肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症
術後の突然の呼吸困難から、検査・治療・予防まで
45問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 術後・産褥・長期臥床の人が、初めて歩いた時に突然の呼吸困難・胸痛。SpO2が低いのに、呼吸音と胸部X線は正常なら肺血栓塞栓症。
- Dダイマーが陰性なら否定できる。確定は胸部造影CT。片側の下肢が腫れたら下肢静脈超音波でDVTを探す。
- 血圧が保たれていればすぐヘパリンで抗凝固。予防は早期離床と弾性ストッキング。
起こり方と危険因子
下肢・骨盤の深い静脈にできた血栓(深部静脈血栓症=DVT)がはがれ、肺動脈に詰まるのが肺血栓塞栓症。肺に詰まる血栓の多くは、下肢・骨盤の深部静脈から来る。危険因子は、血栓ができる3つの条件(Virchowの3徴)で整理する。
| 血がよどむ | 長期臥床・長時間の座位(飛行機・車中泊)・手術のあと(とくに下肢の人工関節・大腿骨骨折の手術)・肥満 |
|---|---|
| 固まりやすい | 妊娠・産褥(帝王切開のあと)・妊娠悪阻の脱水・経口避妊薬・ホルモン補充療法・悪性腫瘍・ネフローゼ症候群・抗リン脂質抗体症候群・アンチトロンビン/プロテインC/プロテインSの欠乏症 |
| 血管の壁が傷む | 中心静脈カテーテル・手術。DVTの既往があれば再発しやすい |
- やせ(るいそう)・う歯の治療は危険因子ではない。
- 左下肢に多い。右総腸骨動脈が左総腸骨静脈を前から押さえるため(妊婦のDVTも左に多い)。
- 妊娠中より産褥期に多い。
症状:DVTと肺塞栓
| 深部静脈血栓症 | 片側の下肢全体が急に腫れて痛む。暗赤色で、押すと圧痕が残る。足首を背屈するとふくらはぎが痛む(Homans徴候)。冷たく白くはならない(それは動脈の閉塞) |
|---|---|
| 肺血栓塞栓症 | 術後・産褥の初回歩行(トイレ・洗面)で、突然の呼吸困難・胸痛。頻呼吸・頻脈。SpO2が低いのに、呼吸音と胸部X線は正常。Ⅱ音の亢進 |
| 広い肺塞栓 | 血圧低下・頸静脈怒張の閉塞性ショック、失神、心停止。負担がかかるのは右心で、左心不全にはならない |
- 術後は1〜2日たってから、安静の後に初めて立って歩く時に多い。安静中にできた血栓が、動いた時にはがれる。
検査の順番
- ① SpO2・血液ガスPaO2↓・PaCO2↓
- ② Dダイマー陰性なら否定
- ③ 心エコー右室の拡大
- ④ 胸部造影CT肺動脈の造影欠損で確定
- 血液ガス:PaO2↓・PaCO2↓(過換気)・A-aDO2開大。
- 心電図:洞性頻脈だけのことが多い。電気軸は正常のことが多い。
- Dダイマーが陰性なら否定できる(疑いが強ければ、そのまま造影CT)。陽性でも確定はできない(手術・妊娠・がん・炎症でも上がる)。
- 心エコー:右室が拡大し、左室は押されて小さい。ベッドサイドですぐでき、重症度も分かる。
- 造影CTで確定。胸部から下肢まで撮れば、DVTも同時に分かる。造影剤が使えなければ肺血流シンチ(血流の欠損)。
- DVT:下肢静脈超音波。押してもつぶれない静脈が血栓。
- 使わない:呼吸機能検査(DLco・スパイロメトリ)。
- 全身麻酔中に起こると、呼気終末CO2が下がる。
画像で出たら 造影CTでは、肺動脈の中に造影されない影(血栓)が抜けて見える。下肢静脈超音波では、押しても静脈がつぶれない。心エコーでは右室が大きく、左室が押されてD字形になる。
治療
| 血圧が保たれている | すぐ抗凝固療法(まずヘパリン)。DVTも同じ。続けて内服の抗凝固薬。リバーロキサバン・アピキサバンなら、初めから内服で始めてもよい。ワルファリンは効くまで数日かかる |
|---|---|
| ショック | 出血の危険がなければ血栓溶解療法(手術の直後は出血するので、すぐには使わない)。使えなければ、カテーテルや手術で血栓を取る |
| 心停止 | ECMOで循環を保ち、血栓を溶かす・取る治療につなぐ |
| 下大静脈フィルター | 抗凝固療法ができないとき、十分な抗凝固でも再発するとき。回収できる型を一時的に置く。詰まった肺動脈は開かない |
| 妊娠中 | ヘパリン(胎盤を通らない)。ワルファリンは胎盤を通り、催奇形性がある |
- 静脈の血栓に抗血小板薬(アスピリン)は使わない。抗血小板薬は、動脈の血栓(心筋梗塞・脳梗塞)の薬。
予防
早期離床と弾性ストッキング(間欠的空気圧迫法も)が基本。手術中から始める。危険の高い手術では抗凝固薬も使う。出血していて抗凝固薬が使えない人も、弾性ストッキングなどで予防する。脱水と長い臥床は避ける。
似た病気との見分け
下肢が腫れたとき
| 急性動脈閉塞 | 突然の痛み。下肢が冷たく蒼白で、脈が触れない |
|---|---|
| 蜂窩織炎 | 発熱。皮膚の傷などから広がる発赤・熱感・圧痛 |
| リンパ浮腫 | ゆっくり進む片側のむくみ。圧痕が残りにくい。骨盤の手術・放射線治療のあと。リンパ管静脈吻合術はこちらの治療 |
突然の呼吸困難のとき
| 急性冠症候群 | ST変化、トロポニンの上昇、責任血管の領域の壁運動低下 |
|---|---|
| 羊水塞栓症 | 分娩中〜分娩直後。急なショックとDIC |
| 脂肪塞栓症 | 長管骨の骨折の1〜3日後。点状出血と意識障害を伴う |
| 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 | 数か月かけて進む労作時の息切れ。抗凝固療法を続け、在宅酸素療法も |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
長く動かないことで、下肢に静脈血栓ができやすい場面は?(2つ)★★★必修
長期臥床・長時間の座位(飛行機・車中泊)
ふくらはぎの筋肉が動かず、静脈の血がよどむ。長いフライトのあとに起こるものは、エコノミークラス症候群とも呼ぶ。
- Q2
整形外科で、DVTの危険がとくに高い手術は?★★★
下肢の人工関節置換術(股・膝)・大腿骨骨折の手術
手術そのものに、術後しばらく下肢を動かせないことが重なる。
- Q3
妊娠・出産で、静脈血栓が最も起こりやすい時期は?★★★必修
産褥期(とくに帝王切開のあと)
妊娠中より多い。帝王切開のあとに片側の下腿が腫れて痛めば、すぐ精査する。
- Q4
妊娠初期に、脱水からDVTの原因になる合併症は?★★★必修
妊娠悪阻
嘔吐で脱水になり、血液が濃くなる。妊娠そのものも血液を固まりやすくする。
- Q5
血液を固まりやすくし、静脈血栓の危険因子になる薬は?(エストロゲンを含む2種類)★★★必修
経口避妊薬・ホルモン補充療法
肝臓で凝固因子が多くつくられる。静脈血栓症の既往がある人には使わない(禁忌)。
- Q6
静脈血栓を起こしやすくする病気は?(3つ)★★★必修
悪性腫瘍・ネフローゼ症候群・抗リン脂質抗体症候群
がんは凝固を進める物質を出す。ネフローゼでは尿にアンチトロンビンが失われ、血液も濃くなる。抗リン脂質抗体症候群は動脈にも静脈にも血栓をつくり、流産をくり返す。
- Q7
凝固を抑える因子が生まれつき少なく、若いうちから静脈血栓を起こす病気は?(3つ)★★★
アンチトロンビン欠乏症・プロテインC欠乏症・プロテインS欠乏症
家族にも若い時の血栓症があれば疑う。フィブリノゲンや第XIII因子の欠乏は、反対に出血しやすくなる。
- Q8
DVTが左下肢に多いのは、左総腸骨静脈がどの血管に押されるから?★★★
右総腸骨動脈
前から腰椎に押しつけられる。妊婦のDVTも左に多い。
- Q9
肺塞栓の血栓の多くは、どこでできたもの?★★★
下肢・骨盤の深部静脈
肺塞栓を見たら下肢も調べ、DVTを見たら肺塞栓に気をつける。
- Q10
片側の下肢全体が急に腫れて痛む。考える病気は?★★★必修
深部静脈血栓症
暗赤色になり、足首を背屈するとふくらはぎが痛む(Homans徴候)。心不全・ネフローゼ・肝硬変のむくみは両側に出る。
- Q11
術後や産褥の患者が、初めて歩いた時に突然の呼吸困難と胸痛。考える病気は?★★★必修
肺血栓塞栓症
安静中に下肢にできた血栓が、立って歩いた時にはがれて肺に飛ぶ。トイレや洗面の時に多い。
- Q12
SpO2が低いのに、肺の聴診と胸部X線は?★★★必修
正常のことが多い
低酸素なのに肺の音も写真もきれい、が肺塞栓の手がかり。気胸では呼吸音が減り、肺炎・心不全ではcracklesを聴く。
- Q13
肺塞栓で、心音はどうなる?★★★
Ⅱ音が亢進する(肺動脈の成分)
肺動脈の圧が上がるため。胸骨左縁第2肋間でよく聴こえる。
- Q14
広い肺塞栓で、血圧が下がり頸静脈が怒張した。ショックの分類は?★★★
閉塞性ショック
肺動脈が詰まり、左心に戻る血が減る。失神で来ることもある。緊張性気胸・心タンポナーデも同じ分類。
- Q15
肺塞栓の血液ガスで、PaO2・PaCO2・A-aDO2は?★★★必修
↓・↓・開大
息苦しくて呼吸が速くなり、CO2が抜ける(呼吸性アルカローシス)。CO2がたまるのは、COPD・神経筋疾患・薬物などで換気が落ちたとき。
- Q16
肺塞栓の心電図で、最も多い所見は?★★★
洞性頻脈
電気軸は正常のことが多い。右心の負担が強いと、SⅠQⅢTⅢやV1〜V3の陰性T波が出る。
- Q17
肺塞栓を疑う。陰性なら否定できる血液検査は?★★★
Dダイマー
感度が高い。疑いが強ければ、結果を待たずに造影CT。胸部X線・心電図・LDが正常でも否定はできない。
- Q18
肺塞栓の確定診断に行う検査は?★★★
胸部造影CT(肺動脈の造影欠損)
胸部から下肢まで撮れば、DVTも1回で分かる。
- Q19
ベッドサイドですぐでき、肺塞栓の右心の負担と重症度が分かる検査は?★★★
心エコー(右室の拡大・左室の圧排)
ショックのほかの原因(心タンポナーデ・心筋梗塞など)との見分けにも使う。
- Q20
片側の下肢が腫れ、Dダイマーが高い。まず行う検査は?★★★必修
下肢静脈超音波(圧迫法)
プローブで押してもつぶれない静脈に血栓がある。体に負担がなく、感度・特異度とも高い。
- Q21
血圧が保たれた肺塞栓・DVT。すぐ始める治療は?★★★必修
抗凝固療法(まずヘパリン)
血栓が大きくなるのと再発を防ぐ。その後は内服の抗凝固薬を続ける。
- Q22
妊娠中のDVT・肺塞栓に使う抗凝固薬は?★★★
ヘパリン
胎盤を通らない。ワルファリンは胎盤を通り、催奇形性がある。
- Q23
広い肺塞栓で心停止。心肺蘇生で心拍が戻らない。次に考える治療は?★★★
ECMO(体外式膜型人工肺)
右心を通らずに循環と酸素化を保ち、血栓を溶かす・取る治療までの時間をかせぐ。
- Q24
抗凝固療法ができないDVT・肺塞栓で、肺への新しい塞栓を防ぐために置くものは?★★★
下大静脈フィルター
十分な抗凝固でも再発するときにも考える。最初の治療ではなく、すでに詰まった肺動脈は開かない。
- Q25
手術の患者で、肺塞栓を防ぐための基本は?(2つ)★★★必修
早期離床・弾性ストッキング
ストッキングや間欠的空気圧迫は手術中から始める。出血していて抗凝固薬が使えない人にも使える。
- Q26
大気下で PaO2 52 Torr、PaCO2 26 Torr。A-aDO2 は?★★★
約65 Torr
肺胞気の酸素分圧 = 0.21×(760−47)− 26÷0.8 ≒ 117。117 − 52 ≒ 65。
- Q27
長管骨の骨折の1〜3日後に、点状出血と意識障害を伴う呼吸不全。考える病気は?★★★必修
脂肪塞栓症
骨髄の脂肪が、肺・脳・皮膚の細い血管に詰まる。点状出血は結膜や上半身に出る。
選択肢の○×
危険因子
検査