肺高血圧症
労作時の息切れとⅡ音の亢進から、原因・検査・治療、肺動静脈瘻まで
21問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- ゆっくり進む労作時の息切れに、Ⅱ音の亢進と頸静脈怒張・下腿浮腫。呼吸音は正常なら肺高血圧症を考える。
- 疑ったらまず心エコー(右室の拡大・推定した肺動脈の圧)。確定と治療方針は右心カテーテルで決める。肺動脈性では肺動脈楔入圧は正常。
- 原因は膠原病(とくに強皮症)・特発性・慢性血栓塞栓性を押さえる。慢性血栓塞栓性は肺血流シンチで見つけ、抗凝固療法を続ける。
起こり方と原因
肺の細い動脈が厚く狭くなったり、血栓で詰まったりして、肺動脈の圧が上がる。右室は高い圧に逆らって血を送り出すので、右室が厚く大きくなり、進むと右心不全になる。診断は、右心カテーテルで測った安静時の平均肺動脈圧が上がっていること(いまの国際的な基準は20 mmHgを超えるもの。以前は25 mmHg以上)。
| 肺動脈性肺高血圧症 | 肺の細い動脈そのものの病気。特発性(女性に多く、若い人にも起こる)・遺伝性、膠原病(全身性強皮症・混合性結合組織病・SLE)、先天性心疾患の左右短絡に伴うものなど |
|---|---|
| 左心の病気 | 僧帽弁狭窄症・左心不全(心筋梗塞・拡張型心筋症など)。左房の圧が、肺静脈から肺動脈へさかのぼる。肺動脈楔入圧も上がる |
| 肺の病気・低酸素 | COPD・間質性肺炎・肺胞低換気(胸郭形成術のあとなど)。低酸素で肺の動脈が縮み、壁が厚くなる |
| 慢性血栓塞栓性 | 肺塞栓の血栓が溶けずに残り、硬くなって肺動脈を狭くする(CTEPH)。先に片側の下肢のむくみ(DVT)があることも、はっきりした既往がないこともある |
- 心タンポナーデでは肺高血圧にならない(心臓が広がれないだけで、肺の血管には病気がない)。
- 肺塞栓が残って起こるものは、肺動脈性には入れず、慢性血栓塞栓性として別に分ける。
症状と身体所見
初めはゆっくり進む労作時の息切れと疲れやすさで、気づかれにくい。進むと運動中の失神や胸痛(運動しても心拍出量を増やせない)、右心不全のむくみが出る。
| 心音 | Ⅱ音の肺動脈成分(Ⅱp)が亢進する(胸骨左縁第2肋間)。減弱するのは肺動脈弁狭窄症 |
|---|---|
| 心雑音 | 三尖弁逆流の収縮期雑音(胸骨左縁の下のほう。吸気で大きくなる)。肺動脈弁の逆流で、胸骨左縁第2肋間に拡張期の雑音(Graham Steell雑音)が出ることもある |
| 右心不全 | 頸静脈怒張・下腿浮腫・肝腫大 |
| 肺 | 呼吸音は正常。喘鳴やcoarse crackles、発作性夜間呼吸困難(左心不全の所見)はない |
- 膠原病の人の労作時の息切れは、間質性肺炎だけでなく肺高血圧も考える。Ⅱ音が亢進し、呼吸音は正常なら肺高血圧らしい。
検査
- ① 心電図・胸部X線右心の負担・肺動脈の拡張
- ② 心エコーまず行う。肺動脈の圧を推定
- ③ 原因を探す抗核抗体・呼吸機能・肺血流シンチ
- ④ 右心カテーテル確定と治療方針
- 心電図:右軸偏位・右室肥大。右房が大きいと肺性P(Ⅱ・Ⅲ・aVFで高く尖ったP波)。
- 胸部X線:肺動脈が太くなり、左第2弓が突出する(左第3弓ではない)。心陰影も大きくなる。肺野には異常がない。
- 心エコー:最初に行う。右室・右房が大きく、左室は押されて小さい(左室は大きくならない)。三尖弁逆流の速さから肺動脈の圧を推定する。重症度の判定や経過観察にも使う。
- 血液:BNPが上がる(右心の負担)。
- 右心カテーテル:確定診断と治療方針の決定。肺動脈性では平均肺動脈圧↑・肺血管抵抗↑で、肺動脈楔入圧は正常。
- 原因を探す:抗核抗体(膠原病)・呼吸機能検査(肺の病気)・換気血流シンチ(慢性血栓塞栓性)。頸動脈エコーは要らない。
- 慢性血栓塞栓性:肺血流シンチで、換気は保たれるのに区域の形に血流が欠ける(見つけるのに最も感度が高い)。造影CTで肺動脈の中の血栓と、下肢の静脈の血栓をみる。
- 重症度:6分間歩行試験で歩ける距離が短くなる。CTでは中枢の肺動脈が太く、末梢で急に細くなる。
画像で出たら 胸部X線で左第2弓が張り出し、肺門の肺動脈は太いのに、末梢の血管影は細い。心電図はⅠ誘導で深いS波、V1で高いR波(右軸偏位・右室肥大)。心エコーの短軸像で右室が大きく、心室中隔が左室側へ押されて、左室がD字形になる。
治療
| 肺動脈性 | 肺の動脈を広げる薬(エンドセリン受容体拮抗薬・PDE5阻害薬・プロスタサイクリン製剤など)を組み合わせる。重い人には、エポプロステノールの持続静注を在宅で続ける。薬で良くならなければ肺移植(特発性肺動脈性肺高血圧症は適応になる) |
|---|---|
| 慢性血栓塞栓性 | 抗凝固療法を生涯続ける。狭くなった肺動脈は、手術で血栓をはがして取る(肺動脈血栓内膜摘除術)か、カテーテルの風船で広げる(バルーン肺動脈形成術)。手術ができない人には、リオシグアト(肺の動脈を広げる薬)も使う |
| 左心・肺の病気によるもの | もとの病気を治療する |
| 共通 | 右心不全のむくみには利尿薬。低酸素には在宅酸素療法。肺高血圧症の在宅酸素療法は、PaO2の値にかかわらず保険で使える |
肺動静脈瘻
肺の動脈と静脈が、毛細血管を通らずに直接つながる血管の奇形。静脈の血が肺胞で酸素を受け取らないまま左心へ戻る(肺内の右→左短絡)ので、低酸素血症になる。多くは遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler病)に伴う:くり返す鼻出血・舌や口唇の小さな赤い斑点(毛細血管の拡張)・家族にも同じ症状(常染色体顕性遺伝)。
| 画像 | 胸部X線・CTで境界のはっきりした結節影と、そこへ出入りする太い血管。肺動脈造影で、拡張して曲がりくねった血管と瘤が写る |
|---|---|
| 合併症 | 血栓や細菌が肺の毛細血管で濾されずに脳へ行く(奇異性塞栓):脳梗塞・脳膿瘍。瘤が破れて喀血・血胸。感染性心内膜炎も |
| 治療 | カテーテルで、流れ込む肺動脈を詰める(コイル塞栓術)。歯の治療の前には、抗菌薬を予防に使う |
似た病気との見分け
労作時の息切れ・Ⅱ音の亢進のとき
| 間質性肺炎 | 両側の下肺でfine crackles(捻髪音)。KL-6↑、胸部X線で間質影。強皮症・皮膚筋炎に多く、肺高血圧と一緒に起こることもある |
|---|---|
| 心タンポナーデ | 奇脈・頸静脈怒張・血圧低下。心音は小さく、心電図は低電位。Ⅱ音の亢進や右室肥大はない |
| 肺動脈弁狭窄症 | 胸骨左縁第2肋間の収縮期駆出性雑音。右室肥大はあるが、Ⅱpは減弱する |
| Eisenmenger症候群 | 心室中隔欠損などの左右短絡で肺高血圧が進み、短絡が右→左に逆転したもの。チアノーゼ・ばち指・喀血(くわしくは先天性心疾患で) |
| 急性肺血栓塞栓症 | 突然の呼吸困難・胸痛。Dダイマー↑、造影CTで肺動脈の血栓(くわしくは肺血栓塞栓症で) |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
肺高血圧を起こしやすい膠原病は?(3つ)★★★
全身性強皮症・混合性結合組織病・SLE
肺の細い動脈が狭くなる肺動脈性肺高血圧症で、命にかかわる合併症になる。強皮症・混合性結合組織病では、症状がなくても定期的に心エコーで調べる。
- Q2
半年前に片側の下肢がむくみ、その後ゆっくり労作時の息切れが進んだ。Ⅱ音が亢進し、心エコーで推定した肺動脈の圧が高い。考える病気は?★★★
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
肺塞栓の血栓が溶けきらずに残り、硬くなって肺動脈を狭くする。Dダイマーが上がっていることもある。急性の肺塞栓やDVTの、はっきりした既往がないことも少なくない。
- Q3
ゆっくり進む労作時の息切れ。Ⅱ音が亢進し、頸静脈怒張と下腿浮腫がある。呼吸音は正常で、心電図は右室肥大。考える病気は?★★★
肺高血圧症
右心に負担がかかり、全身の静脈に血がたまる。初めの症状で最も多いのは労作時の息切れで、進むと運動中の失神も起こる。左心不全と違い、肺にcracklesは聴かない。
- Q4
膠原病の人の労作時の息切れ。Ⅱ音が亢進し、BNPが高い。呼吸音は正常で、KL-6も正常。考える原因は?★★★
肺動脈性肺高血圧症
間質性肺炎なら、fine crackles(捻髪音)・KL-6の上昇・胸部X線の間質影がある。強皮症では両方が一緒に起こることもある。
- Q5
肺高血圧を疑ったとき、まず行う検査は?★★★
心エコー
右室・右房の拡大と、三尖弁逆流の速さから推定した肺動脈の圧をみる。体に負担がなく、膠原病の人のスクリーニング、重症度の判定、経過観察にも使う。
- Q6
肺高血圧症の確定診断と、治療方針を決めるのに必要な検査は?★★★
右心カテーテル検査
平均肺動脈圧・肺動脈楔入圧・肺血管抵抗を実際に測る。心エコーの値は推定なので、それだけでは決めない。
- Q7
肺動脈性肺高血圧症の右心カテーテルで、平均肺動脈圧と肺動脈楔入圧は?★★★
上がる・正常
病気は肺の細い動脈にあり、その先の左房の圧は上がらない。楔入圧も上がっていれば、左心の病気(僧帽弁狭窄症・左心不全)による肺高血圧。
- Q8
肺高血圧症の胸部X線で、突出する弓は?★★★
左第2弓(肺動脈の拡張)
肺門の肺動脈は太く、末梢の血管影は細い。右心が大きくなり、心陰影も大きくなる。左第3弓(左心耳)が出るのは僧帽弁狭窄症。
- Q9
肺高血圧症の心電図の所見は?(2つ)★★★
右軸偏位・右室肥大
厚くなった右室の電気が強く出る(Ⅰ誘導で深いS波、V1で高いR波)。右房が大きいと、Ⅱ・Ⅲ・aVFで高く尖ったP波(肺性P)も出る。
- Q10
肺高血圧の原因として、慢性血栓塞栓性を見つけるのに最も感度の高い検査は?★★★
肺血流シンチグラフィ(換気血流シンチ)
換気は保たれているのに、区域の形に血流だけが欠ける。造影CTで肺動脈の中の血栓をみて、下肢の静脈の血栓も一緒に探す。
- Q11
慢性血栓塞栓性肺高血圧症で、歩くとSpO2が大きく下がる。続ける治療は?(2つ)★★★
抗凝固療法・在宅酸素療法
抗凝固は生涯続け、新しい血栓を防ぐ。狭い肺動脈は、手術(肺動脈血栓内膜摘除術)やカテーテルの風船(バルーン肺動脈形成術)で広げる。
- Q12
鼻出血をくり返し、家族にも同じ人がいる。舌に小さな赤い斑点がある。SpO2が低く、胸部X線で結節影。考える病気は?★★★
遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler病)の肺動静脈瘻
皮膚・粘膜の毛細血管が広がり、肺・脳・肝臓に動静脈の奇形ができる。常染色体顕性遺伝。
- Q13
肺動静脈瘻で低酸素血症になる、主な仕組みは?★★★
肺内の右→左短絡
静脈の血が肺胞の毛細血管を通らずに左心へ戻る。酸素を吸ってもPaO2が上がりにくく、PaCO2は上がらない。
- Q14
肺動静脈瘻で、血栓や細菌が肺で濾されずに脳へ行って起こる合併症は?(2つ)★★★
脳梗塞・脳膿瘍
奇異性塞栓という。瘤が破れると喀血・血胸になり、感染性心内膜炎も起こしうる。歯の治療の前には、抗菌薬を予防に使う。
- Q15
肺高血圧で、胸骨左縁第2肋間に聴こえる拡張期の漸減性雑音は?★★★
Graham Steell雑音(肺動脈弁の逆流)
広がった肺動脈で肺動脈弁が閉じきらなくなる。Ⅱpの亢進と一緒に聴く。
- Q16
肺高血圧症の運動耐容能と治療の効果を、歩けた距離でみる検査は?★★★
6分間歩行試験
重い人ほど距離が短い。歩いている間のSpO2の下がり方もみる。
- Q17
肺の動脈を広げる薬で良くならない、特発性肺動脈性肺高血圧症。考える治療は?★★★
肺移植
特発性肺線維症・肺リンパ脈管筋腫症などとともに、肺移植の主な適応。
- Q18
肺動静脈瘻に行う、カテーテルの治療(IVR)は?★★★
コイル塞栓術
流れ込む肺動脈をコイルで詰めて、短絡を止める。下大静脈フィルターは、抗凝固療法ができない深部静脈血栓症で肺塞栓を防ぐもの。