心不全
息切れ・むくみの診かたから、急性期と慢性期の治療まで
52問
第101〜120回
マーカー 3回以上出題点線 1〜2回出題
まずこれだけ
- 左心不全は肺うっ血で起坐呼吸・coarse crackles・Ⅲ音、右心不全は体静脈うっ血で頸静脈怒張・肝腫大・下腿浮腫。
- 急性期は座位にして、うっ血にループ利尿薬、血圧が保たれていれば硝酸薬。β遮断薬は急性期に始めない。
- HFrEFの予後はACE阻害薬(ARB)とβ遮断薬(+MRA・SGLT2阻害薬)で改善する。在宅では毎日の体重でうっ血を早く見つける。
症状と所見:左心不全と右心不全
心臓が血を送り出せず、手前に血がたまる(うっ血)。左心不全は肺に、右心不全は全身の静脈にたまる。
| 左心不全(肺うっ血) | 労作時の息切れ → 発作性夜間呼吸困難 → 起坐呼吸。両肺のcoarse crackles、呼気のwheezes(心臓喘息)。肺水腫になるとピンク色の泡沫状痰。Cheyne-Stokes呼吸 |
|---|---|
| 右心不全(体静脈うっ血) | 頸静脈怒張・肝腫大・下腿浮腫。浮腫は両側の下腿から出て、押すと圧痕が残る(顔からではない)。腹水・胸水、体重増加 |
| 心音 | Ⅲ音(奔馬調律)。左室が硬いとⅣ音 |
| 低灌流(心原性ショック) | 四肢が冷たく、冷汗で湿る・乏尿・意識の混濁・血圧低下 |
- 呼吸困難は座ると楽になる(下半身から戻る血が減り、肺のうっ血が軽くなる)。
- 心不全の喘鳴は呼気のwheezes。吸気のstridorは上気道の狭窄で、心不全の所見ではない。
- 中心静脈圧は、頸静脈の拍動が見える高さ(胸骨角から)+5 cmで見積もる。
原因・悪化のきっかけ・2つの型
原因は心筋梗塞・高血圧・弁膜症・心筋症・頻脈性の心房細動など。
| 悪化のきっかけ | 薬の飲み忘れ・自己中断、塩分・水分のとりすぎ、かぜなどの感染、過労、頻脈性の心房細動、高血圧 |
|---|---|
| 悪化させる薬 | NSAIDs(Naと水をためる)。HFrEFではベラパミル・ジルチアゼム(収縮力を下げる) |
| 高拍出性心不全 | 貧血・甲状腺機能亢進症・動静脈瘻・脚気(ビタミンB1欠乏)。送り出す量は多いのに、体の求めに追いつかない |
左室駆出率(EF)で分ける。EFが正常でも心不全は否定できない。
| 型 | 左室駆出率 | 特徴 |
|---|---|---|
| HFrEF | 40%未満 | 収縮が弱い。心筋梗塞の後・拡張型心筋症・抗がん薬(アントラサイクリン系)など |
| HFpEF | 50%以上 | 左室が硬く広がりにくい。高齢・高血圧に多く、増えている(心不全の約半数)。非心血管死が多い。予後はHFrEFと変わらないほど悪い |
- 40〜49%はその間の型(HFmrEF)。
検査の順番
- ① 心電図・胸部X線心拡大・肺うっ血・胸水
- ② BNP心室の負担の大きさ
- ③ 心エコー原因と左室駆出率
- ④ 肺動脈カテーテル重症のとき。楔入圧と心係数
- 胸部X線:心拡大(心胸郭比50%超)・肺うっ血・胸水(肋骨横隔膜角の鈍化)。小葉間隔壁がむくむとKerley B線。
- BNP(NT-proBNP):心室の壁の負担で増え、重症度と治療の効果の目安になる。腎機能が悪いと高めに出る。
- 心エコーは早めに:左室駆出率・壁運動・弁膜症。下大静脈が太く、呼吸で細くならなければうっ血。呼吸機能検査や心筋シンチを先にしない。
- 肺動脈カテーテルで測る肺動脈楔入圧は左房圧を映す。左心不全で上がる(右心不全で上がるのは中心静脈圧)。
画像で出たら 胸部X線では心陰影が大きく、肺門から上肺野へ血管の影が目立ち、肋骨横隔膜角が鈍い。肺水腫では両肺門を中心に蝶形の陰影が広がる。HFrEFの心エコーでは、左室が大きく全体に動きが悪い。
急性心不全の治療
まず座位(起坐位・半坐位)にし、SpO2が低ければ酸素。静脈路と心電図モニター。治療は、うっ血(肺動脈楔入圧>18 mmHg)と低灌流(心係数<2.2 L/分/m2)があるかで分ける(Forrester分類。身体所見で同じように分けるのがNohria-Stevenson分類)。
| うっ血なし(dry) | うっ血あり(wet) | |
|---|---|---|
| 末梢が温かい(warm) | 正常 | ループ利尿薬(フロセミド静注)。血圧が保たれていれば硝酸薬も |
| 末梢が冷たい(cold) | 循環血液量の不足 → 輸液 | 心原性ショック → 強心薬(ドブタミン)・昇圧薬。薬で保てなければVA-ECMOなどの補助循環 |
- 血圧が高く、体液はあまり増えていない急な肺水腫は、まず血管拡張薬(硝酸薬)。
- 使わない:β遮断薬を新しく始めること(落ち着いてから少量で)、血圧が保たれているときのアドレナリン・ノルアドレナリン、急速輸液。
- 酸素でも苦しい肺水腫にはNPPV。
慢性心不全の治療と生活
| HFrEFの予後をよくする | ACE阻害薬(またはARB)とβ遮断薬が基本(β遮断薬は少量から)。MRA(スピロノラクトン)とSGLT2阻害薬を加える。ACE阻害薬はARNI(サクビトリル・バルサルタン)に替えてもよい。症状がなくても、左室の収縮が落ちていれば始める |
|---|---|
| 症状を軽くする | うっ血には利尿薬。ジギタリスは心房細動の心拍数を下げるのに使う(生命予後は改善しない) |
| HFpEF | 高血圧・心房細動などの治療、うっ血に利尿薬、SGLT2阻害薬 |
| 生活と管理 | 毎日の体重(数日で2 kgほど増えたら受診)。減塩・禁煙・節酒・減量、薬を続ける。経過は体重・SpO2・心拍数・心胸郭比・BNP・左室駆出率で見る(LDL・CK-MBではない) |
| リハビリ | うっ血があるうちは安静。落ち着いたら心臓リハビリ(低い負荷から、栄養療法とあわせて) |
- 予後を改善しない:α遮断薬。ACE阻害薬とARBは重ねない(高K血症・腎障害が増える)。
似た病気との見分け
息切れ・喘鳴のとき
| 気管支喘息 | 若い時からくり返す発作。Ⅲ音・Ⅳ音・頸静脈怒張・下腿浮腫はなく、BNPは上がらない。β2刺激薬の吸入とステロイドで治療 |
|---|---|
| 急性呼吸窮迫症候群(ARDS) | 肺炎・敗血症・腹膜炎などのあとの両側の浸潤影と低酸素。心機能は正常(心原性ではない肺水腫) |
| 肺血栓塞栓症 | 突然の呼吸困難。低酸素なのに、肺の音と胸部X線はきれい。負担がかかるのは右心 |
むくみ・頸静脈怒張のとき
| 心タンポナーデ・収縮性心膜炎 | 頸静脈怒張・浮腫は同じ。心タンポナーデは奇脈と血圧低下、収縮性心膜炎は吸気で頸静脈がさらに張る(Kussmaul徴候)。心エコーで心膜液・心膜の肥厚を見る |
|---|---|
| ネフローゼ症候群・肝硬変 | 低アルブミン血症で膠質浸透圧が下がるむくみ。頸静脈は怒張しない。ネフローゼは顔(まぶた)から |
| 甲状腺機能低下症 | 押しても圧痕が残らないむくみ(粘液水腫) |
合格に必要な所だけ。まずはここを全部「習得」に。
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まずは基礎・標準から。応用は、基礎・標準の一問一答と○×がすべて習得になると開きます。あと 問。
一問一答
- Q1
急性左心不全で、夜間や横になった時に強まる呼吸困難は?(2つ)★★★
発作性夜間呼吸困難・起坐呼吸
横になると下半身から心臓へ戻る血が増え、肺のうっ血が強まる。眠ってしばらくして息苦しさで目が覚め、座ると楽になる。心不全では、無呼吸と深い呼吸をくり返すCheyne-Stokes呼吸も見られる。
- Q2
ピンク色で泡沫状の痰を出す病態は?★★★必修
肺水腫
肺胞にしみ出した血液の成分が、空気と混ざって泡になる。急性左心不全で起こる。
- Q3
心不全で聴かれる、拡張早期の低い過剰心音は?★★★
Ⅲ音(奔馬調律)
左室に血が勢いよく流れ込み、壁が振動して出る。心尖部にベル型を当て、左側臥位で聴く。同じ拡張早期の心膜ノック音は、収縮性心膜炎の音。
- Q4
両肺のcoarse cracklesや肺水腫は、左心不全と右心不全のどちらの所見?★★★必修
左心不全(肺うっ血)
左房圧が上がって肺の静脈に血がたまり、肺胞に水がしみ出す。cracklesはその水の音で、吸気に聴く。
- Q5
wheezesのある呼吸困難。気管支喘息より心不全(心臓喘息)を考えさせる所見は?★★★必修
Ⅳ音(Ⅲ音・頸静脈怒張・BNP高値も)
肺うっ血で気管支の壁がむくみ、呼気にwheezesが出る。咳・頻呼吸・起坐呼吸は喘息の発作でもみられ、見分けに使いにくい。
- Q6
右心不全の徴候は?(3つ)★★★必修
頸静脈怒張・肝腫大・下腿浮腫
全身の静脈に血がたまる(体静脈うっ血)。腹水・胸水・体重増加も出る。肺うっ血・起坐呼吸・呼気の喘鳴は左心不全の所見。
- Q7
うっ血性心不全の浮腫は、どこから出て、どんな性状?★★★必修
両側の下腿から出て、押すと圧痕が残る
重力で低い所にたまる(寝たきりなら仙骨部)。顔から始まるのはネフローゼ症候群、片側だけなら深部静脈血栓症など局所の原因。
- Q8
心原性ショックで見られる、四肢の皮膚と尿の所見は?★★★必修
四肢が冷たく、冷汗で湿る・乏尿
心拍出量の低下を補おうと交感神経が働き、末梢の血管が締まる。皮膚が温かく赤いのは、敗血症やアナフィラキシーのように血管が広がるショック。
- Q9
送り出す量は多いのに体の求めに追いつかない、高拍出性心不全の原因は?(4つ)★★★必修
貧血・甲状腺機能亢進症・動静脈瘻・脚気(ビタミンB1欠乏)
脈は速く大きく、手足は温かい。大量に飲酒する人に末梢神経障害・眼振と心不全がそろえば、ビタミンB1欠乏。
- Q10
落ち着いていた心不全が、膝の痛みに飲み始めた薬で悪化した。原因の薬は?★★★
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
腎のプロスタグランジンを抑えてNaと水をため込み、利尿薬も効きにくくする。
- Q11
慢性心不全が悪化して受診した。原因を探るため、まず確かめることは?★★★
服薬状況(薬を飲み続けているか)
ほかによくあるきっかけは、塩分・水分のとりすぎ、かぜなどの感染、過労、頻脈性の心房細動、高血圧。
- Q12
左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)で、HFrEFより割合が多い死因は?★★★
非心血管死(腎臓病・肺疾患・がん・感染症など)
高齢で併存症が多いため。患者は増えていて、予後はHFrEFと変わらないほど悪い。β遮断薬で予後がよくなる証拠はない。
- Q13
胸痛・息切れがあり、心不全の徴候もある。まず行う検査は?(2つ)★★★
心電図・胸部X線
虚血・不整脈と、心拡大・肺うっ血・胸水を見る。続けてBNPと心エコー。
- Q14
心不全の胸部X線で見られる所見は?(3つ)★★★必修
心拡大・肺うっ血・胸水(肋骨横隔膜角の鈍化)
心胸郭比は50%を超える。肺水腫では両肺門を中心とする蝶形陰影。小葉間隔壁がむくむとKerley B線(癌性リンパ管症でも出る)。
- Q15
心不全の徴候がある。原因と心機能を調べるため、次に行う検査は?★★★必修
心エコー
左室駆出率・壁運動・弁膜症が分かる。呼吸機能検査や心筋シンチを先にしない。
- Q16
心室の壁の負担で血中に増え、心不全の重症度と治療の効果の目安になる検査値は?★★★
BNP(NT-proBNP)
心室から出るホルモン。治療でうっ血がとれると下がる。腎機能が悪いと高めに出る。
- Q17
急性肺水腫で強い呼吸困難。診察や搬送の時にとらせる体位は?★★★必修
座位(起坐位・半坐位)
下半身から戻る血が減り、肺うっ血が軽くなる。仰臥位や、頭を下げるTrendelenburg位はうっ血を強める。
- Q18
肺動脈楔入圧と心係数で、急性心不全を4群に分ける分類は?★★★
Forrester分類(境目は18 mmHgと2.2 L/分/m2)
肺動脈カテーテル(Swan-Ganz)で測る。楔入圧↑・心係数↓の群が心原性ショック。身体所見で分けるのはNohria-Stevenson分類、自覚症状で分けるのはNYHA分類。
- Q19
急性心不全で、肺うっ血と浮腫・体重増加がある。体の余分な水を出すために使う薬は?★★★必修
ループ利尿薬(フロセミドの静注)
うっ血をとる基本の薬。急性肺水腫ではすぐ静注する。低K血症に注意。
- Q20
血圧が保たれた(高い)急性心不全の肺うっ血。利尿薬と組み合わせ、前負荷と後負荷を下げる薬は?★★★必修
硝酸薬(ニトログリセリンなどの血管拡張薬)
収縮期血圧が高く、体液はあまり増えていない急な肺水腫では、利尿薬より先に使う。血圧が低いときは使わない。
- Q21
血圧が低く、四肢が冷たく尿が少ない急性心不全(cold & wet)。使う薬は?★★★
強心薬・昇圧薬(ドブタミン・ドパミン・ノルアドレナリンなどのカテコラミン)
心拍出量と血圧を保つ。硝酸薬・β遮断薬・ACE阻害薬は血圧をさらに下げるので使わない。低心機能の肺水腫なら、ドブタミンと利尿薬を組み合わせる。
- Q22
薬を使っても血圧が保てない心原性ショック。次に行う治療は?★★★
VA-ECMO(経皮的心肺補助)などの補助循環
ポンプと人工肺で、心臓と肺の働きを一時的に肩代わりする。IABPは補助が小さく、酸素化もできない。
- Q23
左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)。予後をよくする基本の2剤は?★★★
ACE阻害薬(またはARB)・β遮断薬
心臓を傷めるRA系と交感神経の働きを抑える。β遮断薬はうっ血がとれてから少量で始め、ゆっくり増やす。MRA(スピロノラクトン)も加え、うっ血にはループ利尿薬を併用する。
- Q24
ACE阻害薬・β遮断薬・スピロノラクトンを飲んでいるHFrEF。予後をよくするため加える薬は?★★★
SGLT2阻害薬
糖尿病がなくても、心不全による入院と死亡を減らす。左室駆出率の保たれた心不全でも入院を減らす。
- Q25
在宅の慢性心不全。体液がたまってきたことを最も早く知る指標は?★★★必修
毎日の体重
浮腫が目に見えるのは数kgたまってから。数日で2 kgほど増えたら受診するよう指導する。
- Q26
入院治療で落ち着いた高齢の心不全患者。体力とQOLを戻し、再入院を減らすために行うのは?★★★
心臓リハビリテーション
低い負荷から始め、体調に合わせて強さを変える。栄養療法と組み合わせ、サルコペニアと低酸素も確かめる。
- Q27
上体を45度に起こすと、頸静脈の拍動が胸骨角から10 cmの高さまで見える。推定の中心静脈圧は?★★★
約15 cmH2O
胸骨角から右房までは、およそ5 cm。見える高さに5 cmを足す。
- Q28
1回拍出量40 mL、心拍数90/分、体表面積1.8 m2。心係数は?★★★
2.0 L/分/m2
心拍出量(40 mL × 90 = 3.6 L/分)を体表面積で割る。2.2を下回るので、Forrester分類では低灌流の側。
- Q29
心機能曲線(Frank-Starling曲線)を上へ持ち上げる薬は?★★★
強心薬(ドパミン・ドブタミン)
同じ拡張期圧でも拍出量が増える。利尿薬・硝酸薬は主に拡張期圧(前負荷)を下げ、曲線の上を左へ動かす。
- Q30
心原性肺水腫で、マスクの酸素でも低酸素が続く。気管挿管の前に試す呼吸の補助は?★★★
非侵襲的陽圧換気(NPPV・CPAP)
陽圧で肺胞の水を押し戻し、静脈還流を減らして前負荷も下げる。COPDの増悪や神経筋疾患の呼吸不全にも使う。
選択肢の○×
症状と所見
- 1
吸気性喘鳴(stridor)は、心不全の悪化を示す。109I52
喉頭・気管など上気道が狭いときの音。心不全の喘鳴は呼気のwheezes(心臓喘息)。
原因と型
急性期
慢性期
- 7死亡は減らない。心房細動の心拍数を下げる、症状を軽くするために使う。
- 8症状がなくても、ACE阻害薬とβ遮断薬で進行を防ぐ。
- 9見るのは体重・SpO2・心拍数・心胸郭比・BNP・左室駆出率。CK-MBは心筋梗塞の、LDLは脂質異常症の指標。
- 10
うっ血のある心不全の治療を始めるときから、運動を勧める。105H32
まず安静にしてうっ血をとる。減塩・禁煙・節酒・減量は始めから指導し、落ち着いたら心臓リハビリで運動を始める。
急性期