発作性上室頻拍・WPW症候群
突然始まり突然止まる動悸から、止め方・デルタ波・根治まで
12問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 突然始まり突然止まる、規則正しい速い動悸。心電図はQRS幅の狭い頻拍が同じ間隔で続き、P波が見えにくい。
- 血圧が保たれていればまず迷走神経刺激(Valsalva手技)、止まらなければATPを急速静注。気管支喘息ではATPを使わず、ベラパミル。不安定なら電気ショック。
- 発作のない時にPQ短縮・デルタ波ならWPW症候群。発作はQRS幅の狭い房室回帰性頻拍で、止め方は同じ。根治はカテーテルアブレーション。
どんな頻拍か:動悸と心電図
心房と心室のあいだに電気の回り道ができ、興奮がぐるぐる回り続けて起こる頻拍。回路のほとんどに房室結節が入っているので、房室結節の伝導を一瞬止めると止まる。
| 症状 | 突然始まり、突然止まる動悸。脈は速く(150〜200/分前後)、規則正しい。数分〜数時間続き、何年もくり返す。心臓にほかの病気がない人に多い |
|---|---|
| 心電図 | QRS幅の狭い頻拍が、同じ間隔で続く。P波はQRSに重なるか、すぐ後ろに隠れて見えにくい。発作のない時は、WPW症候群でなければ正常 |
| 回路 | 房室結節リエントリー性頻拍:房室結節の中の速い道と遅い道を回る。最も多い。 房室回帰性頻拍:房室結節と副伝導路を回る(→WPW症候群) |
画像で出たら 幅の狭いQRSが同じ間隔でびっしり並び、QRSの前にP波がない(QRSのすぐ後ろに小さなP波が見えることもある)。洞性頻脈なら、QRSの前に毎回P波がある。
WPW症候群:デルタ波と副伝導路
心房と心室のあいだに、房室結節とは別の電気の通り道(副伝導路。Kent束)が生まれつきある。副伝導路には房室結節のような伝導の遅れがないので、心房の興奮が副伝導路を通って、先に心室の一部に届く。
| 発作のない時の心電図 | PQ時間が短い(0.12秒未満)。QRSの立ち上がりがなだらかに傾く(デルタ波)。QRS幅が広い |
|---|---|
| 頻拍発作 | 房室回帰性頻拍が多い。房室結節を下り、副伝導路を上って回るので、発作中はデルタ波が消え、QRS幅は狭い。止め方は発作性上室頻拍と同じ |
| 幅の広いQRSの頻拍 | 副伝導路を下って回ると、幅の広いQRSが規則的に続き、心室頻拍に似る。心房細動が重なると、幅の広いQRSが不規則に速く続き、心室細動になりうる(くわしくは心房細動で) |
- 健診や学校の心電図検査で見つかることが多い。
画像で出たら PQが短く、QRSがP波のすぐ後ろからなだらかに立ち上がる(デルタ波)。電気ショックで止めた後の心電図にデルタ波が見えれば、その頻拍はWPW症候群によるもの。
発作を止める
- ① 血行動態を見る不安定なら電気ショック
- ② 迷走神経刺激Valsalva手技
- ③ ATPの急速静注喘息ならベラパミル
- ④ 根治後日、アブレーション
| 不安定 | 血圧低下・意識障害・胸痛・心不全があれば、すぐ電気ショック(QRSに同期させるカルディオバージョン)。安定していれば、電気ショックから始めない |
|---|---|
| 迷走神経刺激 | まずValsalva手技(息を止めて、いきむ)。顔を冷水につける方法もある。頸動脈洞マッサージは、頸動脈に狭窄や雑音がある人にはしない(プラークがはがれて脳梗塞) |
| ATP | 迷走神経刺激で止まらなければATP。房室結節を数秒止める。血液中ですぐ分解されるので、急速静注。数秒の胸の苦しさが出ることを先に話す。気管支喘息では使わない(気管支が収縮する) |
| Ca拮抗薬 | ベラパミル(ジルチアゼムも)を静注。喘息の人は、迷走神経刺激の次にこちら。喘息ではβ遮断薬も使わない |
| ほかの薬 | Ⅰ群の抗不整脈薬(ジソピラミドなど)でも止まる。アトロピン・イソプロテレノールは使わない(心拍数を上げる)。ジゴキシンは効き始めが遅く、止めるのには向かない |
根治:カテーテルアブレーション
発作をくり返す人・発作がつらい人は、カテーテルアブレーションで回路の一部(副伝導路や、房室結節の中の遅い道)を焼き切る。多くはこれで根治する。発作中に行う治療ではなく、落ち着いてから予定して行う。
- 電気ショックが要るほどのWPW症候群の頻拍も、アブレーションで根治をめざす。植込み型除細動器(ICD)は使わない(心室頻拍・心室細動のためのもの)。
- ベラパミルやジギタリスを飲み続けても根治しない。WPW症候群に、ジギタリスは使わない(副伝導路を通りやすくすることがある)。
- 洞性頻脈は体の反応なので、アブレーションしない(原因を治す)。
似た病気との見分け
速い動悸・頻拍のとき
| 洞性頻脈 | 少しずつ速くなり、少しずつ戻る。QRSの前に毎回、形のふつうなP波。発熱・脱水・貧血・甲状腺機能亢進症など、原因を治す |
|---|---|
| 発作性心房細動 | 脈がバラバラに乱れる。P波がなく、RR間隔がまったく不規則(くわしくは心房細動で) |
| 心房粗動 | のこぎりの歯のような波(F波)。2:1で伝わると150/分前後で整(くわしくは心房細動で) |
| 心室頻拍 | 幅の広いQRSが規則的に続く。心筋梗塞・心筋症など心臓に病気のある人に多く、失神・ショックになりやすい(くわしくは心室性不整脈で) |
| 心室期外収縮 | 「脈が飛ぶ」感じ。幅の広いQRSが単発で早く出る。続く動悸にはならない |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
表示の設定
まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
突然始まって突然止まる、規則正しい速い動悸。心電図はQRS幅の狭い頻拍が同じ間隔で続き、P波がはっきりしない。考える不整脈は?★★★必修
発作性上室頻拍(PSVT)
P波はQRSに重なるか、すぐ後ろに隠れる。洞性頻脈ならQRSの前に毎回P波があり、心房細動ならRR間隔がばらばら。
- Q2
発作のない時の心電図で、PQ時間が短く、QRSの立ち上がりがなだらかに傾き(デルタ波)、QRS幅が広い。診断は?★★★
WPW症候群
心房と心室をつなぐ副伝導路(Kent束)を通って、心室の一部が早く興奮しはじめる。健診の心電図で見つかることも多い。
- Q3
健診でデルタ波を指摘されていた人が、突然の動悸で来院。心拍数180/分で、QRS幅の狭い規則的な頻拍。考える不整脈は?★★★
房室回帰性頻拍(発作性上室頻拍)
房室結節を下り、副伝導路を上って回る。心室には房室結節から入るので、発作中はデルタ波が消えてQRS幅は狭い。デルタ波があるからと、心室頻拍と考えない。
- Q4
血圧が保たれ、意識もはっきりしているPSVT。まず行うのは?★★★
迷走神経刺激(Valsalva手技:息を止めていきむ)
迷走神経が房室結節の伝導を落とし、回路が切れる。顔を冷水につける方法もある。WPW症候群の人の発作も同じ。
- Q5
迷走神経刺激で止まらないPSVT。気管支喘息はない。使う薬と、その投与のしかたは?★★★
ATP(アデノシン三リン酸)の急速静注
房室結節を数秒止めて、回路を切る。血液中ですぐ分解されるので、ゆっくり入れると効かない。数秒の胸の苦しさが出ることを、前もって話しておく。
- Q6
ATPのほかに、PSVTを止めるために静注するCa拮抗薬は?★★★必修
ベラパミル(ジルチアゼムも)
房室結節の伝導を抑える。気管支喘息でATPが使えない人には、迷走神経刺激の次にこれを使う。血圧が低い人・心機能が落ちた人には使いにくい。
- Q7
発作をくり返すPSVT・WPW症候群で、再発を防ぎ根治をめざす治療は?★★★
カテーテルアブレーション
副伝導路や、房室結節の中の遅い道を焼いて回路を断つ。発作を止める治療ではなく、落ち着いてから予定して行う。ベラパミルやジギタリスを飲み続けても根治しない。
- Q8
WPW症候群でPQ時間が短いのは、副伝導路がどこを通らずに心房と心室をつなぐから?★★★
房室結節(刺激伝導系で、伝導に最も時間がかかる所)
ふつうは房室結節で伝導が遅れ、その間に心房が縮んで心室へ血を送る。副伝導路にはこの遅れがないので、PQ時間が短くなる。
選択肢の○×
止め方
- 1安定していれば、迷走神経刺激から。電気ショックは、血圧低下・意識障害・胸痛・心不全がある時に、QRSに同期させて行う。
- 2
両側の頸動脈に狭窄がある人のPSVTにも、頸動脈洞マッサージを行ってよい。114D40
頸動脈を押してプラークがはがれ、脳梗塞を起こしうる。高齢者では頸部の血管雑音を確かめる。Valsalva手技なら行ってよい。 - 3ATPは気管支を収縮させ、喘息発作を起こしうる。迷走神経刺激で止まらなければ、ベラパミル。
- 4どちらも心拍数を上げる、徐脈の薬。PSVTは房室結節の伝導を抑えて止める。
止め方