失神・動悸
反射性・起立性・心原性の見分け方から、検査の順番と動悸の診かたまで
21問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 見分けは病歴が一番。長い立位・痛み・恐怖のあと、冷汗・顔面蒼白に続いて倒れ、すぐ戻るのは血管迷走神経性失神。徐脈と血圧低下が起こり、横に寝かせれば戻る。
- 立ち上がった直後なら起立性低血圧。臥位と立位で血圧を測る。降圧薬・利尿薬、消化管出血(黒色便)、自律神経の障害を探す。高齢者は食後低血圧も。
- 運動中・前ぶれなく突然(座位・臥位でも)・胸痛を伴う失神と若い血縁者の突然死は心原性を疑う。まず12誘導心電図。頭部CT・脳波では分からない。動悸は発作時の脈のリズムを聞く。
失神とは:3つの型に分ける
失神は、脳全体の血流が一時的に減って急に意識を失って倒れ、短い時間で自然に、完全に元に戻るもの。原因は3つに分けて考える。見分けに最も役立つのは病歴(本人と、倒れるのを見た人の話)。
| 反射性失神 | 血管迷走神経性失神・状況失神・頸動脈洞症候群。反射で脈が遅くなり、血管が広がって血圧が下がる。若い人に多く、命にはかかわらない |
|---|---|
| 起立性低血圧 | 立ち上がった直後に血圧が保てない。薬・出血や脱水・自律神経の障害。高齢者に多い |
| 心原性失神 | 不整脈か、心臓・大血管の病気で、心臓から出る血液が急に減る。突然死につながるので、失神ではまず心原性を除く |
- 聞くこと:何をしていた時か(立っていた・立ち上がった・運動中・排尿など)、前ぶれ(冷汗・吐き気・目の前が暗くなる)、どのくらいで戻ったか、胸痛・動悸、内服薬、黒色便、家族の突然死。
- 気が遠くなっただけで倒れなかったもの(前失神)も、同じ順に考える。
反射性失神:いちばん多い
迷走神経が強く働いて脈が遅くなり(徐脈)、交感神経が抑えられて血管が広がり、血圧が下がる。
| 血管迷走神経性失神 | きっかけは長く立っている(朝礼など)・痛み・恐怖(けがの傷を見る)・採血・睡眠不足や疲れ。前ぶれに気分不良・冷汗・顔面蒼白、吐き気・目の前が暗くなる |
|---|---|
| 状況失神 | 排尿・排便・咳・嘔吐など、決まった動作の時や直後 |
| 頸動脈洞症候群 | 頸を回す・反らす、きつい襟、ひげそりで頸動脈洞が押される。高齢の男性に多い |
- 運動中には起こりにくい(運動中は交感神経が働いている)。運動中の失神は心原性を考える。
- 対応:すぐ横に寝かせる(仰臥位で足を上げる)。脳の血流が戻り、すぐ回復する。口の中に血がたまっていれば、誤嚥しないよう側臥位。アドレナリンは使わない。輸血も要らない。
- 横になって回復し、診察で異常がなければ経過観察。睡眠不足や疲れを避け、前ぶれが来たらすぐしゃがむか横になるよう話す。「貧血」と言われていても、鉄欠乏の貧血とは別のもの。
- 病歴で決まらなければヘッドアップティルト試験(台を傾けて立った姿勢を続け、失神を誘発する)。
起立性低血圧・食後低血圧
立ち上がると血液が下半身にたまる。ふつうは反射で血管を締めて血圧を保つが、それができないと立ち上がった直後に目の前が暗くなり、倒れる。
| 確かめ方 | 臥位と立位で血圧・脈拍を測る(起立試験)。立って3分以内に、収縮期血圧が20 mmHg以上(または拡張期血圧が10 mmHg以上)下がれば起立性低血圧 |
|---|---|
| 薬 | 降圧薬・利尿薬(α遮断薬はとくに)。始めた薬・増やした薬を聞く |
| 血液・水が減る | 消化管出血(NSAIDsの胃潰瘍など)。直腸指診で黒色便を確かめる。脱水。脈が速くなる |
| 自律神経の障害 | 糖尿病・多系統萎縮症・Lewy小体型認知症・Parkinson病。立っても脈があまり速くならない |
| 高齢・長い臥床 | 高齢者は起立性低血圧・食後低血圧を起こしやすい。長く寝ていた後も |
- 食後低血圧:食後に消化管へ血液が集まり、2時間以内に血圧が下がる。だるさ・ふらつき・失神。一度にたくさん食べず、食後すぐに立ち上がらない。
- 飲酒・入浴・食後が重なると起こりやすい。
画像で出たら 起立試験の表やグラフでは、起立前(臥位)の血圧・脈拍と、立ってからの変わり方を比べる。
心原性失神と、危ない失神のサイン
不整脈による失神は前ぶれなく突然倒れ、座っていても寝ていても起こる(体位と関係ない)。
| 脈が遅い | 房室ブロック・洞不全症候群(くわしくは徐脈性不整脈で) |
|---|---|
| 脈が速い | 心室頻拍・心室細動。QT延長症候群・Brugada症候群など(くわしくは心室性不整脈で) |
| 左室の出口が狭い | 大動脈弁狭窄症・閉塞性肥大型心筋症。運動しても心拍出量を増やせず、運動中・運動直後に倒れる |
| 肺動脈が詰まる | 肺血栓塞栓症。右室から先へ流れず、左房に戻る血液が減る |
| 胸痛・背部痛を伴う | 急性冠症候群・大動脈解離・肺血栓塞栓症 |
専門医に紹介する・入院を考える失神
- 運動中の失神
- 失神の前の胸痛・動悸
- 前ぶれのない突然の失神(座位・臥位でも)
- 若い血縁者の突然死(遺伝する心筋症・QT延長症候群などを考える)
- 心臓病の既往・心電図の異常・高齢
- 長く立っていた後の失神、1分以内に戻ったことは、紹介の理由にならない。
- 僧帽弁閉鎖不全症は、失神の原因になりにくい(逆流しても左室の出口はふさがらない)。
検査の順番
- ① 病歴と診察状況・前ぶれ・内服薬、臥位と立位の血圧
- ② 12誘導心電図全員に。血糖も
- ③ 血液検査・心エコー貧血・電解質、弁膜症・心機能
- ④ Holter心電図など発作の時の心電図
- 初めての失神には、まず12誘導心電図。房室ブロック・洞停止・QT延長などがすぐ分かる。高齢者の失神は心原性が多い。
- 神経の所見がなければ、頭部CT・脳波で原因は分からない(頭を打った時、てんかんを疑う時に行う)。
- 立ち上がった時の失神なら、Holter心電図や心エコーより先に臥位と立位の血圧。
- Holter心電図:ふだんどおり生活しながら24時間記録し、症状のあった時刻を書いておく。発作がまれなら、携帯型心電計(症状の時に自分で記録)や植込み型心電図(数年記録できる)。
- 原因の分からない失神に、まず運動負荷心電図はしない(大動脈弁狭窄症・閉塞性肥大型心筋症があれば、負荷で失神・突然死)。
動悸の診かた
動悸は、心臓の拍動を不快に感じること。来院時には治まっていることが多く、動悸の時の脈のリズム(整か不整か)と速さを聞くのが最も役立つ。来院時の心電図が正常でも、不整脈は否定できない。
| まったく不規則で速い | 心房細動(くわしくは心房細動で) |
|---|---|
| 整で速く、突然始まり突然止まる | 発作性上室頻拍(くわしくは発作性上室頻拍・WPW症候群で) |
| 脈が飛ぶ・一瞬つまる | 期外収縮 |
| 徐々に速くなり徐々に治まる | 洞性頻脈。運動・発熱・脱水・貧血・甲状腺機能亢進症・低血糖・不安、カフェイン・飲酒・薬 |
| 失神・胸痛・息切れを伴う | 心室頻拍など危ない不整脈を考え、すぐ心電図 |
似た病気との見分け
失神とまちがえやすい意識の障害
| てんかん | けいれんが続き、舌の側面をかむ・失禁。意識が戻った後もしばらくもうろうとする。脳波 |
|---|---|
| 低血糖 | 空腹時の冷汗・動悸・ふるえ。意識の障害が長く、ブドウ糖で戻る。意識障害ではまず血糖 |
| くも膜下出血 | 突然の激しい頭痛のあとの意識消失。頭部CT |
| 過換気症候群 | 不安で呼吸が速くなり、手足や口のまわりがしびれる |
| 一過性脳虚血発作 | 片側の麻痺・言葉の障害。意識だけを失うことはまれ |
めまい・動悸で来たとき
| 良性発作性頭位めまい症 | 寝返り・起き上がりなど、頭を動かした時のぐるぐる回るめまい。意識は失わない |
|---|---|
| パニック障害 | 突然の動悸・息苦しさ・死ぬのではという恐怖が、10〜30分で治まる。発作時の心電図を含め異常がない。また起こる不安(予期不安) |
| 褐色細胞腫 | 発作的な高血圧・頭痛・動悸・発汗 |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
失神の原因を見分けるのに、最も役立つのは?★★★必修
病歴(倒れた時の状況・前ぶれ・戻るまでの様子。目撃者の話も)
診察・血液検査・画像で原因が分かることは少ない。何をしていた時か、冷汗などの前ぶれ、どのくらいで戻ったか、伴う症状、内服薬、家族の突然死を聞く。
- Q2
長く立っていた時や、痛み・恐怖のあとに、気分が悪くなり冷汗・顔面蒼白に続いて倒れ、横になるとすぐ戻った。考える失神は?★★★必修
血管迷走神経性失神(反射性失神)
朝礼・採血・けがの傷を見た時などに多い。若い人に多く、睡眠不足や疲れも誘因になる。
- Q3
排尿・排便・咳・嘔吐など、決まった動作の時や直後に起こる反射性失神は?★★★必修
状況失神
迷走神経の反射や、いきみで心臓に戻る血液が減ることで起こる。夜中に起きて排尿した男性(とくに飲酒の後)にも多い。
- Q4
傷を見た時に気分不快を訴え、顔面蒼白で冷汗が出た。まずすることは?★★★必修
横に寝かせる(仰臥位にして足を上げる)
脳の血流が戻り、すぐ回復する。倒れてけがをするのも防ぐ。口の中に血がたまっていれば、誤嚥しないよう側臥位にする。
- Q5
椅子から立ち上がった直後に目の前が暗くなり、倒れた。以前から立つ時にふらつく。考える原因は?★★★
起立性低血圧
高齢者・降圧薬を飲む人に多い。飲酒・入浴・食後が重なると起こりやすい。
- Q6
起立性低血圧を確かめる検査は?★★★
臥位と立位で血圧・脈拍を測る(起立試験)
寝た姿勢で測ってから立ち、数分間くり返し測る。立ち上がった時の失神なら、Holter心電図や心エコーより先に行う。
- Q7
起立性低血圧と判定する、血圧の下がり方は?★★★
立って3分以内に、収縮期血圧が20 mmHg以上(または拡張期血圧が10 mmHg以上)下がる
8/4 mmHg程度の低下なら、起立性低血圧とはいわない。
- Q8
立ちくらみ・失神の人で、起立性低血圧の原因として必ず確かめる薬は?(2種類)★★★必修
降圧薬(とくにα遮断薬)・利尿薬
血管が広がる、体の水が減ることで、立った時に血圧を保てない。始めた薬・増やした薬を聞く。
- Q9
自律神経が障害され、起立性低血圧を起こす病気は?(3つ)★★★
糖尿病・多系統萎縮症・Lewy小体型認知症
Parkinson病でも起こる。便秘・排尿障害など、ほかの自律神経の症状も伴う。立っても脈があまり速くならない。
- Q10
NSAIDsを飲む高齢者が、立ち上がって失神した。眼瞼結膜が蒼白。追加する診察は?★★★必修
直腸指診(黒色便を探す)
消化管出血で血液が減ると、立った時に血圧を保てない。頻脈・冷汗を伴う。黒色便があれば上部消化管内視鏡。
- Q11
高齢者の、食後のだるさ・ふらつき・失神。考える病態は?★★★
食後低血圧
食後に消化管へ血液が集まり、血圧が下がる。高齢者・自律神経の障害・降圧薬を飲む人に多い。一度にたくさん食べず、食後すぐに立ち上がらない。
- Q12
座っている時や寝ている時に、前ぶれなく突然目の前が暗くなって倒れた。疑う原因は?★★★必修
不整脈(心原性失神)
心臓から出る血液が急に止まるので、体位と関係なく、前ぶれもなく起こる。徐脈によるものはAdams-Stokes発作という。
- Q13
心原性を疑い、専門医に紹介する失神の病歴は?(3つ)★★★必修
運動中の失神・失神の前の胸痛・若い血縁者の突然死
肥大型心筋症・QT延長症候群などを考える。長く立っていた後の失神や、1分以内に戻ったことは理由にならない。
- Q14
70歳台。初めての失神で救急外来に来た。血糖とともに、まず行う検査は?★★★必修
12誘導心電図
房室ブロック・洞停止・QT延長などがすぐ分かる。高齢者の失神は心原性が多い。
- Q15
来院時には治まっている失神や動悸。発作の時の心電図をとらえるために行う検査は?★★★必修
Holter心電図(24時間)
発作がまれなら、症状の時に自分で記録する携帯型心電計や、数年記録できる植込み型心電図を使う。
- Q16
来院時には治まっている動悸。原因を見分けるのに最も役立つ情報は?★★★必修
動悸の時の脈のリズム(整か不整か)と速さ
不整で速ければ心房細動、整で突然始まり突然止まれば発作性上室頻拍を考える。自分で脈を測ってもらう。
- Q17
頸を回す・反らす、きつい襟、ひげそりで頸を押された時に起こる失神は?★★★必修
頸動脈洞症候群
頸動脈洞が押されて反射が起こり、徐脈と血圧低下になる。高齢の男性に多い。
- Q18
反射性失神を疑うが、病歴だけでは決まらない。台を傾けて立った姿勢を続け、失神を誘発する検査は?★★★
ヘッドアップティルト試験
徐脈や血圧低下が出れば反射性失神と分かる。目の前で徐脈が続いている人では、まず心電図。
- Q19
左房に戻る血液が減ることで、失神を起こす病気は?★★★
肺血栓塞栓症
肺動脈が詰まり、右室から先へ血液が流れない。大動脈弁狭窄症は左室の出口が狭く、房室ブロックは心拍が遅くなって失神する。