★★★必修
心臓ペースメーカー植込み
症状のある徐脈で、原因になる薬もない。Holterの再検は要らない。ICDは心室頻拍・心室細動に使うもの。
- Q15
68歳。高血圧と糖尿病で治療中。心機能は正常で、脳卒中の既往はない。兄は脳梗塞で亡くなった。CHADS2スコアは?★★★必修
2点
高血圧1点と糖尿病1点。S2は本人の既往で、家族の脳梗塞は数えない。
選択肢の○×
抗凝固
- 2発作性でも脳塞栓は起こる。いま洞調律かどうかではなく、持続性と同じくCHADS2スコアで決める。
- 3予防になるのは抗凝固薬(DOAC・ワルファリン)。左房でよどんだ血が固まる血栓なので、抗血小板薬ではほとんど防げない。抗血小板薬は、動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞に使う。
- 4
機械弁でワルファリンを飲んでいる人が、新たに心房細動になった。PT-INRは目標の範囲にある。ヘパリンかDOACを追加する。112D19
いまの抗凝固療法をそのまま続ける。足すと出血が増え、DOACは機械弁には使えない。ビタミンKや止血薬も使わない。 - 5
機械弁置換後の心房細動が、アブレーションで洞調律に戻った。ワルファリンはやめてよい。115F47
抗凝固が要るのは機械弁があるから。生涯続ける。アスピリンやDOACに替えず、動悸の時だけの頓服にもしない。
治療
- 6
頻脈性の心房細動に、アトロピンを使う。103I60
アトロピンは心拍数を上げる、徐脈の薬。心拍数を下げるのはβ遮断薬・Ca拮抗薬・ジギタリス。
急ぐとき
- 7
WPW症候群に起こった心房細動は、ジギタリスやベラパミルで心拍数を下げる。禁忌111D21
房室結節だけが抑えられ、副伝導路を通る興奮が増えて心室細動になりうる。β遮断薬・ATPも同じ。ショックなら電気的除細動、落ち着いていればⅠ群の抗不整脈薬。根治は副伝導路のカテーテルアブレーション。